「進行がん」と聞くと、どうしても「もう助からないのでは…」という不安が胸をよぎります。
実際、進行したがんによって命を落とす方がいる一方で、同じ病期にもかかわらず、驚くほど長く生き続けている人たちもいます。
彼らはいったい、どのようにしてがんを克服し、長期にわたる生存を実現しているのでしょうか?
もちろん、運や治療のタイミングも関係します。ですが、それだけでは説明できない「何か」があるようです。
多くの長期生存者に共通しているのは、がんをきっかけに、考え方や生き方を大きく変えているという点です。

今回ご紹介するのは、アメリカとカナダで行われた研究です。
対象となったのは、卵巣がん患者26人(うち23人が進行がん)。
そのうちの約9割がステージⅢまたはⅣという厳しい状況にありながら、全員が5年以上生存し、7割以上が10年以上生き続けています。
参加者の多くは手術や抗がん剤治療を経験し、半数は再発を乗り越えています。
研究では、患者たちを少人数のグループに分け、診断後の生活について語り合ってもらいました。
テーマは、運動・食事・瞑想・代替医療・副作用への対応・家族との関わりなど、多岐にわたります。
その会話の中から、「なぜ自分は長く生きられたと思うのか?」という問いに対して共通して語られた要素を抽出したところ、3つの大切な因子が浮かび上がりました。
まず最初の共通点は、生活の見直しを実行したことです。
がんを宣告された後、食事や運動を意識的に変えた人が多くいました。
たとえば、ある女性はこう語っています。
「以前は毎日のように赤身肉や揚げ物を食べていました。でも、診断を受けてからは砂糖や加工食品を控え、野菜や魚中心の食生活に切り替えました。」
彼女はお菓子やパンに含まれる砂糖にも気を配り、抗酸化作用のあるお茶を毎日飲むようにしたといいます。
また、できるだけ外に出て歩くようにし、エレベーターの代わりに階段を使う。
「運動が心も体も軽くしてくれる」と感じる人が多くいました。
さらに、ビタミンやミネラルなど、治療中に不足しがちな栄養を補うためにサプリメントや自然療法を上手に活用していた例もあります。
医学的な根拠はまだ限定的ですが、「自分でできることを増やす」ことが、心の支えになっていたようです。
次に重要なのが、人とのつながりです。
長期生存者の多くは、家族・友人・患者会・主治医など、複数の支えを持っています。
「孫の存在が生きる希望になりました」
「患者会で同じ立場の仲間と話せることが、どれほど励みになったか分かりません」
「手術をしてくれた医師のおかげで、今の私があります」
人との温かいつながりが、「また明日も生きよう」というエネルギーに変わる。
これは決して精神論ではなく、心理学的にも裏づけがあります。
研究によれば、社会的サポートが強い人ほど、免疫系やホルモンバランスが安定しやすいことが分かっています。
孤独を避け、安心して話せる人を持つこと。それが、がんとの長い闘いを支える「見えない薬」なのかもしれません。
そして3つ目の因子は、強い生きがいと前向きな姿勢です。
この点はすべての参加者に共通していました。
「悲しいことを考えるより、孫の成長を見守ることが生きがいになりました。」
「“85%が亡くなる”という統計を聞いても、私は“15%は生き残る”側に入るんだと思うようにしています。」
このように、数字をどう受け止めるか――それが生き方を左右します。
「がんがあるからこそ、自分の人生を大切に生きよう」と考えられるようになった人ほど、精神的にも安定し、結果として治療を継続できる傾向があります。
近年の研究でも、ポジティブな感情が免疫細胞(NK細胞など)の働きを高めることが報告されています。
「気持ちの持ち方」が体の回復力を支える、まさに“心と体の連動”が長期生存の鍵なのです。

この研究は患者さん自身の語りに基づく「質的研究」であり、客観的な数値データではありません。
そのため、厳密な科学的根拠(エビデンス)としては限界もあります。
それでも、注目すべきは――
「多くの長期生存者が、同じような変化を経験していた」という共通性です。
生活を整え、支えを受け、前向きに生きる。
どれも特別なことではありませんが、がんと共に長く生きる人たちは、これらを日々の中で自然に実践していました。

進行がんを克服した人たちに共通していた「3つの因子」は、次の通りです。
これらはがん患者さんに限らず、すべての人が健康に、そして豊かに生きるための基本でもあります。
「自分の生き方を少し変えること」が、人生そのものを変える第一歩になるのです。
どんな状況でも、希望の光は消えません。
長く生きる力は、薬や治療だけでなく、あなたの中にも確かに存在しています。