糖質制限ダイエットが示す膵がんリスク低下の可能性
膵臓がんは早期発見が難しく、治療の進歩が続いている現在でもなお予後が厳しいがんとして知られています。そのため、日常生活の中でどのように予防につなげるかという視点は、非常に重要です。近年、注目されている食事法のひとつに「糖質制限食」があります。ダイエットとして広く浸透しつつあるこの食事法が、膵臓がんの予防にも関係している可能性があるという研究が、海外から報告されました。
本記事では、その研究内容を中心に、糖質制限食と膵臓がんリスクの関係についてわかりやすく紹介します。

糖質制限食とは、ごはん・パン・麺類などの主食、砂糖を多く含む菓子類、またいも類などの糖質を控える食事法です。糖質摂取を抑えることで血糖値の急激な上昇を防ぎ、体内の代謝を改善することが期待されています。
糖質制限はダイエットとして取り入れられることが多く、肥満やメタボリックシンドローム、脂質異常症、さらには糖尿病の改善にも一定の効果があるとする医学的データも蓄積されつつあります。そのため、美容目的だけではなく、健康維持・疾病予防の観点からも注目されています。
2021年1月、医学誌「Carcinogenesis」に、糖質制限食が膵臓がんのリスクとどのように関係するかを調べた研究が報告されました。アメリカの男女95,962人を対象とした大規模な前向きコホート研究で、参加者の食事内容を詳細に調査し、「どの程度糖質を制限しているか」をスコア化した点が特徴です。
研究では、平均約9年間の追跡調査が行われ、その期間中に351人が膵臓がんを発症しました。糖質制限の厳しさによってグループ分けを行い、発症率を比較したところ、最も厳格に糖質制限をしていたグループでは、もっとも糖質制限が緩かったグループと比べて膵臓がんのリスクが約40%低かったという結果が得られました。
さらに重要な点として、糖質制限を行う際に摂取するたんぱく質の種類(動物性・植物性)や脂質の内容にかかわらず、膵臓がんリスクの低下に影響は見られなかったと報告されています。つまり、糖質の量そのものがリスク低下に寄与している可能性があるということです。
膵臓がんのほかにも、肥満との関連が指摘されている大腸がん、子宮内膜がん、乳がんなどの発症リスクに対しても、糖質制限が予防的に働く可能性が示唆されています。ただし、これらの分野についてはまだ研究数が多いとは言えず、今後のデータ蓄積が期待されます。

一方、糖質制限を行えば必ずしもすべてが健康に良いわけではありません。日本人を対象とした研究では、動物性たんぱく質や脂質を多く摂取しながら糖質を制限する食事法では、総死亡率が上昇する可能性が示されています。
つまり、「糖質を減らせば何を食べてもよい」という考え方は危険であり、極端な肉食偏重や飽和脂肪酸の過剰摂取は避ける必要があります。何事もバランスが重要であり、糖質制限も“やり過ぎない”ことが大切です。
筆者としては、がんの予防や治療後の健康管理を目的として糖質制限を考える場合、**無理のない「ゆるい糖質制限」**をおすすめしています。いきなり主食をゼロにするのではなく、
といった段階的な取り組みが、体への負担も少なく継続しやすい方法です。
糖質制限の第一人者として知られる江部康二先生(高雄病院)の書籍なども参考になりますので、興味のある方は手に取ってみると理解が深まるでしょう。

今回紹介した大規模研究では、糖質制限が膵臓がんの発症リスクを低下させる可能性が示されました。とはいえ、がんと糖質制限の関係はまだ研究段階であり、現時点で断定的なことは言えません。今後も新しいデータが発表され次第、継続して紹介していきたいと思います。
膵臓がんの予防として日常生活でできることは多くありませんが、過度にならない範囲で糖質を控える食事を心がけることは、一つの選択肢となり得ます。特に、糖尿病や肥満など膵臓がんのリスクが高い方にとっては、有益な生活改善策となる可能性があります。
引き続き健康的な食生活を意識し、無理なく続けられる方法で身体をいたわっていきましょう。