「ステージ4のがん」と聞くと、多くの人は「もう治療の見込みがないのでは…」と考えてしまいます。実際、がんが遠くの臓器やお腹の中に広がってしまった場合、通常は手術で取りきることができず、「切除は難しい」と判断されます。このような状態では、多くの患者さんが薬による治療を受けることになります。
薬の治療には大きく2つの目的があります。ひとつはがんの進行を遅らせること。もうひとつは、痛みや食欲低下などのつらい症状を和らげることです。かつてはステージ4のがんに対して、薬だけで「完全に治す」ことを目指すのは難しいと考えられてきました。
しかし、近年は治療方法が大きく進歩しています。新しい薬や組み合わせ治療が登場したことで、がんが小さくなったり、他の臓器に広がっていたがんが目に見えなくなるほど改善したりするケースが増えてきました。その結果、最初はとても手術ができる状態ではなかった患者さんでも、治療を続けることで「手術による完全な取り切り」を目指せる状況になることがあります。
このように、もともとは手術ができない状態だったがんに対して、薬の治療で状況が改善し、手術が可能になった場合に行う手術のことを 「コンバージョン手術(方針転換手術)」 と呼びます。
「治せないがん」という前提で始めた治療が、途中から「治すことを目指す治療」に変わる…まさに治療方針を切り替えるという意味が込められています。

ここからは、実際に行われた研究を例に、コンバージョン手術の成果をご紹介します。
日本では、手術ができない胃がんに対して、3種類の薬を組み合わせた治療を行い、その安全性や効果を調べた試験が発表されています。
対象となったのは、手術が難しいと判断された胃がんの患者さん43人です。多くの方は、リンパ節や肝臓、腹膜、肺など、離れた場所にがんが広がっている状態でした。
治療の結果、
という、とても良い結果が得られました。
さらに驚くべきことは、
43人中15人(35%)が、治療の後に手術で取りきれる状態まで改善した
という点です。
もともとは治すことが難しいといわれた状態から、手術で完全に取り除ける可能性が見えてきたというのです。
観察期間はまだ短いものの、手術ができた人は、手術ができなかった人より長生きする傾向がみられました。これまでの常識では考えられなかった大きな成果です。

もうひとつ、より多くの患者さんを対象にした中国の研究もあります。こちらでは、薬の治療で手術が可能となった95人の胃がん患者さんが調査されました。
その結果、
と報告されています。
以前の「ステージ4=長期生存は難しい」というイメージからすると、非常に希望の持てる数字です。
研究ではさらに、
ということも示されました。
つまり、しっかり薬でがんを弱らせてから手術を行うことが大切だということです。

今回ご紹介したのは胃がんの例ですが、近年は 膵臓がん など、治療がむずかしいといわれるがんでもコンバージョン手術が成功した報告が増えています。
薬の進歩によって、
「最初は手術なんて無理だと思われていたがんが、治療によって手術のチャンスをつかむ」
という時代になってきたのです。
もちろん、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
がんの種類や進行状態、体力、治療の効果など、さまざまな条件が関係します。
それでも、「ステージ4=終わり」では決してありません。
治療を続けることで、思いがけない可能性が開けることがあります。
コンバージョン手術の登場は、ステージ4のがんに対する治療の考え方を大きく変えつつあります。
以前は「治すことを目指す治療」はほとんど期待できませんでしたが、今では
薬の治療 → 状態が改善 → 手術で取り切る
という流れが現実のものとなっています。
これからも薬の進歩と治療技術の向上によって、手術を受けられる患者さんはさらに増えていくと考えられます。
だからこそ、たとえステージ4といわれても、どうかあきらめないでください。
前向きに治療を続けていくことで、予想もしなかった道が開けるかもしれません。
あなたの未来を変える可能性は、まだしっかり残っています。