食べてもやせる(体重が減る)がん患者へ:3つのアドバイス

「しっかり食べているのに、どうしてやせていくんだろう…」
がん治療中の患者さんから、こうした悩みを聞くことは少なくありません。

がん治療は、体に大きな負担をかけるだけでなく、消化や吸収、体内の代謝に変化を引き起こすことがあります。そのため、食べている量と体重の変化が一致しないことは決して珍しくありません。

しかし、体重減少に“完全に手の打ちようがない”わけではありません。
原因を見極め、適切な対策をとることで、体重減少をある程度食い止め、体力の維持に成功するケースは多くあります。

この記事では、食べても体重が落ちる主な原因を3つ取り上げ、それぞれに応じた効果的な対策を紹介します。
「どうしてやせてしまうのか」「何をしたらいいのか」を、できるだけわかりやすくお伝えします。

そもそも、なぜ「食べてもやせる」ことが起こるのか?

がん患者さんの体重減少は、原因がひとつではありません。

  • がんそのものが引き起こす体の変化
  • 手術による消化機能の低下
  • 抗がん剤など治療の副作用
  • 精神的ストレス
  • 食べる量の低下
  • 消化・吸収の低下

こうした複数の要因が、複雑に重なり合っています。

特に進行がんの患者さんの場合、がん悪液質(カヘキシア)と呼ばれる状態に陥ることがあります。
これは、通常の栄養摂取や点滴だけでは改善しづらい、非常にやっかいな代謝の異常です。

また、胃を全摘した患者さんでは、構造上どうしても体重が戻りにくいことがあります。
しかし、これらの場合でも、適切な対処をすることで体重減少を最小限にできる可能性があります。

では具体的な原因と対策を、順番に見ていきましょう。

1.カロリー・栄養不足――“食べているつもり”でも足りていないことがある

1.カロリー・栄養不足――“食べているつもり”でも足りていないことがある

最も多い原因がこれです。

「ちゃんと食べています」とお話しされる患者さんの食事内容を詳しく聞いてみると、
糖質(ご飯や麺類)中心で、タンパク質や脂質が不足しているケースがとても多いのです。

◆糖質は摂れていても、「栄養」は不足している

例えばこんな例があります。

  • 朝:トーストとコーヒー
  • 昼:うどん
  • 夜:ご飯と少量のおかず

一見普通の食事に見えますが、がん患者さんが体力を維持するには圧倒的にタンパク質とカロリーが不足しています。

がん治療中の体は、普段より多くのタンパク質やエネルギーを必要とします。
しかし、食欲が落ちていると肉や魚などのタンパク質食品が食べづらくなってしまう。

その結果――
「食べているのにやせる」という状態に陥ります。

◆対策:高カロリー・高タンパク食に切り替える

次のような工夫が効果的です。

  • 肉・魚・卵・豆製品を意識して増やす
  • 少量で効率的にエネルギーが摂れる食品を取り入れる
  • 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を活用
  • 食事の合間に補助飲料(エンジョイゼリー、メイバランスなど)を追加

特に栄養補助食品は、食欲がない時でも摂りやすく、体重維持に優れた効果があります。

◆病院の栄養指導は「強力な武器」

病院には専門の栄養士がいます。
栄養管理は“治療の一部”です。

主治医に相談することで、保険診療の枠内で栄養指導を受けられる場合があります。

「普段何を食べているか」を一緒に見直しながら、無理なく続けられる食事プランを作ることができます。

2.消化吸収の障害――食べても体が栄養を取り込めていない

2.消化吸収の障害――食べても体が栄養を取り込めていない

特に消化器がん(胃がん、大腸がん、すい臓がんなど)の患者さんに多い原因です。

胃や腸の手術を受けた場合、食べ物の通り道が変わったり、消化液の分泌が減ったりするので、食べても吸収できなくなり、その結果、体重が減少することがあります。

こうした原因は、努力だけでは改善しないこともあります。

◆すい臓を切除した患者さんは特に注意

すい臓は、食べ物を分解するための酵素をつくる臓器です。

すい臓の一部または全部を切除した患者さんは、
食べた脂肪やタンパク質を消化できず、体重が減ることがよくあります。

この場合、膵酵素補充療法(リパクレオンの投与)が大きな効果を発揮します。

「食べても太らない」「脂っぽい便が出る」
こうした症状がある方は、主治医に相談してみてください。

◆必要なのは「医療の力を借りる」こと

消化吸収の問題は、食事だけで解決できないことがあります。

  • 消化酵素の処方
  • 経腸栄養(飲むタイプの栄養剤)の併用
  • 点滴での栄養補給

これらは医師と相談しながら、安全に取り入れることができます。

ポイントは、我慢しない、早めに相談することです。

3.腸内細菌叢の乱れ――抗がん剤治療が腸内環境を大きく変える

3.腸内細菌叢の乱れ――抗がん剤治療が腸内環境を大きく変える

近年、がん患者の腸内細菌についての研究が進み、
腸内細菌叢(腸内フローラ)が乱れると体重減少が起こりやすいことが分かってきました。

特に抗がん剤は、

  • 消化管粘膜の炎症
  • 下痢
  • 食欲低下

を引き起こし、腸内細菌の「多様性」(いろいろな種類の菌が存在する状態)が失われてしまいます。

腸内細菌は、
消化吸収、免疫、代謝
など、健康維持に欠かせない役割を持っています。

そのバランスが崩れることで、
「食べているのに体重が減る」という問題が起こりやすくなるのです。

◆対策:腸内細菌を整える食事を続ける

腸内細菌を整えるためには、次のような食品が効果的です。

●発酵食品

  • ヨーグルト
  • 納豆
  • 味噌
  • 漬物
  • キムチ

●善玉菌のエサになる食品(プレバイオティクス)

  • オリゴ糖
  • 水溶性食物繊維(ごぼう、海藻、玉ねぎ、果物など)

◆「長く続けること」が最も重要

腸内細菌はすぐには変わりません。

1週間で変化は見えなくても、
1ヶ月、3ヶ月、半年と続けることで確かな変化が出てきます。

「とりあえず3日だけやってみる」では意味がありません。
腸内環境を整えるには、生活習慣として定着させることが大切です。

まとめ:原因に応じた対策が、体重維持のカギになる

食べてもやせてしまう――
がん治療中の体重減少は、多くの患者さんにとって大きな不安になります。

しかし、原因を理解し、適切な対処をすれば、体重減少を防ぎ、体力の維持に成功することは十分に可能です。

食べても痩せる原因は主に3つ

  1. カロリー・栄養不足
     → 高タンパク・高カロリー食、栄養補助食品の活用、栄養指導
  2. 消化吸収の障害
     → 消化酵素の補充(特にすい臓切除後)、経腸栄養の検討、早めの受診
  3. 腸内細菌叢の乱れ
     → 発酵食品、オリゴ糖、食物繊維を継続的に摂取

体重が減ると、がん治療の副作用が増して、治療そのものが続けられなくなることがあります。
だからこそ、体重と栄養管理は“治療と同じくらい重要”なテーマです。

不安があれば、ひとりで抱えずに主治医や栄養士に相談してください。
あなたの体力を守るための方法は必ずあります。