すい臓がん肝転移を切除後の長期生存例:症例報告

すい臓がんの肝臓転移と切除による長期生存の可能性

すい臓がんの肝臓転移と切除による長期生存の可能性

すい臓がんは、治療が難しく、予後が厳しいがんとして知られています。その理由のひとつは、がんが他の臓器に転移しやすいことです。とくに肝臓への転移は多く見られ、進行すると肝臓の働きが低下したり、黄疸が出るなど命に関わる状態になることがあります。

すい臓がんが発見された時点で、すでに肝臓に転移がある場合もありますし、すい臓がんの手術を受けた後に、新たに肝臓に転移が見つかる場合もあります。前者は「同時性転移」、後者は「異時性転移」と呼ばれています。一般的には、肝臓に転移がある場合、抗がん剤など全身に作用する治療が選ばれることが多く、肝臓の転移を手術で取り除くことはほとんど行われません。ガイドラインでも、肝臓などの転移に対して手術は行わないことが推奨されています。

しかし実際には、異時性転移、つまり初回の手術からしばらくたって肝臓に転移が出てきた場合には、手術を行う施設もあり、長期にわたり生存できた例も報告されています。今回は、そうした長期生存例のひとつを紹介します。

69歳の男性の長期生存例

69歳の男性の長期生存例

この症例は日本、北九州市の市立医療センターからの報告です。患者は69歳の男性で、すい臓がんと診断され、膵臓の頭部と十二指腸を一緒に切除する手術を受けました。手術前の検査では、他の臓器に転移は見つかりませんでした。しかし、切除した組織を詳しく調べたところ、リンパ節にがんの転移が確認されました。これにより、ステージⅡBと診断されました。

手術後は、1年間にわたりゲムシタビンという薬による補助的な治療が行われました。その後、5年以上にわたり再発は見られず、順調に経過していました。しかし、手術から8年後の検査で、血液検査の腫瘍マーカーであるCA19-9が上昇しました。さらにCTなどの画像検査で、肝臓に10ミリ大の腫瘤が見つかりました。PET検査でも反応があり、すい臓がんの肝転移と診断されました。

転移は肝臓に限局しており、初回手術から長い時間が経過していたことから、切除する方針がとられました。腹腔鏡を用いた手術で肝臓の一部を切除し、取り出した組織を顕微鏡で確認したところ、やはりすい臓がんの転移であることがわかりました。その後、S-1という薬による補助的な治療も追加されました。

驚くべきことに、この肝臓の手術後3年、つまり最初のすい臓手術から合計11年、再発はなく順調に経過しているとのことです。この症例は、すい臓がんの肝臓転移の中にも「小数の転移(オリゴメタ)」が存在することを示唆しています。特に、初回手術後かなり時間が経ってから肝転移が出てきた場合、手術による切除が比較的良い成績をもたらす可能性があることが報告されています。

希望がないわけではない

希望がないわけではない

こうしたことから、すい臓がんが肝臓に転移した場合でも、全く希望がないわけではありません。転移の数が少なく、初回手術から時間が経過している場合には、切除によって長期生存が得られる可能性があります。ただし、このような症例はまだ少なく、統計的な裏付けは十分ではありません。今後、より多くの症例を集めることで、肝転移に対する手術の効果を評価していくことが期待されます。

まとめると、すい臓がんは転移しやすく、特に肝臓に転移すると治療が難しいとされています。しかし、転移が少数で、初回手術から時間が経ってから現れた場合には、切除による治療が長期生存につながる可能性があります。このような情報は、すい臓がんと診断された患者さんや家族にとって、希望を持つきっかけとなるでしょう。将来的には、より多くの症例をもとに、肝転移に対する手術の有効性がさらに明らかにされることが期待されます。