――SNSコミュニティを上手に活用するために――
がんの告知を受けたとき、多くの方がまず直面するのは「病気そのものへの恐怖」だと言われます。しかし実際には、がん患者さんを最も強く苦しめるものは、それ以上に「孤独」なのかもしれません。病名を聞いた瞬間から、自分と周囲の人との間に見えない壁が立ち上がり、これまでと同じように笑ったり話したりしているつもりでも、どこか心が離れてしまうような感覚に陥ることがあります。
治療への不安、将来への心配、家族への申し訳なさ――。それらを心の中だけで抱え込もうとすると、孤立感はさらに深まっていきます。しかも、がんに関する情報は決して十分とはいえません。医師からの説明だけでは生活の細かな疑問まですべて解決できず、ネット検索をすれば過剰な情報や偏った情報に振り回され、かえって不安が大きくなることもあります。
そんなときに支えとなるのが、「似た経験をした誰かの存在」です。自分と同じように悩み、同じように治療に向き合ってきた人の言葉は、驚くほど心に響きます。「自分だけではない」という実感は、暗いトンネルの中で小さな灯りを見つけるような安心につながります。また、治療を乗り越えたサバイバーの姿を知ることで、「自分も前へ進めるかもしれない」という希望を持てるようにもなります。
近年、こうしたつながりを提供する場として、患者会やサロンだけでなく、インターネット上のコミュニティ、特にSNSを利用したサービスが急速に広がっています。外出が難しいときでも、入院中でも、また家族にも言いにくい悩みを抱えているときでも、匿名で気軽に利用できるSNSコミュニティは多くの患者さんの心の支えとなっています。

がん患者さん向けのSNSコミュニティでは、主に次のような機能が利用できます。
これらを通して、情報だけでなく、「心の支え」になる交流を持つことができるのが大きな特徴です。
患者さんやそのご家族にとって、SNSコミュニティには次のような利点があります。
1. 匿名性があり、気軽に始められる
実名を出す必要がなく、顔を見せずに利用できるため、本音で悩みを打ち明けやすいという安心感があります。
2. 自宅や病院からでも参加できる
外出が難しいときでも、スマートフォンがあればすぐに利用できるため、身体的な負担がほとんどありません。
3. 自分のペースで参加できる
調子の良いときだけ利用する、自分の都合の良い時間帯にだけアクセスする、といった柔軟な使い方が可能です。
4. 多様な意見や経験に触れられる
「一つのがんに対しても治療法は人それぞれ」と言われるように、実際に経験した人の数だけ情報があります。その多様性に触れることは、選択肢を広げ、視野を広げるきっかけにもなります。
5. 自分の経験が誰かの力になる
発信することで同じ悩みを持つ誰かを勇気づけることができます。誰かの言葉に救われた経験がある人は、今度は自分が支える側に回ることもあります。

一方、顔が見えないコミュニケーションにはリスクもあります。
● 医学的に誤った情報が含まれることがある
SNSでは誰でも投稿できるため、正確性の低い情報が紛れ込むことがあります。
● 代替医療や民間療法の過度な勧誘
がんに効くと称する高額なサプリメントや代替医療を勧められるケースもあります。焦っているときほど信じてしまいやすいため注意が必要です。
● 情報はあくまで「経験談」である
治療は個々に大きく異なります。他人の体験談は参考にはなりますが、自分に当てはまるとは限りません。特にセルフケアを取り入れたい場合は、必ず主治医や家族と相談してからにしましょう。
SNSの情報は「ひとつの意見」として冷静に受け止め、最終判断は医療者と話し合って行うことが大切です。
ここからは、実際に多くのがん患者さんが利用している代表的なSNSコミュニティを紹介します(いずれも無料で利用可能です)。
● 5years
日本最大級のがん経験者コミュニティで、あらゆる種類のがん患者さんが参加できます。治療の疑問や生活の悩みなど幅広い情報交換が行われており、がんを経験した先輩たちの知恵が詰まった場として高い支持を得ています。
● Peer Ring
乳がん・子宮がん・卵巣がんなど、女性特有のがんに向き合う方のためのコミュニティです。日記形式の投稿や質問機能が充実しており、同じ病気を経験する女性同士が安心して交流できる「支え合いの場」として親しまれています。
● サバイバーネット
日本対がん協会が運営する、がん告知の経験者やその家族のためのサービスです。自分の治療歴やプロフィールを登録し、近い経験を持つ人を探してつながることができる点が特徴です。特に「自分と似た境遇の人を見つけたい」という方に向いています。
● トモスノート
がん経験者であれば誰でも参加できるSNSで、がんの種類別やテーマ別のコミュニティが充実しています。治療だけでなく、生活・仕事・お金の悩みなど、日常生活に関わる幅広い情報を交換できる便利なサービスです。

がんという大きな試練と向き合うとき、人はどうしても孤独を感じてしまいます。しかし、同じ経験を持つ仲間とつながることで、気持ちは大きく変わります。SNSコミュニティは、距離や時間の制限を超えて「仲間とつながる力」を与えてくれる場所です。
もちろん情報の扱い方には注意が必要ですが、上手に活用すれば、がんと向き合う道のりに確かな支えをもたらしてくれます。あなたの悩みや経験が誰かの希望になることもありますし、誰かの言葉があなたの背中をそっと押してくれることもあるでしょう。
これらのコミュニティが、少しでもあなたの心を軽くし、前向きに日々を歩むための力になりますように。