がんの自然退縮はあるのか?どうやったら起こる?

がんの自然退縮はどうして起こるのか?
奇跡のような現象の背景にあるもの

がんという病気は、普通は手術や薬、放射線といった専門的な治療を行わなければ小さくなることはありません。しかし、まれに「自然退縮(自然寛解)」といって、治療を受けていないのにがんが小さくなったり、消えてしまったりすることがあります。頻度は非常に少なく、正確な数字もわかっていませんが、世界中でこうした事例が報告されているのは確かです。

自然退縮が見られるがんの種類はさまざまですが、大腸がん、肺がん、乳がんなどで多く見られる印象があります。治りにくいと言われるすい臓がんでも、自然に縮小した例が報告されています。
では、実際にどのようなケースがあったのでしょうか。ここでは、日本で発表された興味深い事例を紹介します。

■ 82歳の男性に起きた「治療なしでのがん縮小」

■ 82歳の男性に起きた「治療なしでのがん縮小」

2017年に医学誌に掲載された症例報告では、「治療を行わずに自然に小さくなった高齢者の肺がん」が紹介されています。患者さんは82歳の男性で、心臓の病気や高血圧、糖尿病、腎臓の病気、肺の持病など、たくさんの病気を抱えていました。たばこも長年吸っていた方です。

あるとき、咳と息苦しさがあり入院し、肺炎と診断されました。治療の途中に撮った画像検査で、肺炎とは別に「しこり」が見つかります。詳しい検査を行ったところ、それは肺がんの一種である扁平上皮がんで、しかも進行した状態でした。リンパ節や副腎にも広がっている疑いがあり、いわゆる「ステージ4」という深刻な段階でした。

本来であれば薬による治療を検討しますが、この方の場合は持病が多く、さらに血液の成分が全体的に減ってしまう状態が続いていました。そのため強い治療を行うのは難しい判断となり、あえて治療をせずに様子を見るという方針になりました。

ところが驚いたことに、診断から3か月後の検査で、がんが小さくなっていたのです。さらに1年後にはもっと縮小しており、体のあちこちにあった疑いの部分も反応が弱くなっていました。
治療をしていないにもかかわらず、全身でがんが自然に退いたと考えられた非常に珍しいケースです。

■ 自然退縮はなぜ起こるのか?

■ 自然退縮はなぜ起こるのか?

では、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。残念ながら、はっきりした理由はわかっていません。ただし、多くの研究者は「免疫の働き」が関係していると考えています。

人間の体には、外から入ってきた細菌やウイルスだけでなく、自分の体にできた異常な細胞も見つけて排除する仕組みがあります。これを免疫の監視システムと呼びます。自然退縮したがんを調べると、この免疫の細胞ががんの周りに多く集まっている場合があり、体の防御反応が強く働いた可能性が指摘されています。

また、重い感染症にかかって高熱が出たあと、がんが小さくなったという例も報告されています。高熱や炎症が免疫を強く刺激し、その結果としてがんに対する攻撃力が高まったのではないかと推測されています。

もちろん、自然退縮が起こるのは非常にまれですし、誰にでも起こるわけではありません。しかし「体の力によってがんが縮小することがある」という事実は多くの医師が認めています。

■ 自然退縮した人の共通点とは?

■ 自然退縮した人の共通点とは?

アメリカでは、がんが自然に、または標準治療を使わずに消えてしまった人たちを調べ、「劇的な寛解(ドラマティック・リミッション)」と名付けた研究があります。その中では、自然退縮した人の多くが共通して実践していた「9つの習慣」がまとめられています。

  1. 食生活を大きく改善する
  2. 自分の治療方針を自分で選ぶ
  3. 直感に耳を傾ける
  4. ハーブやサプリを上手に利用する
  5. 心の中にため込んだ感情を解放する
  6. 前向きな生き方を意識する
  7. 人の支えを素直に受け入れる
  8. 自分の心の深い部分とつながる時間を持つ
  9. 「どうしても生きたい理由」を持つ

もちろん、これらが科学的に証明されているわけではありません。「たまたま運が良かっただけ」と考えることもできます。しかし、これらを実践していた人たちの多くががんを乗り越えているという事実は、多くの患者さんに希望を与えています。

「科学的ではない」という批判があることも事実ですが、それでも希望につながる内容である点では、十分に価値のある考え方ではないかと思います。

■ 自然退縮が教えてくれること

自然退縮そのものは決して一般的ではなく、期待しすぎるのは危険です。しかし、この現象は私たちに大切なことを教えてくれます。

それは、
「体には本来、自分を守り、立て直す力が備わっている」
ということです。

食生活、心の持ち方、生活習慣、人間関係など、日常のさまざまな要素が体の力に影響している可能性があります。「治療を行うかどうか」とは別に、毎日の過ごし方が体を助ける力になり得るということです。

がんの自然退縮はまだ謎も多い現象ですが、その存在は多くの方にとって希望の光であり、「自分の力を信じて前向きに生きること」の大切さを教えてくれる出来事といえるでしょう。