がんの治療は、手術・抗がん剤治療・放射線治療など、体に大きな負担がかかる過程を乗り越えながら進んでいきます。患者さんもご家族も、「これで治ったはず」と信じて日常生活へ戻ろうとします。しかし現実には、治療を終えた後の経過観察で再発や転移が見つかることがあり、その知らせは時に大きな失望や不安をもたらします。「あれほど頑張って治療したのに、なぜ…」「もう治らないのだろうか」――そんな思いを抱くのは当然のことです。
がんの再発・転移にはさまざまなパターンがあり、治療方針や予後(生存率)も状況によって大きく変わります。本記事では、多くの患者さんが抱きやすい「3つの疑問」に丁寧にお答えし、再発・転移と向き合うための正確な理解をお届けします。

手術で原発巣(最初にがんが発生した場所)をすべて切除したにもかかわらず、その後に別の臓器でがんが見つかる――これは多くの患者さんにとって納得しがたい現象かもしれません。
医療の世界では、手術時点すでに「目に見えない小さな転移」や「極めて早期の再発の芽」が体内に存在していることがあると考えられています。CTやMRI、PET検査など高度な画像診断であっても、数ミリ以下の小さながん細胞の塊までは捉えられないことがあります。その小さな病巣が術後の時間経過とともに成長し、検査で確認できるようになると「再発・転移」と診断されるのです。
さらに近年、膵臓がんの研究では驚くべき事実も明らかになりました。がんができる前段階の「前がん病変」の時期から、すでにがんの“もと”となる細胞が他の臓器へ移動している場合があるというのです。つまり一部のがんでは、発生した当初から体内に潜み、時間をかけて大きくなる細胞が存在しているということになります。
このような背景から、手術が成功し原発巣を完全に取り除いても、潜伏していた細胞が後から増大し、転移として現れるケースが起こるのです。

再発や転移が見つかったとき、「ならばその場所をもう一度切除すればよいのでは?」と考える方は少なくありません。しかし実際には、再発・転移の手術が可能かどうかは極めて慎重に判断される問題で、手術できないケースの方が多いのが現状です。
●手術が難しいケース
●手術できるケース
「オリゴメタ(少数転移)」と呼ばれる状態では、手術が治療の選択肢となることがあります。
オリゴメタとは、
昔は「転移が一つでもあれば全身病」という考え方が主流でしたが、現在は「”少数なら局所治療で根治の可能性がある”という新しい考え方 」 が広がっています。実際、オリゴメタの転移を切除し、長期生存や治癒が得られた例も報告されています。

再発や転移が見つかると、「もう終わりなのでは」と感じてしまう方も多いでしょう。しかし、再発・転移=即死亡、治らないという考え方は現在の医療では当てはまりません。
確かに、再発・転移を完全に治すのは難しいケースが多いですが、治癒を目指せる場合も、病気の進行を長く抑えながら生活を続けられる場合もあります。
●治療の選択肢が拡大している
これらの進歩により、再発・転移がんの予後(生存率)は全体として改善しています。
再発・転移が見つかったとき、絶望するのは自然なことです。しかし、がん治療の進歩により、
まずは焦らず、自分にはどんな治療法があるのか、主治医としっかり話し合うことが大切です。
そして、治療とともに、
再発・転移という事実は厳しいものですが、決して希望を失う必要はありません。
最新の医療と適切なケアを受けながら、自分のペースで前へ進んでいきましょう。