がんが再発・転移したとき3つの疑問:治療したのになぜ?手術できる?すぐに死ぬ?

がんが再発・転移したとき――知っておきたい3つの疑問

がんの治療は、手術・抗がん剤治療・放射線治療など、体に大きな負担がかかる過程を乗り越えながら進んでいきます。患者さんもご家族も、「これで治ったはず」と信じて日常生活へ戻ろうとします。しかし現実には、治療を終えた後の経過観察で再発や転移が見つかることがあり、その知らせは時に大きな失望や不安をもたらします。「あれほど頑張って治療したのに、なぜ…」「もう治らないのだろうか」――そんな思いを抱くのは当然のことです。

がんの再発・転移にはさまざまなパターンがあり、治療方針や予後(生存率)も状況によって大きく変わります。本記事では、多くの患者さんが抱きやすい「3つの疑問」に丁寧にお答えし、再発・転移と向き合うための正確な理解をお届けします。

■疑問1:手術でがんを取ったのに、なぜ後から転移が起こるのか?

■疑問1:手術でがんを取ったのに、なぜ後から転移が起こるのか?

手術で原発巣(最初にがんが発生した場所)をすべて切除したにもかかわらず、その後に別の臓器でがんが見つかる――これは多くの患者さんにとって納得しがたい現象かもしれません。

医療の世界では、手術時点すでに「目に見えない小さな転移」や「極めて早期の再発の芽」が体内に存在していることがあると考えられています。CTやMRI、PET検査など高度な画像診断であっても、数ミリ以下の小さながん細胞の塊までは捉えられないことがあります。その小さな病巣が術後の時間経過とともに成長し、検査で確認できるようになると「再発・転移」と診断されるのです。

さらに近年、膵臓がんの研究では驚くべき事実も明らかになりました。がんができる前段階の「前がん病変」の時期から、すでにがんの“もと”となる細胞が他の臓器へ移動している場合があるというのです。つまり一部のがんでは、発生した当初から体内に潜み、時間をかけて大きくなる細胞が存在しているということになります。

このような背景から、手術が成功し原発巣を完全に取り除いても、潜伏していた細胞が後から増大し、転移として現れるケースが起こるのです。

■疑問2:がんが再発・転移したら、手術はもうできないのか?

■疑問2:がんが再発・転移したら、手術はもうできないのか?

再発や転移が見つかったとき、「ならばその場所をもう一度切除すればよいのでは?」と考える方は少なくありません。しかし実際には、再発・転移の手術が可能かどうかは極めて慎重に判断される問題で、手術できないケースの方が多いのが現状です。

●手術が難しいケース

  1. 転移が多発している場合
    複数の臓器に多数の転移がある場合、目に見える病変だけを取り除いても、体の別の場所に見つかっていないがん細胞が潜んでいる可能性が高いため、手術の意義が乏しくなります。
  2. 腹膜播種・胸膜播種がある場合
    がん細胞がお腹の中(腹腔)や胸の中(胸腔)に散らばるように広がり、腹水が溜まることもあります。この状態では広範囲に広がっていると考えられ、手術で全てを取り除くことは困難です。
  3. 局所再発でも広がりが大きい場合
    元の部位や近くのリンパ節に再発した場合でも、その部位にがんが浸潤して広がっていると切除が難しいことがあります。

●手術できるケース

オリゴメタ(少数転移)」と呼ばれる状態では、手術が治療の選択肢となることがあります。
オリゴメタとは、

  • 転移の数が2〜3個以内
  • 転移が一つの臓器に限局
    している場合を指します。

昔は「転移が一つでもあれば全身病」という考え方が主流でしたが、現在は少数なら局所治療で根治の可能性がある”という新しい考え方が広がっています。実際、オリゴメタの転移を切除し、長期生存や治癒が得られた例も報告されています。

■疑問3:再発・転移したら、もう治らないのか?すぐに死ぬのか?

■疑問3:再発・転移したら、もう治らないのか?すぐに死ぬのか?

再発や転移が見つかると、「もう終わりなのでは」と感じてしまう方も多いでしょう。しかし、再発・転移=即死亡、治らないという考え方は現在の医療では当てはまりません。

確かに、再発・転移を完全に治すのは難しいケースが多いですが、治癒を目指せる場合も、病気の進行を長く抑えながら生活を続けられる場合もあります。

●治療の選択肢が拡大している

  1. 手術による根治
    オリゴメタのように局所治療が可能な場合、再発後でも治癒を目指す手術が行われることがあります。
  2. 薬物療法の進歩
    従来の抗がん剤に加え、
    • 分子標的薬
    • 免疫チェックポイント阻害薬
      などの新しい薬の登場により、治療の効果は大幅に向上しました。
      転移が消失するほど劇的に効く例も報告されています。
  3. ゲノム医療・個別化医療の発展
    血液からがん由来のDNA(遊離DNA)を調べる「リキッドバイオプシー」の普及により、患者さんのがんに特有の遺伝子変異を調べることができるようになりました。
    その結果に基づき、「その人のがんだけに効く可能性が高い薬」を選べる時代になっています。

これらの進歩により、再発・転移がんの予後(生存率)は全体として改善しています。

■最後に:あきらめず、治療の選択肢を主治医とともに探すこと

再発・転移が見つかったとき、絶望するのは自然なことです。しかし、がん治療の進歩により、

  • 再発後も治癒が期待できる
  • 長期にわたってがんを抑えながら生活できる
    といった可能性が広がっています。

まずは焦らず、自分にはどんな治療法があるのか、主治医としっかり話し合うことが大切です。
そして、治療とともに、

  • 規則正しい生活
  • バランスのよい食事
  • 無理のない運動
  • 心身の安定
    といった日々の健康習慣を続けることが、治療の効果を支える力にもなります。

再発・転移という事実は厳しいものですが、決して希望を失う必要はありません。
最新の医療と適切なケアを受けながら、自分のペースで前へ進んでいきましょう。