急性心筋梗塞後に頻発?心電図モニターによく出てくるSLOW VT(スローブイティー)について解説!

Slow VTとは何か?

医療の現場で心電図モニターを監視していると、「Slow VT」という表記を目にすることがあるかもしれません。本記事では、この「Slow VT」の意味や背景、そして注意すべき点について詳しく解説します。


心室頻拍(VT)とは?

心室頻拍(Ventricular Tachycardia、VT)は、心臓の心室から異常な電気刺激が連続して発生する不整脈の一種です。通常、心臓は洞結節という箇所から発生した電気刺激が刺激伝導系を通って心臓全体に伝わり、効率的に心臓を収縮させる仕組みになっています。しかし、心室から異常な電気刺激が発生した場合、この刺激が正常な伝導路を通らないため、心臓は効率的に収縮できなくなり、血圧が低下することがあります。

VTが持続すると心臓のポンプ機能が大きく損なわれ、心肺停止に至る可能性もあります。そのため、VTは「致死性不整脈」として扱われ、迅速な対応が求められます。一般的に、VTの心拍数は1分間に120回以上とされます。

心室頻拍(VT)とは?

Slow VTとは?

Slow VTとは、「VT」という名前がついていながら心拍数が遅い不整脈です。その心拍数は通常50~90回/分程度で、一般的なVTと比較して低い値です。この「遅い」という性質を反映して「Slow」という名前がつけられています。しかし、実はこの「Slow VT」という名前は正式名称ではありません。

正式名称は「促進性心室固有調律(Accelerated Idioventricular Rhythm、AIVR)」といいます。AIVRは主に急性心筋梗塞を発症した後の患者に見られるもので、心筋梗塞によってダメージを受けた心臓の細胞周囲が興奮し、自動能が亢進して発生する一過性の波形です。


AIVRの特徴と注意点

AIVRは心筋梗塞発症後48時間以内に最も多く見られるとされていますが、慢性的に持続する場合もあります。基本的には良性の不整脈とされ、治療の必要がない場合がほとんどです。しかし、以下の点に注意が必要です。

  1. 緊急性のあるVTの可能性
    AIVRの中には、緊急対応が必要な心室頻拍が紛れ込んでいることがあります。この場合、心停止状態に陥るリスクがあるため、油断は禁物です。
  2. モニター表示だけに頼らない
    モニターで「Slow VT」と表示されていても、その波形が本当にAIVRであるかを確認することが重要です。バイタルサインや意識状態の変化を観察し、異常がないかを注意深くチェックする必要があります。
AIVRの特徴と注意点

AIVRが発生するメカニズム

心筋梗塞による心臓の損傷は、興奮性の高い細胞周囲を形成します。この状態では、洞結節からの電気刺激に頼らずとも、心室自体が電気刺激を発生することがあります。この自動能の亢進がAIVRを引き起こします。

また、AIVRは心臓の自然回復プロセスの一環として出現することが多いと考えられています。そのため、緊急性がない場合は、モニターで観察を続けるのみで治療の対象にはなりません。


医療現場での対応

医療従事者としては、以下の点を心がけることが求められます。

  • モニター波形の精査
    AIVRとVTを見分けるために、心電図波形を正確に解釈する能力が必要です。
  • 患者の全身状態の観察
    モニターだけでは判断できない情報(例えば、血圧、意識レベルなど)を確認し、異常の兆候を早期に発見します。
  • 必要に応じた対応
    患者の状態に応じて、適切な治療や処置を速やかに行います。

結論

「Slow VT」として表示される波形は、実際には促進性心室固有調律(AIVR)であることがほとんどです。AIVRは一般的に良性ですが、時には命に関わる状態を示している可能性もあるため、慎重な対応が必要です。モニターの情報に頼りきらず、患者全体をよく観察し、適切な判断を下すことが大切です。

本記事が、医療従事者の皆さんの日々の実践に役立つ知識となれば幸いです。