がん患者の家族へ読んでもらいたい本3冊【医師がおすすめ】

がん患者の家族へ読んでもらいたい本3冊【医師がおすすめ】

「家族は第二の患者」
がん医療ではよく聞く言葉です。

がんを宣告されたのは患者さん本人であっても、その瞬間から家族もまた、深い不安と緊張の中で日々を過ごすことになります。「何をしてあげればいいのだろう」「どう声をかけるべきか」「自分がつらいことを誰に話せばいいのか」。こうした悩みを抱えながら、出口の見えない気持ちで頑張っているご家族はとても多いです。

しかし、驚くほど多くの家族が同じ悩みに直面しているにも関わらず、
「家族がどう向き合うべきか」
を教えてくれる情報はまだまだ十分とは言えません。

診察室では患者さんの病状や治療の説明が中心で、家族自身の気持ちや悩みに丁寧に寄り添える時間は限られてしまいます。その結果、

● どう接すればよいのかわからない
● 患者本人の言動に戸惑う
● 何を支えれば良いのか見えない
● 自分自身の心が疲れている
● 相談相手がいない

という思いを抱えたまま、孤独に頑張り続けてしまう家族が少なくありません。

そんなご家族に、おすすめしたい本を3冊紹介します。
どれも、「家族としてどう生きるか」「どう寄り添うか」という、とても大切なテーマに向き合った良書です。

① 『がんばりすぎない、悲しみすぎない。「がん患者の家族」のための言葉の処方箋』

① 『がんばりすぎない、悲しみすぎない。「がん患者の家族」のための言葉の処方箋』

──家族の心をふっと軽くしてくれる一冊

最初に紹介したいのは、順天堂大学医学部教授で「がん哲学外来」の提唱者である樋野興夫先生による本です。

がん哲学外来と言うと難しく感じるかもしれませんが、その目的はとてもシンプル。
「患者さんや家族が、気持ちを自由に話せる場所をつくる」
という活動です。

順天堂医院で行われている「がん哲学外来カフェ」は、患者さんだけでなく、ご家族、医療者、地域の人、だれでも参加できる対話の場です。丸いテーブルを囲み、思い思いの悩みを皆で共有します。

ここでは、「がんの話」をしなくてもいいのです。
ただ、その時に心の奥で感じていることを言葉にするだけで、驚くほど気持ちが整理されることがあります。

本書では、実際に家族が抱えやすい悩みが例として挙げられ、それぞれに優しく寄り添う「言葉の処方箋」が紹介されています。

● 患者にどう声をかければいい?
● 情けないと思ってしまう自分の気持ちをどう扱う?
● 先が見えない不安とどう向き合う?
● 自分の生活はどう保てばいい?

こうした質問に、無理に頑張らなくて良い、悲しみすぎなくて良い、そんな温かいメッセージが詰まっています。

がん患者さんの家族は「しっかりしなきゃ」「支えなきゃ」と、自分自身に強いプレッシャーをかけがちです。
でも本書は、そんな頑張りすぎている心を優しくほぐし、「家族のつらさも自然なことだよ」と肯定してくれます。

心が迷ったときの“道しるべ”になる一冊です。

② 『あのひとががんになったら 「通院治療」時代のつながり方』

──患者目線で語られる「寄り添い方」のリアル

2冊目は、乳がんサバイバーであり、キャンサー・ソリューションズ社代表の桜井なおみさんによる本です。

著者の桜井さんは、自らのがん治療の経験を基に、長年にわたり、がん患者の就労や生活支援に取り組んできました。だからこそ文章の端々に、患者としての実感と、社会的支援に関わる専門家としての視点が両立し、とても読みやすく深い内容になっています。

本書の特徴は、
「患者がどんな言葉に救われ、どんな言葉に傷つくのか」
が非常に具体的に書かれている点です。

たとえば、患者さんがうれしいと感じる言葉として紹介されているものは、

● 「一緒に頑張りましょうね」
● 「大切な人だから、ちゃんと治療してほしい」
● 「いつもあなたのことを思っています」

どれも、患者を特別扱いするのではなく、「あなたは大切な存在」と、真っ直ぐに伝える言葉です。
逆に、良かれと思って言ったつもりが、患者さんを追い詰めてしまう言葉もあります。そこも本書では丁寧に解説されています。

また、現代は「通院しながらがん治療を続ける時代」。
患者さんが仕事や家庭と治療を両立する際に、家族がどう支えればいいのか、職場はどう理解すればいいのか、非常に実践的なヒントが多く収録されています。

● 無理をさせないためにできること
● 患者が本音を言いやすい聞き方
● 治療によって変化する生活のサポート
● 気まずさを避けるコミュニケーション

など、「つながり方」というテーマを多角的に掘り下げた本です。

家族だけでなく、友人、同僚、職場の上司など、多くの人に読んでほしい内容です。

③ 『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』

──医療の基礎知識から生活・お金のことまで全部わかる

3冊目は、放射線科医の内野三菜子先生が、患者さんや家族から寄せられた質問にわかりやすく答えていく形式の本です。

本書の魅力は、とにかく疑問の幅が広いこと

● 病院や医師はどう選ぶ?
● 手術で何が行われる?
● 抗がん剤はどんな副作用が出る?
● 食事はどうすればいい?
● 仕事は続けられる?
● 治療費はいくらかかる?
● がん保険は使える?
● 緩和ケアっていつから?

「これは誰に聞けばいいの?」という疑問は、実は家族が最も抱えがちです。患者さん本人は治療で精一杯のため、家族が代わりに情報を集めたり、判断したりする場面はたくさんあります。

この本は、まさに“家族の辞書”として一冊持っておくと心強い存在です。

治療の専門知識だけでなく、日常生活やお金のことまで解説されているため、
「こんなこと聞いていいのかな?」
という疑問もすべてカバーされています。

特に、がん治療と仕事の両立や、介護・看護の負担に悩む方にとっても実用性の高い本です。

家族こそ、支えを必要としている

がん患者さんの家族は、患者さん以上に自分の気持ちを押し殺してしまいがちです。

● 心配を言えば負担をかける
● 弱音を吐いたらいけない
● 自分がしっかりしなければ

そんな気持ちで日々を過ごし、気が付いたときには心も体も疲れ果てている家族を、医師として何度も見てきました。

しかし、家族が無理をしすぎると、「支える側」から「支えが必要な側」になってしまうこともあります。

だからこそ、家族自身が安心して心を整えるために、こうした本の力を借りることはとても大切です。

まとめ:本は“ひとりで抱え込まない”ための支えになる

まとめ:本は“ひとりで抱え込まない”ための支えになる

今回紹介した3冊は、どれも立場や状況は違いますが、「がん患者さんを支える家族に寄り添う」という共通のテーマを持っています。

● 心のケアをしてくれる本

『がんばりすぎない、悲しみすぎない。「がん患者の家族」のための言葉の処方箋』

● 患者目線と実践的なアドバイス

『あのひとががんになったら』

● 医療・生活・お金をまとめた“家族の辞書”

『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』

家族は、決して“完璧な支援者”である必要はありません。
大切なのは、患者さんと共に「できる範囲で」歩むことです。

もし迷ったり、つらくなったりしたときは、ぜひこれらの本を手に取ってみてください。
きっと心が少し軽くなり、患者さんとの関係を支える力になってくれるはずです。