がん手術後の補助療法(抗がん剤・放射線)は必要か?

がん手術後の「補助療法」は本当に必要?

手術を乗り越えた患者さんの多くが、次に悩むのが「手術後に追加で受ける治療(補助療法)は本当に受けた方がいいのか?」という問題です。

がんの治療では、まず手術で目に見えるがんを取り除くことが大きな第一歩となります。しかし医師から「手術後に薬の治療を続けましょう」と説明されると、多くの患者さんは不安や戸惑いを感じます。
「せっかくつらい手術をがんばったのに、まだ治療が必要なのか…」
「“補助”というくらいなら、やらなくてもいいのでは?」
そのように感じるのは自然なことでしょう。

では、この“補助療法”とはどんな治療で、なぜ医師はすすめるのでしょうか?
今回は、その目的や必要性について、できるだけやさしくお話ししたいと思います。

補助療法とは何か

補助療法とは、手術に加えて行う追加の治療のことです。
手術の前に行う場合もありますが、一般的に「補助療法」といえば、手術が終わったあとに行う治療を指します。

手術後の補助療法は、簡単に言うと 「再発をできるだけ防ぐための、念押しの治療」 といえます。
手術でがんを取り除けたとしても、体の中には目に見えないほど小さいがん細胞が残っていることがあります。これが後になって再び大きくなり、再発につながることがあります。

補助療法とは、その残っているかもしれない小さながん細胞の芽を摘み取るための治療です。再発や転移のリスクを下げ、長く元気に過ごしていただくことを目的としています。

補助療法は絶対に必要?

補助療法は絶対に必要?

結論からいうと、

補助療法は“絶対に受けなければいけない治療”ではありません。しかし、受けられる状態であれば、受けたほうがよい可能性が高い治療です。

特に、がんがある程度進行している場合、たとえばステージⅢのように、再発の可能性が高いと考えられるケースでは、補助療法の効果が大きいとされています。

なぜかというと、がんの治療で最も大きな問題は「手術後の再発」だからです。
手術が成功し、がんが取れたように見えても、完全にゼロになったかどうかは体の外からはわかりません。再発が起こるかどうかは、患者さんにとっても医師にとっても最大の不安材料です。

特に膵臓がんのように進行が早いがんや、悪性度が高いといわれるがんほど再発のリスクは高くなります。そのリスクを少しでも減らすために補助療法が行われます。

補助療法にはどれくらい効果がある?

補助療法の効果は、世界中で行われた数多くの臨床試験で確かめられています。

たとえば膵臓がんでは、手術後に「ジェムザール(抗がん剤)」という薬を使った補助療法をしたグループと、治療を何もしないグループを比べた研究があります。その結果、ジェムザールを使ったグループは 生存期間が約2倍 に延びたというデータがあります。

さらに日本人を対象にした研究では、ジェムザールよりも S-1(エスワン)という薬のほうが成績がよいことが示され、現在の標準的な補助療法として使われています。

薬の種類はがんの部位や進行度によって異なりますが、
「補助療法によって再発が減り、長く元気に過ごせる人が増える」
という点は共通しています。

補助療法をすすめられない場合もある

補助療法をすすめられない場合もある

ただし、すべての患者さんに補助療法が必要というわけではありません。

次のような場合には、補助療法のメリットが小さいと判断されることがあります。

  • 手術の後遺症が強く、体力が十分に回復していない
  • 高齢で体の負担が大きい
  • 薬の副作用が強く出てしまい、生活に支障が出る
  • 他の病気があり、抗がん剤が使いにくい

治療を始めたものの、副作用がつらくて続けられないという方もいます。
そのため、途中で中止せざるを得ないことも決して珍しいことではありません。

「補助療法をしなかったら再発するのでは?」と心配される方もいますが、実際には補助療法を行わなくても再発せず、元気に過ごしている方もたくさんいます。

つまり補助療法は、
受ければ絶対に再発しないわけではないが、再発の可能性を減らす治療”
であり、
受けなくても再発しない人もいる”
ということです。

補助療法を受けるかどうかを決めるとき

補助療法を受けるかどうかを決めるとき

補助療法を行うかどうかは、主治医が患者さんの状態を総合的に判断し、本人とよく話し合ったうえで決めていきます。

判断材料になるのは次のような点です。

  • がんの種類やステージ
  • 手術後の回復具合
  • 体力・持病の有無
  • 年齢
  • 家庭や仕事などの生活環境
  • 本人の価値観や治療への考え方

治療を始める前には「メリット」と「デメリット」をしっかり説明してもらうことが大切です。

たとえば、
「補助療法を受けると再発の確率はどれくらい下がるのか?」
「どのくらい生存期間が延びる可能性があるのか?」
「どのような副作用があり、どれくらいの頻度で起こるのか?」
など、納得できるまで聞いてください。

治療は患者さんの人生の一部です。
医師の意見を尊重しつつも、最後に決めるのはご本人です。

治療が始まってからも大切なこと

補助療法を始めたあとも、患者さんご本人の役割はとても重要です。

副作用があったときは、遠慮せず主治医に伝えてください。
「このくらい我慢しなければ…」と思ってしまう方も多いのですが、つらい状況を抱え込む必要はありません。

体調が悪いときやどうしても続けられないと感じるときは、治療の量を調整したり、中止したりすることも可能です。
補助療法は“やり続けること”が目的ではなく、
患者さんが元気に長く生きられるようにすることが目的
だからです。

まとめ

がん手術後の補助療法は、多くの場合“再発のリスクを減らし、長く元気に過ごすための追加治療”として大きな意味を持ちます。
しかし、すべての人に絶対必要というわけではなく、体の状態や生活状況、副作用の出方によっては行わない選択もごく自然なものです。

大切なのは、
科学的に得られている効果を理解し、主治医としっかり話し合い、自分が納得できる治療を選ぶこと。

もし補助療法を受けるかどうか迷っている場合は、遠慮なく主治医に質問してください。
治療を一緒に考え、支えてくれるのが医療者の役割です。