がんの生存率を改善する5つのシンプルな生活習慣とは?

― 大腸がん患者さんにとくに役立つ最新データより ―

日本では大腸がんの患者数が年々増加しており、最新の統計では年間15万人以上が新たに診断されています。胃がんや肺がんを上回り、国内の「もっとも多いがん」といわれるほどです。
治療の進歩によって生存率は改善してきているものの、再発したケースや進行した大腸がんの治療は依然として難しく、年間の死亡者数は5万人以上と高い水準で推移しています。

大腸がんは、食事や運動など生活習慣との関連性が強いがんとして知られています。そのため「治療以外の日常生活をどう過ごすか」が、再発リスクや生存期間に大きな影響を与える可能性があることが多くの研究で示されてきました。しかし、がん診断後にどのような生活習慣を取り入れればよいのかは、一般の患者さんにはまだ十分伝わっていません。

2018年、医学誌 Gastroenterology に大腸がん患者の「運動と栄養の役割」についてのレビューが掲載されました。この論文では、免疫システムを強化し生存期間を改善する可能性がある5つの生活習慣がまとめられています。ここでは、その5つのポイントを最新研究とともに分かりやすく紹介します。

運動を習慣にする

運動を習慣にする

複数の大規模研究によれば、大腸がん診断後に活発に運動をした患者は、再発率、大腸がんによる死亡率、全死亡率がいずれも約50%低下したと報告されています。

ではなぜ運動がここまで大きな効果をもたらすのでしょうか。その理由として、近年とくに注目されているのが免疫システムの強化です。

  • 運動によって、がん細胞を監視・攻撃する「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」が増える
  • 筋肉が分泌する「インターロイキン6」というマイオカインが、NK細胞をさらに活性化
  • 腫瘍内部に侵入する「Tリンパ球(がん攻撃細胞)」が増加
  • 免疫細胞の働きを妨げる乳酸の濃度が運動によって低下

こうした一連の免疫強化作用によって、運動はがんの進行を抑える方向に働くと考えられています。

運動の目安
ウォーキングなら 1日30分を週5日(週150分) を目標にするとよいとされています。体調に応じて少しずつ始めることが大切です。

海洋性オメガ3脂肪酸を摂取する

海洋性オメガ3脂肪酸を摂取する

青魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、炎症を抑える働きが知られていますが、大腸がんの生存期間にも関係する可能性が示されています。

1659名の大腸がん患者を対象とした前向き研究では、

  • 1日ほとんど摂らない人に比べ、1日0.3g以上の摂取者は大腸がんによる死亡リスクが約40%低い
  • 診断後に摂取量を増やした人は、変えなかった人より 大腸がんによる死亡リスクが70%低下

という非常に興味深い結果が報告されました。

刺身、焼き魚、缶詰など、取り入れ方はさまざまです。なかでも脂が多い魚(マグロのトロ、サバ、イワシ、サンマなど)が効果的とされています。

ビタミンDをとる

ビタミンDをとる

ビタミンDは骨の健康に役立つ栄養素として知られていますが、近年はがん細胞の増殖抑制、細胞死の誘導、免疫活性の向上など多彩な作用が注目されています。

研究では、

  • 診断前・診断後ともに、血中ビタミンD濃度が高い人ほど生存期間が長い
  • 転移を伴う大腸がん患者を対象とした臨床試験では、高用量ビタミンDサプリで生存期間が有意に延長

といった結果が報告されています。

サプリは比較的手に入れやすいですが、摂取量には個人差がありますので、医師に相談したうえで利用するのが安心です。

食物繊維を意識して摂る

大腸がんともっとも関係が深い栄養素のひとつが食物繊維です。診断後の食物繊維摂取量が多いほど、生存期間が延びるという研究結果がいくつもあります。

1575名の大腸がん患者を対象とした研究では、

  • 1日の食物繊維摂取量が5g増えるごとに、大腸がん死亡リスクが22%低下
  • 全死亡率も14%低下

という結果が示されました。また診断前にあまり食物繊維を摂っていなかった方でも、診断後に増やすことで死亡リスクが下がる点も重要です。

食物繊維が多い食品

  • 穀物:玄米、麦ごはん
  • 芋類:さつまいも、こんにゃく
  • 豆類:大豆、煮豆、おから
  • 野菜:ごぼう、れんこん、モロヘイヤ、パセリ
  • 果物:干しイチジク、干しプルーン、アボカド
  • きのこ類、海藻類、乾物(切干し大根など)

無理なく継続することが大切です。

コーヒーを飲む

コーヒーと大腸がんの関係も近年注目されています。アメリカの研究(ステージ1〜3の大腸がん患者約1600人)では、

  • 1日4杯以上コーヒーを飲む人は、まったく飲まない人に比べて大腸がん死亡リスクが52%低下
  • 全死亡リスクも30%減少

という結果が報告されています。
1日4杯はやや多いですが、できる範囲でコーヒーを生活に取り入れることで、再発防止と生存期間延長につながる可能性があります。

まとめ:今日からできる「小さな5つの習慣」

研究が示す、大腸がんの生存期間を改善する5つの生活習慣は次の通りです。

  1. 運動をする
  2. オメガ3脂肪酸をとる(青魚を食べる)
  3. ビタミンDをとる
  4. 食物繊維をとる
  5. コーヒーを飲む

どれも特別な道具や高額な治療が必要なものではなく、日々の生活に取り入れやすい「シンプルな習慣」です。小さな一歩の積み重ねが、長期的には大きな健康効果を生み出す可能性があります。

無理のない範囲で、自分のペースでできるところから始めてみてください。