年末年始が近づくと飲酒の機会が増え、急性アルコール中毒で救急外来に搬送される患者が増加します。この状態は、一般的には酩酊(めいてい)と呼ばれ、大量の飲酒によって血中アルコール濃度が急激に上昇し、さまざまな症状を引き起こすものです。

血中アルコール濃度によって、以下のような段階的な症状が現れます。
急性アルコール中毒は軽症であれば自然に回復することもありますが、重症例では命に関わるリスクがあるため、注意深い観察と適切な治療が求められます。
急性アルコール中毒の治療は、基本的に体内でアルコールが代謝されるのを待つことが主な方法です。アルコールは肝臓で主に代謝され、アセトアルデヒドや酢酸に分解されます。この代謝速度には限界があり、外部からその速度を促進する方法は現時点ではありません。
輸液を行うことでアルコールの血中濃度が急激に下がるわけではないため、急性アルコール中毒に対する輸液投与の有効性には疑問が呈されています。以下のような報告があります。
輸液によってアルコールの代謝速度が変化することはないとされています。これは、アルコール代謝が肝臓の酵素の働きによるものであり、輸液ではこれに影響を与えられないためです。
ある研究では、急性アルコール中毒の患者で輸液を投与しなかった場合の救急外来滞在時間は平均189分だったのに対し、輸液を行った場合は254分であったと報告されています。輸液が必ずしも患者の迅速な回復を促進するわけではない可能性があります。
輸液投与がアルコール中毒そのものを直接治療するわけではありませんが、特定の条件下では輸液が重要な役割を果たす場合があります。以下のような場合に輸液が必要とされます。
アルコールは、脳の視床下部に働きかけ、抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌を抑制します。この結果、大量の尿が排出され、脱水症状を引き起こします。脱水が進むと、循環不全や体調悪化の原因となるため、輸液で適切に水分を補う必要があります。
尿とともにナトリウムやカリウムといった電解質が失われるため、低ナトリウム血症や低カリウム血症を引き起こすことがあります。特にカリウム異常は不整脈の原因となるため、電解質を補正する目的で輸液を行います。
アルコールは肝臓の糖新生を抑制するため、長時間飲酒した場合や栄養摂取が不十分な場合、低血糖を引き起こすことがあります。低血糖は意識障害や痙攣を誘発する可能性があるため、ブドウ糖を含む輸液を用いることが推奨されます。
急性アルコール中毒の患者では、転倒や事故による頭部外傷や頭蓋内出血が隠れている場合があります。このような合併症が疑われる場合には、輸液を行いながら慎重に観察を続ける必要があります。
意識が混乱している患者は、点滴ラインを自ら引き抜くことがあります。これにより、出血や感染のリスクが高まるため、適切な固定や監視が必要です。
過剰な輸液は、心不全や肺水腫のリスクを高める可能性があるため、患者の全身状態を観察しながら適切な量を調整します。
血圧、脈拍、呼吸状態、体温の測定を行い、循環・呼吸の状態を評価します。
血中アルコール濃度、血糖値、電解質バランスの確認を行い、異常がないか評価します。
意識レベルの変化や外傷の有無をチェックし、隠れた合併症の可能性を探ります。
脱水症状や電解質異常が認められる場合に、適切な量の輸液を行います。

急性アルコール中毒の治療は基本的に対症療法であり、アルコールの代謝を促進する特効薬は存在しません。輸液投与そのものがアルコール中毒の治療に直接効果を及ぼすわけではありませんが、以下の条件では有効です。
一方で、輸液の必要性を過大評価せず、患者の全身状態や症状を慎重に観察することが重要です。「どうせ酔っ払いだろう」という先入観を排除し、隠れた重篤な病態がないかを常に考慮することが、医療従事者として求められる対応といえます。