がん治療の成果を大きく左右する要因として、近年とくに注目されているのが「筋肉量」です。がん患者さんの多くに筋肉量減少(サルコペニア)がみられ、治療効果や術後の回復、生存率にまで影響を及ぼすことが分かってきました。本記事では、がん患者さんの筋肉量減少とプレハビリテーション、そして筋トレと栄養サポートによる改善について解説します。

がん患者さんに見られる「激やせ」は、脂肪の減少だけでなく、筋肉量の大幅な低下が主な原因です。研究によれば、がん患者の5〜90%に筋肉量減少が認められ、高齢の患者さんではさらに増加傾向があります。ステージが進むほど筋肉減少が著しいことも確認されています。
サルコペニアという言葉は、ギリシャ語で“筋肉”を表す「Sarco」と“減少”を意味する「Penia」を組み合わせたものです。筋肉が減ることで、握力低下や歩行速度の低下など、日常生活動作にさまざまな支障が生じます。
ふくらはぎを指で囲む「指輪っかテスト」も有用な自己チェック法です。
がんは、単に食欲を低下させるだけでなく、体内の代謝やホルモンバランスを変化させ、筋肉を分解しやすい状態を作ります。主な原因は次の通りです。
このため、がん患者さんのサルコペニアは“二次性サルコペニア”とも呼ばれ、迅速な対処が必要です。
サルコペニアがある状態で治療に臨むと、
といったリスクが報告されています。たとえば、肝がんでは術後死亡リスクが約3.2倍、大腸がんで約1.9倍に上昇するなど、がん種にかかわらず悪影響が見られます。
抗がん剤治療では、サルコペニアのある患者さんは

治療成績を向上させる方法として近年注目されているのが、**プレハビリテーション(Prehabilitation)**です。これは、手術前から運動・栄養・精神面を強化し、手術に備える取り組みです。
■ 主な効果
特に、高齢者や活動量の少ない方、体重減少のある方、術前に抗がん剤治療を受ける方には、強く推奨されます。
術前の栄養補助食品の活用により、感染性合併症が減少し、入院期間も短くなることが示されています。
5.筋トレ+栄養サポートが生存率を高める
筋肉を維持することは、がん治療の“土台”と言えます。筋力トレーニングは、生存率を高め、死亡リスクを低下させることが複数の研究で確認されています。
週1回でも死亡リスクが下がるという報告もあります。

筋トレ後のホエイプロテイン摂取は、筋肉量の維持・増加に効果的です。
目標となるたんぱく質量は、
体重1kgあたり1.2〜1.5g/日
例:体重50kg → 60〜75g/日
食事のみで補うのが難しい場合は、栄養補助食品の活用が有効です。
がん治療を「受ける」だけでなく、「備える」ことで、治療の質は大きく変わります。筋肉と栄養を整えることは、明日の身体と人生の質を守る第一歩となるのです。必要なサポートは必ずあります。どうか一人で抱え込まず、治療チームとともに歩んでいきましょう。