がんと診断されたとき、人がまず抱く感情は強い不安や恐怖です。特に「ステージ4」という言葉を告げられたとき、多くの患者さんやご家族は「もう助からないのではないか」と感じてしまいます。そして、その中で最も多く寄せられる質問のひとつが「あとどれくらい生きられますか」という“余命”に関するものです。
しかし、はっきりお伝えできることがあります。それは——余命は、実際には誰にも正確に予測できないということです。今回は、なぜ余命を聞かないほうが良いのか、そしてステージ4と言われたときに本当に大切にすべきことについて、丁寧に解説します。

医師が余命を質問されて困ってしまうのは、決して説明を避けているわけではありません。「わからない」というのが医学的に正直で誠実な答えだからです。
がんの進行速度は個人によって驚くほど差があります。同じがん種・同じステージであっても、
——このように経過は多様で、一つの数字では言い表せません。差し迫った末期、例えば「あと1か月以内である可能性が非常に高い」と判断できる状況を除けば、医師が余命を断言することは極めて難しいのです。
「余命〇か月」と聞くと、その期間を過ぎれば必ず亡くなるという印象を持つ方が少なくありません。しかし、多くの場合、余命は“中央値”で示されます。
中央値とは、「その期間で患者さんの半数が亡くなった」という統計的な目安にすぎません。つまり、
ということを意味します。
ところが患者さんが余命を聞いてショックを受け、「どうせ3か月しか生きられない」と諦めてしまうケースがあります。その結果、
本来もっと長く生きられたはずなのに、精神的なショックが体調や治療意欲に影響し、本当にその期間で亡くなってしまう
という方が少なくありません。
余命が「当たる」理由には、こうした心理的影響も大きく関わっています。

余命については患者さんから明確に質問されない限り、こちらからはお話ししません。
余命を知ることで心が折れ、治療への意欲や前向きさを失う方がいるためです。がん治療において、患者さんの意欲や精神的な安定は、治療効果に少なからず影響します。だからこそ、余命という“平均値”に自分を当てはめてしまう必要はありません。
ステージ4=「末期」ではない
がんのステージは病気の進行具合を示す指標ですが、一般に「ステージ4」と聞くと“末期がん”を連想しがちです。しかし、これは正しい理解ではありません。
ステージ4は「遠隔転移がある状態」と定義されますが、
このどちらも同じステージ4に分類されます。そのため、ステージ4と言っても患者さんの状態は千差万別で「治療ができない末期」とは限らないのです。
がんの種類・転移の部位・数・患者さんの体力(全身状態)によって、予後は大きく変わります。
ステージ4でも治療の選択肢は広がっている
近年、ステージ4のがんに対する治療は大きく進歩しています。
例えば、
これらの新しい治療法は、従来の抗がん剤とは全く異なるメカニズムでがんを抑え、長期生存に貢献するケースが増えてきました。
治療が奏効すると、
「がんが縮小し、ステージが下がり、手術が可能になる」
という、以前ならほとんど見られなかった展開が実際に起きています。
医学は確実に進歩しており、ステージ4は「もう終わり」では決してありません。

ステージ4のがんを克服して長く生活されている方には、いくつかの共通点があります。その一つが、
「自分は生き残る側に入る」という強い意志を持つこと
です。
これは精神論ではありません。前向きな姿勢は、治療の継続、生活習慣の改善、情報収集の積極性、医師と相談しながらベストな治療を選択する行動につながります。
さらに、日常生活の中で患者さん自身が取り組めることもあります。
これらはどれも、予後や治療効果に確実に良い影響をもたらします。
がんの治療は、数値や統計だけで語れるものではありません。
余命という数字はあくまで「集団としての平均値」にすぎず、あなた自身の未来を決めるものではありません。
ステージ4と言われても、治療によって長期間元気に生活している人は確実に存在します。
だからこそ、
これが、がんと向き合ううえで最も大切な姿勢です。
どうか、余命という“数字”にとらわれず、あなた自身の未来を決めるのはあなた自身だということを忘れないでください。医療は日々進歩しています。希望を持ち続けながら、正しい情報と信頼できる医療者とともに、一歩ずつ前へ進んでいきましょう。