がん治験の探し方

がん治療と治験――知っておきたい基礎知識と探し方、参加のメリット・デメリット

 「治験」という言葉を耳にしたことはあっても、その具体的な内容や意義について詳しく知る機会は意外と少ないものです。治験とは、新しく開発された医薬品や治療法の「有効性」と「安全性」を科学的に確認し、国から正式に医薬品や保険診療として認められるために行われる臨床試験のことを指します。近年では、光免疫療法やiPS細胞を用いたがん治療など、革新的な医療技術が治験段階で注目を集め、ニュースでも取り上げられる機会が増えました。しかし、実際にはこうした先端医療以外にも、日々多種多様な治験が行われており、がん医療の発展を支える重要な基盤となっています。

■治験には2つの種類がある

■治験には2つの種類がある

 治験は大きく「企業治験」と「医師主導治験」の2種類に分けられます。まず、最も一般的なのが製薬会社などの企業が主導して行う「企業治験」です。新薬の開発には莫大な費用がかかりますが、企業は自社で研究した薬を将来販売できるよう、医療機関に試験を依頼して治験を実施します。国から正式な承認を得るために不可欠なステップであり、治験の多くがこの企業治験に該当します。

 一方で、近年存在感を増しているのが「医師主導治験」です。こちらは企業ではなく、医師や学会、研究グループなどが自ら研究の必要性を感じ、企画・立案・実行するタイプの治験です。たとえば、需要はあるのに企業側が採算の問題から開発に踏み出さない薬や、海外ではすでに承認されているが国内では未承認の治療法などについて、その有効性や安全性を示すために医師主導治験が行われます。近年では、必要な研究費をクラウドファンディングで募る取り組みも登場し、患者・市民が医療研究に主体的に関わる動きも広がっています。

■がん患者が治験を検討する場面とは

 では、がん患者はどのような状況で治験を考えることが多いのでしょうか。代表的な例として、

  • 主治医から「標準治療はもう使い切った」と告げられた場合
  • 副作用が強く、標準治療を継続できない場合
  • 治療後に再発し、新しい治療法の選択肢を探したい場合

などが挙げられます。もちろん、初回治療の段階で参加できる治験もありますが、治験を自ら探そうとしたとき、「どこで情報を調べればよいのか」「どうすれば参加できるのか」といった疑問に直面する人は少なくありません。そこで、治験の探し方を具体的に紹介します。

■治験の探し方

■治験の探し方

 治験を探す方法はいくつかありますが、最初に相談すべきなのはやはり主治医です。主治医は患者の病状を最もよく理解しているため、参加可能性のある治験を知っていることがあります。また、がん診療連携拠点病院には「がん相談支援センター」が設置されており、治験や先進医療について専門の相談員が情報提供を行っています。

 自分で調べたい場合には、治験情報を検索できる公的なウェブサイトを活用する方法があります。代表的なサイトとして「臨床研究情報ポータルサイト」があり、国立保健医療科学院が運営しています。このサイトでは、複数の研究登録センターに登録されている臨床研究情報を横断的に検索することができ、病名や薬の名前を入力するだけで関連する治験情報を素早く確認できます。

 たとえば「膵癌」と入力すると、多数の治験情報が表示されます。ただし、その中にはすでに終了した試験や、まだ募集が始まっていない試験も含まれるため、条件を絞って確認する必要があります。さらに、治験には細かな参加基準があり、自分が該当するかどうか判断が難しい場合がありますが、各試験には問い合わせ先が記載されていますので、直接確認することができます。

 とはいえ、実際には自分の病状や条件に完全に合う治験が簡単に見つかるとは限りません。それでも、新たな治療の可能性を知るために情報を調べる価値は十分にあります。

■治験のメリット

 治験に参加する最大のメリットは、将来の標準治療となる可能性がある最新の治療薬や治療法を、他の患者よりも早く受けられるチャンスがあるという点です。特に、標準治療が終了してしまい、次の選択肢が限られている患者にとっては大きな希望となり得ます。

 また、治験では厳格な安全管理体制のもと、丁寧な検査や観察が行われるため、通常の治療より手厚いフォローアップを受けられるという利点もあります。

■治験のデメリットと注意点

■治験のデメリットと注意点

 一方で、治験にはいくつかのデメリットや注意点もあります。

  1. 実施施設が限られている
     多くの治験は大学病院やがん診療拠点病院など、専門性の高い施設で行われるため、自宅から遠く通院が難しいことがあります。
  2. 予期せぬ副作用の可能性
     特に第I相・第II相試験など開発初期の段階では、まだ情報が少なく、思わぬ副作用が現れる可能性があります。
  3. 治療効果が確実ではない
     治験は効果を検証するための試験であり、期待する効果が得られない場合もあります。
  4. プラセボ群に割り当てられる可能性
     ランダム化比較試験では、実薬ではなくプラセボ(偽薬)に割り当てられる場合もあるため、この点を理解したうえで参加する必要があります。

■まとめ

 治験は、新しい治療を受けるチャンスであると同時に、医療の発展を支える重要な取り組みです。がん患者にとって治験は、標準治療以外の可能性を探る手段となり得ますが、メリットとデメリットを正しく理解し、自分に合った選択をすることが大切です。主治医や相談支援センター、治験検索サイトなどの情報源をうまく活用しながら、納得のいく治療選択につなげていくことをおすすめします。