近年、「病気を治す」だけでなく、「自分の生き方を整える」ことの大切さが注目されています。
その中でも話題を集めているのが、医師・船戸崇史(ふなとたかし)氏の著書『がんが消えていく生き方』です。
この本は、がんを患った一人の医師が、自らの体験を通してたどり着いた「治る生き方」をまとめたものです。

船戸氏は48歳のとき、偶然受けた人間ドックで腎臓の腫瘍を指摘されました。
診断は「腎細胞がん」。手術での切除という標準治療を受けたのち、彼は「再発を防ぐにはどう生きるか」を真剣に考えるようになります。
医師である彼は、西洋医学の限界もよく知っていました。
そこで選んだのは、ビタミンC点滴療法、温熱療法、リンパ球療法、漢方、サプリメントなど、いわゆる「代替・補完医療」と呼ばれるもの。
しかし、それ以上に重要だったのは「自分の生活そのものを変えること」でした。
「がんは生活習慣病の最終形」と言われることもあります。
船戸氏は、「病気をつくるのは生き方であり、治すのもまた生き方だ」と考え、日常の中で5つの習慣を徹底的に見直しました。

がんを抑える免疫細胞は、深い睡眠中にもっとも活発に働きます。
睡眠不足は、免疫低下やホルモンバランスの乱れを引き起こし、がんの進行リスクを高めることが知られています。
船戸氏は「夜10時就寝・朝6時起床」というリズムを推奨しています。
8時間の十分な睡眠をとることで、自律神経が整い、細胞修復の時間を確保できるからです。
また、就寝90分前にはスマートフォンやパソコンなどのブルーライトを遮断し、脳を休めることも大切だと述べています。
静かな夜の時間を大切にし、眠りを「自分を癒す時間」として意識する――これが第一の習慣です。
がん細胞は糖をエネルギー源として増殖します。
そのため、糖質の過剰摂取を控え、血糖値の急上昇を避ける食生活が推奨されています。
船戸氏は「緑黄色野菜」「根菜」「きのこ類」「海藻」「豆類」「発酵食品」を積極的にとることを勧めています。
これらの食品は、体内の炎症を抑え、腸内環境を整え、免疫機能を高める働きがあります。
また、年に数回の「断食(ファスティング)」も実践しているそうです。
3日間の断食を年3回行うことで、消化器を休ませ、オートファジー(細胞の掃除機能)を活性化させるという考えです。
「食べること」は単なる栄養摂取ではなく、「生き方の反映」。
自然の恵みを感謝していただくことが、心身を健やかに保つ秘訣です。
「体を動かすこと」は、がんの再発予防においても重要です。
筋肉が動くと、免疫を担うリンパの流れが促され、血流も改善します。
船戸氏は、朝6~8時の間に30分~1時間のウォーキングを日課にしています。
できれば、その中に100メートルのダッシュを1~2本入れて、無酸素運動も取り入れるとよいといいます。
ウォーキングの効果は単に体力づくりだけではありません。
朝日を浴びながら歩くことで、セロトニン(幸せホルモン)が分泌され、メンタルの安定にもつながります。
「動けば、心も動く」。この一歩が、生命力を呼び覚ます原動力になります。
がん細胞は「低体温」を好むことが知られています。
体温が1℃下がると、免疫力は30%低下するとも言われます。
そのため、船戸氏は「体を温めること」を意識的に行っています。
日常の運動に加え、HSP(ヒートショックプロテイン)入浴法を取り入れることをすすめています。
HSPとは、熱刺激によって体内で生成されるタンパク質で、細胞を修復し、免疫機能を高める働きがあります。
40~42℃のお湯に10~15分ほど浸かり、その後は保温を意識して休む――これがHSP入浴の基本です。
湯上がりのぽかぽかした余韻は、心までほぐしてくれます。
「冷えをなくすこと」は、「滞りをなくすこと」。
血の巡りが整うと、エネルギーもまた全身にめぐっていきます。
「笑い」は、人間が持つ最高の自然治癒力を引き出します。
笑うことで、ナチュラルキラー(NK)細胞が活性化し、免疫力が向上することが科学的にも証明されています。
船戸氏は、家族との団らんや趣味の時間を「笑う時間」として大切にしているそうです。
仕事の合間に冗談を交わす、好きな映画を見る、ペットと遊ぶ――そんな日常の中の小さな笑いが、心と体を同時に癒してくれます。
笑うことで副交感神経が優位になり、ストレスホルモンが減少。
体の緊張がほどけ、血流も改善されるのです。
「笑うことは、最も手軽で、最も効果的な治療」と言っても過言ではありません。
船戸氏が提案する理想的な1日はこうです。
一見シンプルですが、「生きる力を整える一日の流れ」そのものです。

本書の中でもっとも印象的なのは、船戸氏の死生観です。
彼はこう語ります。
「私たちはいずれ必ず死にます。だから安心なのです。
死ぬまでは“生きる”のですから。
選択があるとしたら、『生きるか死ぬか』ではなく、『どう生きるか』しかないのです。」
死を恐れるのではなく、「今をどう生きるか」に意識を向ける――。
それが、がんを克服するための最大の心構えなのかもしれません。
がんを治すための特効薬はありません。
けれども、日々の暮らし方が体の環境を変え、細胞のひとつひとつに「生きる力」を取り戻させます。
この5つを大切にすることが、「がんが嫌がる生き方」であり、
同時に「自分らしく生きるための生き方」でもあるのです。