乳がん患者は糖質制限がいい?糖質と生存率との関係を解説

乳がんと食事 糖質量が多いと死亡率が上昇する可能性について

乳がんと食事 糖質量が多いと死亡率が上昇する可能性について

乳がんと診断された後、多くの方が「どのような食事をとればよいのか」という疑問を抱きます。しかし現状では、がん診断後の食事について明確な基準や統一されたガイドラインはほとんどありません。医療者の間でも意見が分かれることが多く、実際には「特に制限はありません」「好きなものを食べて大丈夫ですよ」と伝えられる方も少なくありません。

とはいえ、近年の研究によって“がんと診断された後の食事内容が、生存期間に影響する可能性がある”ことが分かってきました。つまり、診断後の食事は決して軽視できるものではなく、何を食べてもよいというわけではないということです。今回は、乳がん患者さんにおける食事中の糖質量と生存率との関連を調べた研究をもとに、食事の工夫について考えていきます。

■ 乳がん患者の食事と生存率を調べた研究とは

2020年1月にアメリカから報告された研究では、ステージ1〜3の乳がん患者8,932名を対象として、診断後の食事内容を詳細に調査しました。食事のアンケート結果から、以下の食事指標を計算し、生存率との関係を解析しました。

  • グリセミック指数(GI値)
    ある食品を食べた時の血糖値の上昇のしやすさを示す指標で、ブドウ糖を100として比較します。
  • グリセミック負荷(GL)
    GI値に、その食品に含まれる炭水化物の量を加味したもの。血糖値がどれほど上昇しやすいかを示す、より実践的な指数です。
  • インスリン指数・インスリン負荷
    食事によってどれほどインスリンが分泌されるかを示す指標。

調査の結果、糖質量の多い食事(グリセミック負荷が高い食事)をしていた患者さんは、糖質量が低い人と比べて乳がんによる死亡リスクが33%上昇していました。また、全ての原因による死亡リスクも26%高くなっていたことが分かりました。

さらに、GI値・インスリン指数・インスリン負荷が高い人でも、全死亡リスクは20%ほど上昇していたと報告されています。

これらの結果から、乳がん患者さんにとって、診断後に摂取する糖質量や血糖値の上がりやすさは生存率に関わる可能性があることが示されました。

■ 高GI食品を控える重要性

■ 高GI食品を控える重要性

研究結果を踏まえると、乳がん患者さんはできるだけ血糖値が急激に上がりやすい食品を控えることが望ましいと言えます。

一般的に、GI値の高い食品としては、

  • 白米
  • 食パン
  • うどんなどの麺類
  • 砂糖を多く使ったお菓子や清涼飲料

などが挙げられます。これらは血糖値を上昇させやすく、結果的にインスリンの分泌も増えるため、控えめにすることが推奨されます。

一方で、GI値の低い食品には、

  • 野菜全般
  • 豆腐・納豆などの大豆製品
  • 魚・肉
  • きのこ類・海藻類

などがあります。食事の中では、こうした低GI食品を増やしながら、糖質量が多い食品を摂りすぎないよう工夫することが大切になります。

■ 「玄米ががんによい」は本当か?

がん患者さんは玄米を食べたほうがよい」という言葉を耳にする方もいるかもしれません。しかし、玄米自体ががんを治すという直接的な根拠はありません

ただし、白米や白いパンなどの精製された炭水化物に比べ、玄米や全粒粉パンなどの“精製度の低い炭水化物”はGI値が低いため、血糖値が上がりにくいという利点があります。

また、精製度の低い炭水化物を摂取することで、大腸がんサバイバーの生存期間が延長したという研究もあります。この点から、白米より玄米・五穀米を選ぶ方が、血糖値の観点では望ましいと言えるでしょう。

■ 他のがんにおいても糖質摂取は影響する可能性

乳がんに限らず、大腸がんでも同様に、糖質量と生存率に関する興味深い研究があります。大腸がん患者1,542名を対象に調査した研究では、植物性食品を中心とした低糖質食をとっていた患者さんの

  • 大腸がんによる死亡率が約70%減少
  • 全体の死亡率も約30%減少

という結果が示されました。

このことからも、がん患者さんの食事では血糖値が急激に上がりにくいメニューや、糖質量を抑えた食事がプラスに働く可能性があります。

■ がん患者さんにすすめたい「ゆるい糖質制限」

糖質制限というと、「ごはんを全く食べない」「極端に糖質を避ける」というイメージを持つ方もいますが、無理な制限は体力低下につながるため適切ではありません。

そこで、がん患者さんに取り入れやすいのが ゆるい糖質制限 です。

例えば、

  • 主食(白米・パン・麺類)を通常の半分にする
  • 白米を玄米・雑穀米に置き換える
  • 間食に甘いものを控える
  • 野菜・大豆製品・魚を中心に食べる

など、日常の中で無理なく調整できる範囲で糖質を減らしていく方法です。

完全に糖質を断つ必要はなく、血糖値の急上昇を避け、ゆるやかにコントロールすることが重要だと考えられています。

■ おわりに

■ おわりに

近年の研究から、乳がん患者さんでは診断後の食事内容が生存率に影響する可能性があることがわかってきました。特に、血糖値の上昇を招く糖質の量は重要で、摂りすぎによって死亡リスクが上昇するという報告があります。

高GI食品を控え、血糖値が上がりにくい食品を中心とした食事を意識することは、長期的な健康維持に役立つ可能性があります。無理のない範囲で糖質を調整する“ゆるい糖質制限”を取り入れながら、日々の食事を見直していくことが大切です。

乳がんと診断された後も、食事の工夫によって自分の体を守ることは十分可能です。ご自身に合った食生活を見つけながら、無理なく続けられる方法を選んでいただければと思います。