ビタミンDのサプリメントで進行がんの発症リスクが低下:ランダム化比較試験より

ビタミンDのサプリメントで進行がんの発症リスクが低下:ランダム化比較試験より

ビタミンDのサプリメントは進行がんを予防できるのか

ビタミンDのサプリメントは進行がんを予防できるのか

今回は、ビタミンDのサプリメントが進行がんの発症リスクを下げる可能性についてご紹介します。

「サプリメントでがん予防はできるのか?」「もし効果があるなら、どのサプリメントなのか?」――多くの人が抱く疑問ではないでしょうか。現在、日本では2人に1人ががんを経験するとされ、予防に対する関心はますます高まっています。しかし、実際のところ、サプリメントによってがんの発症を予防できると明確に示されたエビデンス(科学的根拠)は、現時点ではほとんどありません

一方で、動物実験や疫学研究では、いくつかのサプリメントにがん予防の可能性が示唆されています。それにもかかわらず、「確実に予防できる」と言い切れないのには理由があります。

なぜサプリメントのエビデンスは少ないのか

サプリメントに関するランダム化比較試験(RCT)は非常に少ないという現実があります。RCTとは、医療の有効性を示す最も信頼度の高い研究方法であり、薬や治療法の評価に広く用いられています。しかし、サプリメントのRCTを実施するには莫大な費用がかかるにもかかわらず、安価で多くの企業が製造するサプリメントには、大きな利益が見込めません。そのため、企業が積極的に資金提供する動機が乏しく、十分な数の臨床試験が行われないのが現状です。

こうした背景を考えると、「サプリメントにエビデンスがない」というよりも、「エビデンスを確立するための試験が行われていない」という表現の方が実態に近いと言えるでしょう。

大規模試験VITAL Studyによる新たな発見

大規模試験VITAL Studyによる新たな発見

そんな中、ビタミンDのサプリメントに注目が集まるきっかけとなったのが、米国で実施された大規模なランダム化比較試験「VITAL試験」です。

VITAL試験は、がんの既往がない約2万5千人を対象に、ビタミンD(1日2000IU)とオメガ3脂肪酸のサプリメントが、がんや心血管疾患の発症を予防するかを5年間にわたり調査した研究です。一次解析(最初の公式解析)では、ビタミンDもオメガ3脂肪酸も、全がんの発症リスクを有意には低下させないという結果が報告されました。

しかし、ここで一つ重要な点があります。この解析では、早期がんから進行がんまで、すべての段階のがんをまとめて評価していました。また、対象者には体格の違う人が混在しており、ビタミンDの効果が特定の条件下で発揮される可能性は検討されていませんでした。

そこで研究者たちは、二次解析として「進行がん」に着目し、さらに体格指数(BMI)別の影響を調べました。

進行がんと体格指数(BMI)に着目した結果

進行がんと体格指数(BMI)に着目した結果

二次解析の結果、驚くべきことに以下の点が明らかになりました。

  • ビタミンDを摂取したグループでは
     進行がん(転移性または致死的ながん)の発症リスクが有意に低下した。
     ハザード比は0.83(17%のリスク減)
  • 特に、BMIが25未満(正常体重)の人では、より強い効果が認められた。
     ハザード比0.62(38%のリスク減)
  • 一方、BMIが25以上(過体重・肥満)の人では効果が見られなかった

つまり、ビタミンDは「がん全体」ではなく「進行がん」に対して効果を持つ可能性があり、その効果は体格によって左右されることが示されたのです。

なぜBMIによって効果が変わるのか

なぜ正常体重の人にのみ効果が見られたのか、その理由ははっきりとわかっていません。ただし、肥満そのものががんのリスクを高めることは知られており、脂肪組織がビタミンDの代謝や働きに影響するという報告もあります。

脂肪組織にビタミンDが蓄積されやすく、血中濃度が上がりにくいことが指摘されており、こうした生理的要因が効果の差につながっている可能性があります。

いずれにしても、がんの予防という観点からは、体重管理が非常に重要であることに違いはありません。

ビタミンDでなぜ進行がんが減るのか

ビタミンDでなぜ進行がんが減るのか

ビタミンDには多岐にわたる働きがあります。その中でも、がんに関連すると考えられているのが以下の作用です。

1. 免疫機能の強化

ビタミンDは免疫細胞の働きを調整する役割を持っており、がん細胞を攻撃する免疫反応を高めることが報告されています。

2. がん細胞の増殖抑制

ビタミンD受容体を介して細胞周期を調整し、がん細胞の増殖を抑える可能性が指摘されています。

3. 炎症の抑制

慢性炎症はがんの進行に関わりますが、ビタミンDには炎症を抑える作用があります。

これらの作用が組み合わさり、特に進行がんの発生を抑える方向に働いたのではないかと考えられています。

がん患者さんの予後改善にも期待

すでにがんと診断されている方を対象にした研究でも、ビタミンDによって肺がんや消化器がんの予後(生存率)が改善する可能性を示すデータが報告されています。まだ確立された治療の一つとは言えませんが、補助的な栄養としての役割が期待されています。

まとめ

VITAL試験の二次解析から分かったことは次のとおりです。

  • ビタミンD(1日2000IU)を5年間摂取すると、
     進行がん(転移性・致死的)の発症リスクが有意に低下する。
  • 特に、BMIが25未満の正常体重の人では約38%リスク減
  • がん全体の発症には影響しないが、進行がんに限ると明らかな予防効果が示された。
  • 肥満では効果が見えにくい可能性がある。

ビタミンDは、がん患者さんにとっても、健康な人にとっても、今後さらに研究が期待されるサプリメントです。食品や日光からも摂取できますが、血中濃度の安定を考えれば、適切な量のサプリメントは有効な選択肢になり得ます。

興味のある方は、日常の健康管理の一つとして取り入れてみてもよいかもしれません。