がん患者はなぜやせるのか?体重減少の原因と対策

がん患者さんはなぜやせてしまうのか?防ぐ方法はあるの?

がんになると、多くの方が体重の減りを経験します。とくに病気が進んだ段階では、その変化が急に見られることが多く、短い期間に数キロ減ってしまうことも珍しくありません。
テレビやニュースなどで、がんで亡くなる前の有名人が「激やせ」して話題になることがありますが、あれは特別なことではなく、多くの患者さんに共通して起こることなのです。

もちろん、体重の減り方には個人差がありますし、病気の種類によっても違いがあります。とくに食べ物の通り道や消化に関わる臓器にできるがん――食道、胃、すい臓、胆道など――では、体重が減りやすい傾向があると言われています。

そして問題なのは、体重が大きく減ると、治療がうまく進みにくくなったり、生活の質が低下したり、結果として寿命にまで影響してしまうことが分かっている点です。
では、そもそも「なぜがんになるとやせる」のか。そして「防ぐ方法はないのか」。ここではその理由と対処法をできるだけ分かりやすくお話ししていきます。

■ がん患者さんがやせてしまう主な理由

実は、はっきりとした仕組みについてはまだ完全には分かっていません。ただ、いくつかの要素が重なり合って体重が減ってしまうと考えられています。

① 食欲が落ちてしまう

がんと告げられたショックや不安、治療への緊張など、強いストレスがかかると食欲は自然と落ちます。
また、抗がん剤の副作用で食べたくなくなることもよくあります。
さらに、病気が進んで痛みやつらい症状があると、それだけでも食事が喉を通らなくなってしまいます。

② 食べた物がうまく消化・吸収できない

がんが大きくなると、食べ物の通り道が狭くなったり、邪魔されたりすることがあります。
また、手術で胃や腸の一部を取り除いた場合は、これまで通りに消化できなくなることもあります。
さらに、食べ物を細かく分解するための「消化の手助け」が十分に出なくなることもあり、せっかく食べても体が吸収できず、結果としてやせてしまうことがあります。

③ 体の中でエネルギーを消耗しやすい状態になる

がんがあると体の中で小さな「炎症」が続き、体が普通よりも多くのエネルギーを使ってしまうことがあります。
すると、食事で足りない分を補うために、筋肉が分解されてエネルギーとして使われてしまいます。その結果、筋肉量が減り、体重も落ちていきます。

④ 運動不足になる

がんの症状、治療の影響、気持ちの落ち込みなどが重なり、どうしても動く量が減りがちです。
動かないと筋肉はどんどん減り、ますます体重が落ちやすくなります。
さらに、体を動かさないとお腹がすかず、食事量が減り、悪循環に陥ることもあります。

以上のように、さまざまな理由が絡み合って、がん患者さんの体重は減ってしまいやすいのです。

■ やせるのを防ぐことはできるのか?

やせるのを防ぐことはできるのか?

すべてを完全に防ぐことは難しい場合もありますが、それでも「減り方をゆるやかにしたり」「体力を落とさないようにする」ことは十分に可能です。
ここからは、患者さん自身ができる対策をご紹介します。

■ 体重の減少を抑えるためにできる4つのこと

① 食事からしっかり栄養(とくにタンパク質)をとる

まずは食事で必要な栄養をとることが基本です。
とくに筋肉を維持するためには「タンパク質」が欠かせません。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などを意識して摂るようにしましょう。

一般的には、がん患者さんは
体重1kgあたり1.2~1.5gのタンパク質が必要
と言われています。

例)体重50kgの方 → 1日60~75gが目安

食べられる量が少ない場合は、少量でも効率よく栄養がとれるものを選ぶのがおすすめです。

② 消化の手助けをする薬や、食欲をサポートする薬を主治医に相談する

・食べると胃が張る
・ガスが多い
・すぐ下痢をしてしまう
などの症状がある場合は、消化を助ける薬が役に立つことがあります。

また、原因がはっきりしないまま食欲がわかない場合、食欲を高める効果が期待できる薬があることも知られています。
まずは主治医に相談し、今の状況に合った方法を一緒に考えてもらうことが大切です。

③ 栄養補助食品やプロテインを利用する

食事だけで必要な量をとれないときは、栄養補助食品やプロテインも心強い味方になります。
市販の栄養ドリンクタイプのもの、飲みやすいたんぱく質補助食品などを利用すれば、少ない量で効率よく栄養を補うことができます。

無理に食べようとして苦しむ必要はありません。
「少しでも確実に栄養をとる」ことが大切です。

④ 自分のペースでできる運動(とくに筋力を使う運動)を取り入れる

体力を保ち、体重の減りを防ぐためには、筋肉を維持・増やすことが必要です。
とくに筋肉に軽い負荷をかける運動は効果が高いといわれています。

たとえば
・スクワット
・かかと上げ運動
・軽いダンベル運動
など、無理のない範囲で週に2~3回続けるだけでも大きな違いがあります。

「体がしんどいからこそ、少しだけでも動く」
これが体力維持の大切なポイントです。

■ まとめ:体重を守ることは、治療を続ける力を守ること

まとめ:体重を守ることは、治療を続ける力を守ること

がんになると、どうしても体重が減りやすくなります。
しかし、その原因には改善できるものも多くあります。

・しっかり食べる工夫
・必要なときは薬を使う
・栄養補助食品を上手に取り入れる
・無理のない範囲で体を動かす

こうした小さな積み重ねが、体力を守り、治療を支え、生活の質を保つことにつながります。

もし、体重の減りが気になる場合は、一人で悩まず、ぜひ主治医や栄養士に相談してみてください。
あなたの状況に合わせた方法を一緒に考えてくれるはずです。