
――書籍『がんを乗り越えた人が気づく7つのこと』から学ぶ生き方のヒント
がんと向き合う日々は、誰にとっても大きな試練です。治療の選択、心の揺れ、将来への不安…。そうしたなかで、多くのがん患者さんが支えにしているのが、同じ境遇を経験した人の体験談です。書籍やブログ、YouTubeなどで語られる経験は、時に励ましとなり、時に希望につながる「生きた知恵」となることがあります。
今回は、フリーライター・小原田泰久(おはらだ やすひさ)さんが執筆した
『がんを乗り越えた人が気づく7つのこと』 という書籍を取り上げ、その内容をわかりやすく紹介します。
小原田さんは、中国を旅している際にホリスティック医学で知られる医師・帯津良一氏と出会い、そのことをきっかけに「がん治療」「代替医療」の世界に関心を持つようになったそうです。その後、多数のがん患者さんに取材し、50人以上の生の声に耳を傾けてきました。本書ではその一部が紹介されており、標準治療の限界に直面しながら代替医療や自然療法を併用したケース、がんが消失したケースなども含まれています。
しかし、この本は決して
「標準治療を否定する」
「代替療法を推奨する」
「がんを放置してよい」
といった内容ではありません。
むしろ、「がんを経験した人が、どのように病気と向き合ったのか」「どんな気づきを得たのか」という“生き方の変化”に焦点を当てた本です。
著者は、がんを克服した人たちの体験をもとに、共通して語られた“7つの気づき”をまとめています。ここでは、その一つひとつを紹介していきます。
最初のキーワードは「直観」です。治療方針に迷った時、あるいは生き方に悩んだ時、ふと胸の奥から浮かび上がってくる“ひらめき”のような感覚です。
がん治療は選択肢が多く、決断を迫られる場面が少なくありません。そんななかで、自分でも理由が説明できないけれど「こちらの方がしっくりくる」と感じる判断が、結果として良い方向につながったという経験が多く語られています。
これは、ケリー・ターナー氏の『がんが自然に消える生き方』でも強調されているポイントで、直観に耳を傾けることは、自分らしい治療を選ぶうえで一つの助けになるのかもしれません。
2つめの気づきは「縁」です。
がんと診断された時、相談できる人がいるかどうかで、その後の精神状態や治療の選択肢が大きく変わることがあります。一人で抱え込まず、時には誰かに助けを求めることも大切です。
また、偶然の出会いが治療の流れを変えることもあります。本書では、「たまたま出会った人の言葉に救われた」「その出会いから新しい治療に進み回復につながった」という例が紹介されています。
縁は意図して作るものではなく、自然に訪れるもの。しかし、縁を大切にする姿勢が、前に進むきっかけになるのかもしれません。
3つ目は「目に見えない世界」。
科学的に説明できない出来事や、不思議な体験をきっかけに心が軽くなったり、治療への意欲が高まったりすることがあります。がんを経験した方のなかには「説明できないが、確かに感じるものがあった」と語る人もいます。
もちろん、信じるかどうかは個人の自由。しかし、がんという人生の大きな試練を前にしたとき、人の心は時に理屈を超えた領域から力を得ることがあるのです。

病気になると、どうしても意識は自分自身に向きがちです。それは当然のことですが、そんな時こそ「誰かのために」という気持ちが新しい力につながることがあると本書は述べています。
自分の経験をブログにまとめる人、同じ病気の人向けに動画で情報を発信する人、SNSで患者会を立ち上げる人…。誰かの役に立ちたいという思いが、本人の回復の力になるケースは少なくありません。
「他者のために動くこと」は、結果として自分の心を強くしてくれるのです。
「なぜ自分ががんになったのか」。多くの人が最初に抱く疑問です。
本書では、この問いに対して「嘆くのではなく、何か意味があっての出来事かもしれない」と捉え直す視点の大切さを語っています。
「人生の使命を果たすために必要な経験だったのかもしれない」
こう考えることで、がんに対する恐怖や不安が少し軽くなり、前に進む力になることがあります。もちろんこれは精神論ではなく、心の整理の一つの方法です。
多くの人が、周りに合わせて無理をしながら生きています。しかし、その過程で「本当の自分」が見えなくなることもあります。
がんという大きな出来事を通して、生き方を見直し、
「本当にやりたいこと」
「大切にしたいこと」
「自分らしさ」
を取り戻したという声は少なくありません。
がんは決して歓迎されるものではありませんが、人生を見つめ直す契機になることがあるのもまた事実です。

最後は「死の受容」です。
私たちは普段、「いつか必ず死ぬ」という当たり前の事実を意識せずに生きています。しかし、がんと告げられた時、多くの人が突然“死”と向き合わざるを得なくなり、動揺します。
そのため、日頃から死をタブー視せず、自分なりの死生観を持っておくことが大切だと本書では述べています。もちろん、死を受け入れるのは容易ではありません。しかし、死を考えることは逆に「どう生きるか」を豊かにすることにもつながります。
以上が、『がんを乗り越えた人が気づく7つのこと』で紹介されている7つの視点です。
もちろん、これらは個人の経験に基づいたもので、全ての人に当てはまるわけではありません。中には「治った人の話を聞いても仕方ない」と感じる方もいるでしょう。
しかし、がんという大きな出来事を乗り越えてきた人たちの言葉には、日常では得られない深い示唆があり、心に寄り添ってくれる力があります。がん患者さんだけでなく、人生のなかで困難に直面した人にとっても、前を向くきっかけを与えてくれる内容です。
今後も、がん患者さんやがんサバイバーの方々の貴重な体験談や学びを紹介していきたいと思います。