お酒によるがん死亡リスクを打ち消す方法とは?

お酒と上手に付き合うために――がんと向き合うあなたへ贈る、新しい視点

お酒は、人生のさまざまな場面にやわらかな彩りを添えてくれる存在です。食卓を豊かにし、緊張をほどき、時に心の距離を近づけてくれる――そんな温かな力があります。一方で、「少量のお酒でもがんの原因となる」という言葉を耳にし、胸の内に不安を抱く方も少なくありません。やめた方がいいと分かっていても、生活の一部となった習慣を手放すのは簡単ではないでしょう。

しかし、まずお伝えしたいのは「あなたが弱いわけではない」ということです。お酒は人の心をほぐし、日常の疲れをそっと支える力も持っています。だからこそ、急に距離を置くのは難しくて当然なのです。

アルコールとがん――科学が教えてくれる事実

アルコールとがん――科学が教えてくれる事実

これまでの多くの研究から、アルコールはさまざまながんのリスクを高めることが知られています。口腔がん、咽頭がん、食道がん、肝臓がん、すい臓がん、大腸がん、乳がん――いずれも生活の質に大きな影響を与えうる病気です。

たとえば、ある研究では、お酒を飲まない人に比べ、日本酒にして1〜2合程度を毎日飲む人は食道の扁平上皮がんの発症リスクが約2.6倍になるという報告があります。さらに2.5合以上では、リスクは一段と上昇しました。

特に肝臓がんのように治療が難しく、予後が厳しいがんでは、アルコールによる影響は大きな意味を持ちます。また、アルコールが原因で口腔がんや咽頭がんを発症した患者が、その後に再びアルコール関連の食道がんを発症するケースも少なくありません。

こうした事実を知ると、「もうお酒とは決別しなければ」と強い決意を抱く方もいるでしょう。しかし現実には、長年寄り添ってきた習慣を急に絶つことは、心にも体にも負担がかかります。

やめられない”あなたを責めないでください

大切なのは、完璧を目指すことではありません。自分の心と体に無理のない「よりよい選択」を積み重ねることです。

そしてここからが、多くのがん患者さんやお酒と距離を置きたい方にとって朗報となるお話です。

運動が、アルコールによるがん死亡リスクを“帳消し”にする

運動が、アルコールによるがん死亡リスクを“帳消し”にする

2017年、British Journal of Sports Medicine に発表されたイギリスの大規模研究があります。対象となったのは、40歳以上の男女およそ3万6千人。飲酒量や運動量をもとにグループ分けし、がんによる死亡リスクとの関連を調べました。

その結果――

  • 危険な量の飲酒をするグループでは、がん死亡リスクは約1.4倍
  • ところが
    十分に運動をしている人では、アルコール量が増えてもがん死亡リスクの上昇が見られなかった

という驚くべき結果が示されたのです。

さらに、週に「7.5 METs(メッツ)・時間」以上の運動をしている人では、大量飲酒でなければがん死亡リスクの増加が認められませんでした。

Met(メッツ)とは運動の強度を示す単位です。
ウォーキングは約3メッツ。
つまり、

3メッツ × 2.5時間 = 7.5メッツ時間

週に2.5時間、つまり毎日30分、週5日ほどの散歩で達成できます。

お酒を完全に断てなくても、リスクは減らせる

これは多くの患者さんにとって、希望を感じられる事実ではないでしょうか。

「お酒をやめられない自分」を責める必要はありません。
大切なのは、運動という前向きな行動で、自分の命を守る力を取り戻すことです。

もちろん、飲みすぎれば運動で帳消しにできない部分も出てきます。
しかし、「ほどほどに楽しむ」という姿勢を保ち、日々の散歩や軽い運動を取り入れることは、あなたの未来に大きな違いを生みます。

あなたの今日の一歩が、未来を変える

あなたの今日の一歩が、未来を変える

がんと向き合う日々は、時に孤独で、息苦しく感じることもあります。
しかし、未来を守る鍵は、いつでもあなたの手の中にあります。

お酒との距離を少しだけ見直し、運動という味方をあなたの生活に迎え入れてみてください。
その一歩一歩は、小さく見えても確かな変化となり、やがてあなたの身体と心に穏やかな力をもたらしてくれるはずです。

どうか今日も、自分を責めず、あなたの pace(ペース)で。
ひと呼吸ずつ、前へ進んでいけますように。