GI療法後は〇〇に注意!高カリウム血症患者の治療で看護師が意識すべきこと

高カリウム血症とは?

 高カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が異常に上昇した状態を指します。カリウムは、心臓や筋肉の活動、浸透圧の調整、神経の伝達など、体のさまざまな機能を維持するために欠かせない電解質です。

 正常なカリウム濃度は3.5~5.0mEq/Lとされており、この範囲を超えて5.5mEq/L以上になると高カリウム血症と診断されます。


高カリウム血症の原因

高カリウム血症の原因は、以下の4つに分類されます:

  1. 検査データの誤り
     採血時の溶血や保存不備により、実際の値よりも高く表示されるケースがあります。
  2. 細胞内から細胞外液へのカリウム移動
     外傷や感染症、アシドーシス(酸性血症)などで、細胞内のカリウムが血液中に漏れ出すことで発生します。
  3. カリウムの過剰摂取
     点滴やサプリメントの不適切な使用により、体内に過剰なカリウムが取り込まれるケースです。
  4. 腎臓での排泄障害
     腎不全や腎障害により、カリウムが尿中に排泄されず、体内に蓄積されることで発症します。

高カリウム血症の症状

 高カリウム血症の症状には、以下のような全身的な異常が挙げられます:
  • 全身倦怠感
  • 手足のしびれ
  • 悪心・嘔吐
  • 筋力低下や脱力感

  高カリウム血症で最も危険なのは、心臓への影響です。


心臓への影響と心電図の変化

 心臓の動きは、細胞内外のナトリウムやカリウムの濃度バランスによって調整されています。カリウム濃度が上昇するとこのバランスが崩れ、心臓の電気的活動が正常に機能しなくなります。

<心電図の変化>

  1. カリウム濃度6.0mEq/L付近
    o 心電図にテント状T波(尖ったT波)が現れます。
  2. さらにカリウム濃度が上昇
    o P波の消失やQRS波の幅の増大が見られ、心臓の収縮が不完全になります。

高カリウム血症の治療法:GI療法とは?

GI療法の概要

 GI療法は、グルコース(G)とインスリン(I)を同時に投与して血清カリウム値を低下させる治療法です。インスリンは、糖を細胞内に取り込む働きがありますが、この際にカリウムも細胞内に移動させる作用があります。この仕組みを利用して一時的に血清カリウム濃度を下げます。

 ただし、インスリン単独では低血糖を引き起こすため、グルコースを併用することで血糖値を維持しながら治療を行います。


GI療法の流れとポイント

  1. 治療準備
     • 心電図モニター装着:不整脈や心停止を監視するため、心電図モニターを装着します。
     • 点滴ルートの確保:緊急時の対応がスムーズに行えるよう、点滴ルートを確保します。
  2. グルコン酸カルシウムの投与
    • グルコン酸カルシウムは心筋を安定化させ、不整脈を予防します。投与は医師の指示に従い、正確に行います。
  3. GI療法の実施
     医師の指示のもと、以下の薬剤を準備します:
     • グルコース溶液(5%ブドウ糖液500ml、10%ブドウ糖液250ml、または50%ブドウ糖液50ml)。
     • 速効型インスリン5~10単位を追加し、点滴で持続投与します。
    ※治療を開始してから約15分で、カリウム値が低下し始めます。
  4. 低血糖への対応
     GI療法では、75%の患者が低血糖を発症するとの報告があります。低血糖が進行すると次のような症状が現れます:
     • 手の震えや冷や汗
     • 倦怠感や空腹感
     • 意識障害(重症例)
  5. 血糖値の定期測定
     治療後は1時間ごとに血糖値を測定し、異常が認められた場合は直ちに医師に報告します。

GI療法後のケア:根本治療の実施

 GI療法は、カリウムを一時的に細胞内に移動させる応急的な治療法です。根本的な解決のためには、以下のようなアプローチが必要です:

  1. 利尿剤の投与
     利尿剤を使用し、腎臓からカリウムを排泄します。
  2. 人工透析
     腎不全や重症例では人工透析が必要です。血液から直接カリウムを除去します。
  3. 原因の特定と治療
     高カリウム血症を引き起こした根本原因(腎不全や薬剤の影響)を特定し、適切な治療を行います。

看護師が注意すべきポイント

  1. 正確な薬剤準備とダブルチェック
     インスリン製剤は医療事故が多い薬剤です。医師の指示をもとに、投与量や速度をダブルチェックし、安全な治療を徹底します。
  2. 患者さんの状態の継続的観察
     治療中および治療後に以下の点を重点的に観察します:
      • 血糖値とカリウム値の変動。
      • 心電図波形の異常。
      • 患者さんの全身状態(倦怠感、冷や汗、意識レベルの変化)。
  3. 患者さんとご家族への説明
     GI療法の目的や治療後の注意点を分かりやすく説明し、不安の軽減に努めます。

まとめ

 高カリウム血症は、迅速な対応が求められる危険な状態です。GI療法は、短時間で効果を発揮する治療法ですが、低血糖や投与ミスといったリスクを伴います。

 看護師は以下の点を意識し、安全かつ迅速な対応を心がけることが重要です:
  • 血清カリウム値6.5mEq/L以上では緊急対応が必要。
  • GI療法では低血糖の発生に注意し、定期的に血糖値を測定する。
  • 治療後も根本的なカリウム排泄を目的とした治療を継続する。

 患者の命を守るためには、正確な観察と的確な治療が欠かせません。

 日々の実践を通じて、安全な医療提供を目指しましょう。