
皆さんは、普段サプリメントを飲んでいますか?
健康のために手軽に取り入れられるという理由で、ビタミン類や健康成分を日常的に飲んでいる方は少なくありません。では、そのサプリメントで「がんを予防する」ことはできるのでしょうか。健康への関心が高まる今こそ、正しい情報を知っておきたいところです。今回は、これまでに行われた大規模な研究をもとに、「サプリメントにがん予防効果はあるのか?」をわかりやすくお話しします。
薬やサプリメントなどの効果を確かめるためには、科学的な調査が欠かせません。その中でも、もっとも信用度が高いとされているのが「ランダム化比較試験」という研究方法です。これは、多くの人をランダムに2つのグループに分け、一方には本物、もう一方には偽物の薬やサプリメントを飲んでもらい、その結果を比べるというものです。
しかし、サプリメントに関しては、このように手間も費用もかかる研究は多く行われているわけではありません。薬と違い、企業が研究に大きな資金を出すケースが少ないため、信頼度の高い研究が集まりにくいという事情があります。
そんな中、2019年にサプリメントとがん予防の関係を調べた、非常に大規模な研究が報告されました。
この研究は、アメリカで行われ、イギリスの権威ある医学雑誌に掲載されたものです。ここでは、ビタミンDとオメガ3脂肪酸(EPAやDHAなど)の2種類のサプリメントを対象に、それぞれの効果が別々の論文で報告されました。
研究の対象となったのは、合計25,871人の健康な男女。
彼らをランダムに分け、
という形で、サプリメントの有無による違いを比較しました。
そして、およそ5年間にわたり、がんの発症や心臓・脳の病気がどれくらい起こったかを調べました。
その結果はどうだったのでしょうか。
研究の結果、どちらのサプリメントも「がんの発症を減らす」という効果は見られませんでした。
ビタミンDを飲んだ人たちと、飲まなかった人たちを比べると、がんにかかった人の割合はほぼ同じでした。
オメガ3脂肪酸の場合も同様で、がんの発症率に差はありませんでした。
つまり、この研究では 「ビタミンDやオメガ3脂肪酸を飲んでも、がんを予防する効果は確認できなかった」 ということになります。
一方、同じ2019年に、サプリメントとがん予防の関係について、もうひとつ興味深い研究が報告されています。こちらは中国で行われ、イギリスの医学雑誌に掲載されました。
この研究の対象者は3,365人。
取り上げられたのは次の3つです。
参加者は、それぞれサプリメントを飲むグループと飲まないグループに分けられ、7年間にわたって胃がんの発症や死亡率が調査されました。
結果として、「ビタミンを摂っていたグループ」では、胃がんの発症が36%少なく、「胃がんによる死亡」も52%減っていたと報告されています。また、にんにくのサプリメントを摂ったグループでも、胃がんによる死亡が34%少なかったという結果が出ました。
この研究だけを見ると、「ビタミンやにんにくは胃がんに良いのでは?」と思ってしまうかもしれません。
ここで大切なのは、研究によって結果が異なることです。
この違いにはさまざまな理由が考えられます。
研究の対象になった人の食生活、生活環境、もともとの栄養状態、調査したがんの種類など、あらゆる条件が違うためです。そのため、「あるサプリメントがすべてのがんに効く」と言えるわけではありません。
また、たとえ良い結果が出たとしても、「その研究だけで結論を出すのは早い」というのが専門家の共通した考え方です。
現時点でわかっていることをまとめると、
というのが現状です。
「これさえ飲めばがんを防げる」というサプリメントは、残念ながら今のところ存在しません。
サプリメントは、栄養を補うための「サポート役」にすぎません。むしろ、サプリメントに頼りすぎて食事が偏ってしまうと、かえって健康を損なってしまう可能性もあります。
がんを予防するために、より確実に効果が期待できるのは、次のような日々の生活習慣です。
こうした地道な生活の積み重ねこそが、長い目で見て自分の体を守る大きな力になります。

サプリメントは、うまく使えば生活の助けになることがあります。しかし、「がんを予防したい」という理由だけで特定のサプリメントを買うのは、現時点ではおすすめできません。
まずは、普段の食事の内容を見直し、必要に応じて医師や専門家に相談しながら、賢くサプリメントを利用するのが良いでしょう。
健康は、毎日の小さな選択の積み重ねでつくられていきます。サプリメントに振り回されすぎず、信頼できる情報をもとに、安心して生活できるよう願っています。