がんのだるさ(倦怠感、疲労感)を軽くする方法3つ

日常に取り入れたい3つのセルフケア

がんと向き合う日々のなかで、多くの患者さんが訴える症状のひとつに「倦怠感(けんたいかん)」があります。身体が重く感じる、何をするにも気力がわかない、朝起きても疲れが残っているなど、その表現はさまざまですが、生活に大きな影響を及ぼすという点では共通しています。

この倦怠感は、がんそのものが引き起こす場合もあれば、抗がん剤治療や放射線治療に伴う副作用として現れることもあります。たとえば、抗がん剤投与後の数日間は強いだるさが続くことが珍しくありません。また、はっきりとした原因が特定できないにもかかわらず、慢性的に疲れを感じるケースも多くみられます。

しかし、この「疲労感」はしばしば軽視されがちです。「少し休めばよくなる」「気持ちの問題ではないか」と受け取られやすいからかもしれません。けれど実際には、痛みと並んで、がん患者さんの生活の質(QOL)を大きく下げる重大な症状のひとつです。疲労が強いと、外出や食事、仕事や家事など普段の活動が難しくなり、気持ちの落ち込みにつながることもあります。

そこで今回は、がん患者さんが日常の疲労感を軽くするために、科学的な根拠があり、比較的取り入れやすい3つの方法――「運動」「瞑想」「ヨガ」――をご紹介します。

1. 運動 ― 疲労を軽くする力がある“意外な対策”

「こんなにだるいのに運動なんてできない」「運動したらもっと疲れるのでは?」と感じる方も多いかもしれません。しかし、がん患者さんにおける疲労感の緩和には、実は運動が大きな効果をもたらすことが多くの研究から示されています。

● 運動は疲労を悪化させない

確かに運動はエネルギーを使いますが、継続することで筋肉量が保たれ、血流が改善され、睡眠の質も向上します。その結果、慢性的な倦怠感が減少することがわかっています。

● 乳がん患者さんを対象とした研究

抗がん剤治療中の乳がん患者230名を対象としたランダム化比較試験では、専門家の指導のもとで中等度〜高強度の運動(有酸素運動+筋力トレーニング)を行ったグループは、通常ケアだけを受けたグループに比べて以下の点で改善がみられました。

  • 吐き気や嘔吐の軽減
  • 痛みの軽減
  • 疲労感の軽減
  • 抗がん剤の減量が必要となるケースが少ない

これは、治療中でも運動が身体の回復力を支え、症状の軽減に寄与することを示しています。

● 咽頭がん患者を対象とした研究

放射線と抗がん剤を併用して治療を受けている咽頭がん患者146名を対象とした研究では、筋トレを取り入れたグループは、リラクゼーションを行ったグループよりも副作用(特に口内炎)が軽減し、疲労感の改善がみられました。

このように、治療の最中であっても無理のない範囲で身体を動かすことはメリットが大きいことが明らかになっています。

● 運動を始めるときのポイント

  • 体調がつらい日は無理をしない
  • ウォーキングや軽いストレッチから始める
  • 医療者に相談して、適切な運動量や内容を確認する
  • 少しの活動でも「できたこと」を大切にする

続けることが何より大切です。毎日でなくても、できるときにできる範囲だけで構いません。

2. 瞑想 ― 心と身体の両方を整える時間

2. 瞑想 ― 心と身体の両方を整える時間

次に紹介するのは「瞑想」です。瞑想は一見、疲労とは関係がないように思えますが、近年がん患者さんの精神的・身体的な症状をやわらげる方法として世界的に注目されています。

● ガイドラインでも推奨される「瞑想」

アメリカの補完・代替医療のガイドラインでは、瞑想はがん患者さんの生活の質(QOL)を高める方法として推奨されています。特に「マインドフルネス瞑想」は医療機関でも広く取り入れられています。

● マインドフルネスとは

マインドフルネスは、過去や未来のことを考えすぎず、「今ここ」に注意を向ける心のトレーニングです。自分の思考や感情を否定せず、そのまま受け入れる姿勢を大切にします。

1979年、米国マサチューセッツ大学のジョン・カバット・ジン教授が、慢性的な痛みやストレスの軽減を目的とした「マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)」を開発したことで、医療の分野に広く普及しました。

● 乳がん患者さんでの研究

322名の乳がんサバイバーを対象とした研究では、MBSRを6週間行ったグループ(155名)と、通常ケアのみのグループ(167名)を比較しました。

結果として、MBSRを行ったグループは

  • 不安
  • うつ
  • ストレス
  • 再発への恐怖
  • 疲労感
  • 痛み

といった多面的な症状が改善し、全体的な生活の質も向上するという結果が得られました。

● 日常に取り入れるには

マインドフルネスの練習方法は、書籍や音声ガイドなどが多数あります。

  • 深い呼吸をする
  • 浮かんでくる思考を評価せず眺める
  • 身体の感覚に意識を向ける

といった短い瞑想からでも始められます。

3. ヨガ ― 心身をつなぐやさしい運動

最後に紹介するのは、「ヨガ」です。ヨガは身体の動き・呼吸・心の集中を組み合わせるため、運動と瞑想の両方の効果をあわせ持っています。

● 疲労感の改善に関する研究

29件のランダム化比較試験をまとめた研究によると、ヨガはがん患者さんの疲労感を明らかに軽減することが示されています。

また、アメリカの補完・代替医療のガイドラインでも、ヨガは不安の軽減やストレスの緩和、全般的な生活の質の向上に役立つとされています。

● 初心者でもできるヨガ

ヨガはポーズの難しさが心配されがちですが、がん患者さん向けに負担の少ないヨガも多く存在します。YouTubeで「ヨガ 初心者」と検索すると、丁寧に説明された動画が多数見つかります。

  • 身体をゆっくり伸ばす
  • 深い呼吸を意識する
  • 無理のない範囲で姿勢をとる

こうしたやさしい動きだけでも、十分に気分が落ち着き、心身の緊張がゆるみます。

おわりに

おわりに

がん患者さんが感じる疲労感は、「ただのだるさ」ではなく、生活に深い影響を与える重要な症状です。だからこそ、少しでもその負担を軽くする方法を知り、日常の中に取り入れていくことが大切です。

今回ご紹介した

  1. 運動
  2. 瞑想
  3. ヨガ
    の3つは、どれも科学的根拠があり、比較的始めやすいセルフケアです。

もちろん、体調がすぐれない日もあるでしょうし、継続が難しいと感じることもあるかもしれません。それでも「少し試してみる」「できる日の範囲で取り入れる」ことから始めてみてください。続けるうちに、心や身体にふとした変化を感じられる moment が訪れるかもしれません。

あなたの毎日が、少しでも軽やかに、少しでも心地よく過ごせるよう、これらの方法が役に立つことを願っています。