がん患者さんが「きつい」のはなぜ?

がん患者さんが「きつい」と感じる原因とは

―生活の質を守るために知っておきたいこと―

がん患者さんが日常生活の中で「なんとなくきつい」「だるい」と感じることは、多くの方に共通して見られます。しかし、その原因はさまざまで、はっきり特定できないことも少なくありません。症状が数日で改善する場合もあれば、長期間続く場合もあります。こうした「きつさ」は、生活の質(QOL)に大きく影響するため、原因を理解し、適切に対応することが重要です。

今回は、がん患者さんが「きつい」と感じる原因について、代表的な10項目を解説します。

1. 貧血

1. 貧血

貧血はがん患者さんに比較的よく見られる症状です。特に血液のがんや、出血を伴う消化管がんの患者さん、また胃などの手術後、あるいは食事量が少ない方に多く見られます。血液検査でヘモグロビン(Hb)やヘマトクリット(Ht)が低下している場合は貧血と診断されます。多くの場合、鉄欠乏が原因となるため、食事で鉄分を補うことや、医師に相談して鉄剤を処方してもらうことが対策になります。

2. 栄養障害・低アルブミン血症

がん患者さんは、食欲低下や消化機能の低下などから栄養障害になりやすく、血液検査でアルブミン値が低下している場合には、栄養障害が疑われます。体重減少や浮腫(むくみ)が見られる場合は特に注意が必要です。対策としては、タンパク質を十分に摂取すること、高タンパクの栄養補助食品の利用、消化吸収が悪い場合には消化剤の処方など、主治医と相談しながら取り組むことが大切です。

3. 低血糖

低血糖は、なんとなく気分が悪い、うとうとする、冷や汗が出るなどの症状として現れます。糖尿病治療中の患者さんに多く見られますが、糖尿病でない患者さんでも、食事が十分に取れない場合などに起こることがあります。血糖値の測定で確認できますが、あめ玉などで症状が改善する場合は低血糖の可能性が高いです。糖尿病治療中の場合は、こうした症状を医師に伝え、必要に応じて薬の調整を行うことが重要です。

4. 薬の副作用

抗がん剤の副作用として全身倦怠感が現れることがあります。また、痛み止め、特に麻薬系の薬では、眠気やぼんやり感などが起こることがあります。薬による「きつさ」が疑われる場合は、主治医と相談して、症状に応じた調整や変更を検討するとよいでしょう。

5. 脱水・電解質異常

5. 脱水・電解質異常

特に高齢の方では、喉の渇きを感じにくく、水分摂取が不足しがちです。暑い時期には汗で水分が失われ、知らず知らずのうちに脱水になることもあります。また、水やお茶だけの摂取ではナトリウムなどの電解質が不足し、低ナトリウム血症となることもあります。対策としては、経口補水液(OS-1など)を利用したり、塩飴などでナトリウムも補給することが有効です。

6. 発熱(微熱)

がん患者さんでは微熱が続くことが多く、これも「きつさ」の原因になります。抗がん剤治療中は好中球が減少して感染症リスクが高まるため、体温測定を日課にして、異常があれば早めに医師に相談することが重要です。

7. 肝機能障害

肝臓にがんがある場合や胆管への影響がある場合、肝機能障害がおこり、だるさや倦怠感として現れることがあります。採血でALTやASTをチェックすることで確認でき、必要に応じた治療や生活指導が行われます。

8. 心肺機能の低下

動くと息切れする、きついと感じる場合は、心臓や肺の機能低下が原因のことがあります。もともと心臓疾患がある方、肺切除後の方、肺転移や胸水がある方は特に注意が必要です。心不全などの診断がつく場合もあります。

9. 精神症状(うつ・不安)

不安やうつ症状が「きつさ」として現れることも少なくありません。再発や死への恐怖が強い場合には、こころのケアが必要です。主治医に相談して、心療内科や精神科の専門医を受診することも検討しましょう。

10. 睡眠障害

10. 睡眠障害

睡眠障害はがん患者さんに多く見られる症状です。入眠困難、中途覚醒、熟睡できないなどがあり、原因は多岐にわたります。がんそのものの症状、痛み、吐き気、発熱、心理的要因、薬の副作用などが重なって不眠を引き起こすことがあります。原因に応じた対策が必要です。

「きつさ」を放置しないことの重要性

がん患者さんの「きつい」という症状は、軽視されがちですが、重大な合併症が隠れていることもあります。また、長く続くと生活の質を著しく低下させます。思い当たる症状がある場合は、自己判断せず、医師に相談し、必要な検査や対策を検討することが大切です。

日常生活の中でのちょっとした変化も見逃さず、原因に応じた対処を行うことで、体調の改善や生活の質の向上につながります。がん治療中は、体だけでなく心のケアも含め、全体的なサポートを受けることが重要です。