「全身がん?」でも長生きする秘訣:樹木希林さんから学ぶ「全身転移がん」と付き合う生き方

「全身がん」
この言葉を聞くと、胸の奥が冷たくなるような感覚を覚える方が多いかもしれません。
がんは恐ろしく、避けられず、そして人生を奪っていく――そんなイメージがどうしてもつきまといます。

でも、本当にそれだけでしょうか。

女優・樹木希林さんは、この言葉を自らの口で語りながら、まるでそれさえも人生の一部として抱きしめるように生きました。
彼女の姿は、「がんと共に生きるとはどういうことなのか」を、静かで力強いメッセージとして私たちに残してくれています。

「全身がん」とともに14年生きたという事実

「全身がん」とともに14年生きたという事実

樹木希林さんが乳がんと診断されたのは2004年。
手術後に再発・転移が見つかり、ついには腸、副腎、脊髄など13か所にがんが広がりました。

2013年、世間に「全身がん」であることを公表したとき、多くの人は「もう長くないのでは」と思ったでしょう。
しかし彼女はそこからも、生きることを諦めるどころか、
舞台に立ち、映画に出演し、仕事に情熱を燃やし続けたのです。

がん告知から14年。
亡くなる数カ月前まで仕事を続け、周囲を笑わせ、日常を大切に生きました。

これは奇跡ではありません。
医学的な理由もありますし、運もあったかもしれません。
けれど、それ以上に、彼女の“生き方そのもの”が、長い時間をつくり出したように思えてならないのです。

がんを「敵」としないという強さ

がんと聞けば、多くの人は「戦う」「闘病」「克服」といった言葉を思い浮かべます。
もちろん、それもひとつの姿勢です。

でも、希林さんのスタンスは少し違いました。

「病というものをただ悪いものとして生きるなんて、つまらない」

この言葉は、怒りや恐怖でがんを押し返すのではなく、
不安ごと抱きしめながら生きていく、静かな覚悟が滲んでいます。

再発しても、転移しても、淡々と受け止める。
必要な治療は受けるけれど、治療が人生の中心にはならない。
そして、できる範囲の生活を続ける。

その姿はまるで「病気に人生を奪わせない」とでも言っているようでした。

生活を大切にすることは、生きる力になる

生活を大切にすることは、生きる力になる

希林さんは、病気の状況がどうであっても、
掃除をし、家を整え、仕事に向かい、誰かを笑わせることを続けました。

インタビューでこんなふうに語っています。

「特別に頑張っているという意識はないんです。
家では毎日掃除しています。
古くなった靴下やシャツは掃除道具として使って、最後まで使い切るんです。
人間もそれと同じ。
自分を使い切ったと思えることが、人間冥利に尽きるんじゃないでしょうか」

この言葉には、“病気になっても、自分の人生は自分で選ぶ”という、揺るがない芯があります。

「治療だけをする人生」ではなく、
「治療もするけど、毎日を大切にする人生」。

その積み重ねこそが、長い生存期間をもたらすことがある――
医師として多くの人を見てきて、そう感じることが少なくありません。

実際の患者さんたちにも共通する「あり方」

転移があっても数年間、普通に生活を続けていた方が何人もいます。

そして彼らの共通点は、驚くほど希林さんと似ています。

✔ 病気を否定せず、怒りすぎない
✔ 再発しても立ち止まらない
✔ 必要な治療は受けるが、治療だけに人生を捧げない
✔ 自分の生活を続ける
✔ 誰かを笑わせる余裕がある

治療内容だけでなく、
「生きる姿勢」そのものが、体や心の安定に大きく影響している
ということを、いつも感じます。

樹木希林さんから学ぶ、“全身がん”でも長く生きる秘訣

あくまで「ひとりの人生から見たひとつのヒント」ですが、
希林さんの生き方から学べるポイントをまとめると、こうなります。

1.がん(病気)を悪者にしない

病気と自分の体を責めず、受け入れていくこと。

2.再発を繰り返しても、落ち込みすぎずにまた歩く

泣いてもいい。でも、また前に進む日をつくる。

3.信頼できる医師とつながる

ひとりで背負わない。相談しながら決める。

4.可能な治療を淡々と受ける

諦めないけれど、過度に執着しない。

5.“生活”を手放さない

掃除、料理、仕事、趣味――
日常そのものが、心と体を支えてくれる。

6.ユーモアを忘れない

笑うことは、病気に奪われない最大の力。

最後に

最後に

がんは、どうしても人生に影を落とす病気です。
恐れが湧いて、涙して、戸惑って、誰かに寄りかかりたくなる日もあるでしょう。

でも希林さんは、
「がんが人生を決めるのではなく、自分の生き方が人生を決める」
ということを体現してくれました。

もし今、病気と向き合っている方がいるなら、
どうか焦らず、怒らず、自分を責めず、
自分のペースで“今日”を生きてほしい。

がんがあっても、
人生は終わりではありません。
生き方次第で、
驚くほど豊かに、穏やかに、そして長く続いていくことがあります。

あなたの今日が、少しでも軽く、あたたかくなることを願っています。