みなさんは「プレハビリテーション」という言葉を聞いたことがありますか?
あまり聞き慣れない方も多いと思いますが、これは「手術や治療の前に行う準備運動や生活改善」のことを指します。つまり、手術を受ける前に体と心を整えて、治療に備えるための取り組みです。
実は、このプレハビリテーションは非常に重要で、世界では手術や治療の成果を高める方法として注目されています。しかし日本では、まだあまり知られていないのが現状です。そこで今回は、がん患者さんにとってプレハビリテーションがどれほど大切か、そして実際に何をすればよいのかをわかりやすく解説します。

まず、プレハビリテーションを行うことで得られるメリットについてお話しします。
大きなポイントのひとつは、手術前から体の準備をすることで、術後に起こりやすいトラブルを減らせることです。たとえば、肺炎や傷の感染、腸のつなぎ目がうまくくっつかないなどの問題が起こりにくくなります。また、体の準備ができていることで、手術後の回復も早くなり、入院期間も短くなることが報告されています。
さらに驚くべきことに、プレハビリテーションを行った人は、長期的に見ても生存率が高くなる傾向があるという研究結果もあります。つまり、手術前に短期間でも体と心を整えることによって、治療の成績や回復のスピードを高めることができるのです。

では、誰がプレハビリテーションを行うとよいのでしょうか?
基本的には、すべてのがん患者さんにメリットがありますが、特に次のような方は積極的に取り組むことが推奨されます。
これらにひとつでも当てはまる場合は、プレハビリテーションをしっかり行うことで、手術や治療の安全性を高めることができます。

「リハビリ」と聞くと、骨折や脳の病気の後に行う運動をイメージする方も多いかもしれません。しかし、プレハビリテーションはそれとは少し異なります。基本は「運動」「栄養」「心のケア」の3つです。さらに、禁煙や呼吸の訓練を加えたプログラムもあります。
運動は、有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが基本です。無理のない範囲で少しずつ体を動かすことで、手術後の回復力を高め、体力を維持することができます。
栄養面では、特にタンパク質を意識した食事が大切です。目安として、体重1キロあたり1.2~1.5グラムのタンパク質を摂ると良いとされています。食事だけで十分に摂れない場合は、栄養補助食品やプロテインを活用するのもおすすめです。
手術や治療に向けて不安を感じる方も多いと思います。専門家によるカウンセリングのほか、自分でできる方法として瞑想(マインドフルネス瞑想)などで心を落ち着けることも有効です。
さらに、持病の管理、禁煙、呼吸の訓練、口の健康を保つための歯科ケア、腸内環境を整えるプロバイオティクスの活用なども、プレハビリテーションの一環として取り入れることができます。
大切なのは、これらの習慣を手術前だけでなく、治療後も続けることです。定期的な運動や栄養バランスの取れた食事、心のケアなどを継続することで、再発リスクを下げ、健康を長く保つことにつながります。つまり、プレハビリテーションで身につけた生活習慣は「がんを寄せ付けない生活」とも言えるのです。
プレハビリテーションは、手術や治療に向けて体と心を整える大切な準備です。体力をつけ、栄養を補い、心を落ち着けることで、手術後の回復が早くなり、合併症や入院期間の短縮にもつながります。特に体力の低下や持病のある方、高齢の方、手術前に治療を受ける方は、しっかりと取り組むことが大切です。
また、運動や食事、心のケアを続けることは、手術や治療だけでなく、再発予防や健康維持にも役立ちます。プレハビリテーションは、がんと向き合うすべての方に知ってほしい、治療を成功に導くための生活習慣です。