共感覚と自閉症について【ASDの人は定型発達の人に比べて、共感覚をもちあわせている割合が高い】

共感覚とは

 共感覚とは、一つの感覚が別の感覚を引き起こす現象のことです。例えば、文字が色と関連づけて見えるなど、様々なタイプの共感覚があります。これまで共感覚は一般的なものではなく、人によって異なり、時にはその存在自体が疑問視されてきました。共感覚はしばしば想像力豊かな人や目立ちたがりの幻想、あるいはドラッグ使用者の幻覚だと見なされることもありました。

本記事では、共感覚とは何か、そしてそれが自閉スペクトラム症(ASD)とどのように関連しているかについて探っていきます。

共感覚と自閉スペクトラム症の関係

共感覚と自閉スペクトラム症の関係

 これまで共感覚とASD(自閉スペクトラム症)の関係は認められていませんでしたが、2013年にケンブリッジ大学の研究者たちが発表した研究によると、自閉スペクトラム症のある人々は、定型発達の人々よりも共感覚を持っている割合が高いことがわかりました。この研究チームは、ASDと共感覚の共通点として「脳の領域間の過剰な結びつき」があるため、ASDの人々が共感覚を持つことが多いのではないかと考えています。

また、ASDと共感覚が両方とも脳内の過剰な結びつきに起因している場合、「自閉スペクトラム症と共感覚を同時に引き起こす遺伝子」の発見に向けた研究が進んでいます。しかし、この遺伝子はまだ特定されていません。

次に、共感覚の具体的な特徴について詳しく見ていきましょう。

共感覚の特徴

 共感覚には以下の特徴があります:

  • 感情を伴う:好き嫌いや快不快などの感情が関連します。
  • 物や経験と結びついていない:特定の物事に結びついて感覚が生じるわけではありません。
  • コントロールできない:共感覚は特定の条件で発生するわけではなく、自分の意識的なコントロールが効きません。
  • 年齢による変化がない:共感覚は年齢を重ねても変わりません。
  • 幼児期からの継続:幼少期から続いていることが多いです。

人間には視覚、聴覚、触覚など多くの感覚があり、それらが組み合わさることで、共感覚も多様な形で現れます。最近では共感覚がメディアで取り上げられることも増えましたが、19世紀末まで科学的に扱われることはありませんでした。現在、共感覚は脳の理解を深める一つの手段として、多くの研究者によって注目されています。

共感覚の種類

共感覚にはさまざまな種類があります:

  • 数字列形:数字や順番に関する情報が、形や立体的なビジュアルとして感じられる現象。数学の式が立体的に見えることがあります。
  • 色のついた音:特定の音や言葉を聞くと、色が思い浮かぶ現象。
  • 味のある言葉:言葉そのものに味を感じることがある現象。例えば、「刑務所」という言葉が冷えたベーコンの味を感じさせることがあります。
  • 色聴:音を聴くことで色や形、動きが連想される現象。音楽や日常の音に対して、視覚的な反応が生じることがあります。
  • 文字の人格化:文字が色を持ち、時には個性を持ったキャラクターのように感じられる現象。
  • 痛みと形の共感覚:痛みを感じた時に、その痛みが色や形、あるいは他の感覚として感じられる現象。

さらに、音を聞くと体に触れられているように感じたり、物を見ると音が聞こえたりする場合もあります。共感覚の中には、視覚と聴覚が連動するものが多く、自己完結的なものが一般的ですが、「ミラータッチ共感覚」のように、他人の感覚が自分に影響を与える場合もあります。ミラータッチ共感覚を持つ人は、他人が何かをしているのを見ると、それを自分が感じているかのように思うことがあります。

共感覚を持つ人々が感じることは一様ではなく、同じタイプの共感覚を持っていても感じ方に個人差があります。

インターモダリティ(通様相性)

共感覚を持たない人でも、感覚同士に共通点を見出すことがあります。たとえば、音楽を「重い」と表現したり、香りを「甘い」と感じたりすることです。このように、異なる感覚を結びつけて表現する現象を「インターモダリティ(通様相性)」と呼びます。

感覚同士が強く結びついている場合、実際に物を持っているように感じたり、複数の感覚が一緒になっていると認識することがあります。共感覚を持つ人は、物心ついたときからそのような感覚を体験しているため、他人との違いに気づくのが遅れることがあります。

最後に

 共感覚についてはまだ解明されていないことが多いですが、科学者たちはその理解を深めています。歴史的には共感覚が信じられなかったり、誤解されたりすることもありましたが、現在ではその存在が認識され、研究が進んでいます。将来的には、共感覚の研究が発達障害や脳のメカニズムの解明に繋がることが期待されています。