抗がん剤治療を受ける多くの患者さんが悩まされる副作用のひとつに、「末梢神経障害」があります。治療の種類や投与量にもよりますが、特定の抗がん剤で特に起こりやすい副作用として知られており、生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼすことがあります。
本記事では、この末梢神経障害の特徴や、近年注目されている「サプリメントによる予防・軽減の可能性」について、海外で行われた研究をもとに詳しく紹介していきます。

末梢神経障害とは、抗がん剤によって手足の末梢神経がダメージを受けることで生じる一連の症状を指します。具体的には、以下のような症状がよく見られます。
これらの症状は、治療を重ねるほど徐々に蓄積する傾向があります。また、抗がん剤治療が終了した後も、すぐに改善しない場合が多いことも特徴です。場合によっては数か月、長い場合には数年続くこともあります。
特に以下の薬剤は末梢神経障害を引き起こしやすいことが知られています。
これらは多くのがん治療で使用される薬剤であり、副作用への対策は患者さんにとって大きな課題となっています。
末梢神経障害への対策としては、次のような方法が現在用いられています。
しかし、これらの対策だけでは劇的な改善を得られないことも多く、世界中でより効果的な治療法の研究が続けられています。その中で近年注目されているのが、「サプリメントが症状を軽減する可能性」です。

2017年12月、J Natl Cancer Inst.(米国の主要ながん研究誌)に、サプリメントの摂取と抗がん剤による末梢神経障害の関係を調べた研究結果が報告されました。研究名は「DELCaP試験」です。
● 試験の概要
● 研究で調べたサプリメント
これらの摂取と末梢神経障害の発生率との関連を調べました。
1)診断前からマルチビタミンを摂取していたグループ
治療が始まる以前からマルチビタミンをとっていた人では、症状が明らかに少ない結果となりました。
2)治療中のみマルチビタミンを摂取したグループ
診断前ほどではありませんが、治療中にマルチビタミンを摂取した人でも症状が軽減する傾向が見られました。
3)その他のサプリメントは効果なし
ビタミンB群やビタミンC、D、Eなど、個別のビタミン・栄養素では症状軽減の効果は認められませんでした。
つまり、この研究で効果が示されたのはマルチビタミンだけ という結果でした。
ただし、なぜマルチビタミンだけが有効で、個々のビタミンでは効果が見られなかったのか、理由はまだ明らかになっていません。
日本がんサポーティブケア学会が公表している「がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き 2017年版」では、ビタミンB12製剤の有効性については「エビデンスが非常に低く、有効性は明らかでない」とされています。
マルチビタミンの有効性についても、現時点では決定的とは言えず、今後の大規模なランダム化比較試験での検証が必要とされています。

現時点で確実な治療法が少ない末梢神経障害において、今回紹介した研究結果は、患者さんにとって希望となる可能性があります。
抗がん剤治療による手足のしびれで苦しむ方にとって、マルチビタミンの摂取は比較的安全であり、試す価値のある選択肢といえるでしょう。ただし、サプリメントの使用を検討する際は、治療内容や体調によって相性の悪い場合もあるため、必ず担当医や薬剤師に相談することをおすすめします。
末梢神経障害は、患者さんの生活を大きく揺さぶるつらい副作用のひとつです。研究がさらに進み、より効果的な予防・治療法が確立されることが期待されています。