心房細動の症状や治療、心電図について解説 放置すれば命の危険も…

 心房細動(Atrial Fibrillation: AF)は、心臓における最も一般的な不整脈の一つです。心房細動が放置されると、命に関わるリスクを伴うこともあります。そのため、早期発見と適切な治療が重要です。

 本記事では、心房細動の症状、治療法、そして心電図の解釈について解説し、その重大性を理解し、どのように対処すべきかを説明します。


心房細動とは?

 心臓は4つの部屋から構成されています。上部の2つが心房、下部の2つが心室です。心房から心室に向かって規則正しく電気的な刺激が伝わることにより、心臓は収縮・拡張を繰り返し、全身に血液を送り出すポンプの役割を果たします。

 心房細動とは、心房内で異常な電気的活動が発生し、規則的な収縮リズムが維持できなくなる状態を指します。心房細動時には心房内で細かい震えのような異常な電気的な信号(細動波)が発生します。異常な電気刺激は400回/分以上も発生していますが、すべてが心室へ伝わらないように房室結節で制限しています。よって、心拍数が400回/分となることはありませんが、房室結節はタイミングの調節まではできません。

 このため、心房の収縮が正常に行われず、心房のリズムが乱れます。心房細動の特徴的な所見としては、心電図においてP波が消失し、RR間隔が不規則になる点が挙げられます。心房が正常に機能していないため、血液の流れが不規則になり、心室の収縮も乱れ、脈拍が不規則になります。


心房細動の原因

心房細動の原因は多岐にわたります。主な原因としては、以下が挙げられます。

  1. 心疾患:特に高血圧や心筋梗塞、心不全などの基礎疾患がある。
  2. 弁膜症:心臓の弁に異常がある。
  3. 高血圧:血圧が高い状態が続くと、心房に負担がかかります。
  4. ストレスや睡眠不足:生活習慣や心理的なストレスも心房細動を引き起こす要因となります。
  5. 過剰なアルコール摂取
  6. 脱水症状:体内の水分が不足すると、心房の電気的活動に影響を与えることがあります。

心房細動の症状

 心房細動の症状は、患者さんの状態によって異なります。一般的な症状としては、次のようなものが挙げられます。

 • 動悸:脈拍が不規則で早くなるため、胸の中でドキドキする感覚を覚えることがあります。
 • 息切れや疲労感:心臓が効率的に血液を送り出せず、息切れを感じたり、疲れやすくなります。
 • めまい:脳への血流が不十分になり、めまいを感じることがあります。
 • 胸痛:心臓の負担が増すため、胸部に圧迫感や痛みを感じることがあります。
 • 血圧低下:心房は血液のリザーバーのような働きもあり、心房の収縮は心拍出量の約20%を担います。しっかりと収縮と拡張をしていれば、循環を保つことができますが、心房細動が起こると、十分な心拍出量が得られず、血圧低下に至ります。
 • 意識障害:極端な場合、意識がぼんやりとすることもあります。

なお、心房細動の中には症状が軽度である場合もあり、しばしば患者さんが自覚症状に気づかないこともあります。

心房細動の症状

心房細動の診断:心電図の役割

心房細動を診断する最も重要なツールが心電図(ECG)です。心房細動の特徴的な所見としては、以下の3つが挙げられます。

  1. P波の欠如:正常な心拍では、P波は心房の収縮を表しますが、心房細動ではP波が完全に消失します。
  2. 細動波(f波)の存在:心房内で異常な電気活動が発生しているため、心電図の基線に細かいギザギザが現れることがあります。これが「細動波」と呼ばれ、心房の震えを示しています。
  3. 不規則なRR間隔:心房細動では、心室の収縮を表すR波間の間隔が不規則になります。

これらの特徴を基に、心房細動の診断が行われます。

心房細動の診断:心電図の役割

心房細動が引き起こすリスク

心房細動を放置することは、非常に危険です。主なリスクとしては、脳梗塞や心不全が挙げられます。

1.脳梗塞のリスク:

  心房細動が続くと、心房内で血液が停滞し、血栓(血の塊)が形成されることがあります。この血栓が血流に乗って脳に送られると、脳血管に詰まることがあり、これを塞栓症と言います。脳血管が詰まると、脳梗塞を引き起こし、命に関わる重大な症状を引き起こす可能性があります。
 脳梗塞のリスクは、CHADS₂スコアを用いて評価されます。CHADS₂スコアは、心房細動患者さんの脳梗塞リスクを予測するためのスコアで、以下の項目で評価されます。

危険因子スコア
Congestive heart failure/
LV dysfunction
心不全、左室機能不全+1
Hypertension高血圧+1
Age年齢75歳以上+1
Diabetes mellitus糖尿病+1
S₂Stroke / TIA脳卒中/TIAの既往+2
合計0~6

スコアが高いほど、脳梗塞のリスクが高まります。脳梗塞を予防するために、抗凝固薬(ワーファリンやNOACなど)を使用することが推奨されます。


2.心不全のリスク:

 心房細動は心臓に負担をかけるため、心不全を引き起こすことがあります。心房の正常な収縮がなくなるため、心臓全体のポンプ機能が低下し、血液を全身に送り出す力が弱くなります。これにより、息切れや疲労感が増し、重篤な場合には命の危険に直面することもあります。


心房細動の治療

 心房細動の治療には、いくつかの方法があります。治療の目的は、血栓の予防や症状の軽減、そして心房のリズムの正常化です。

1.抗凝固療法:

 血栓が形成されるリスクを減少させるため、抗凝固薬が使用されます。これにより、脳梗塞のリスクを軽減することができます。

 内服後は、採血でPT-INRという指標を確認します。PT-INRとは採取した血液が固まるまでどのくらいの時間がかかるのかを見る検査です。

 通常の人であればPT-INRの値は1.0secくらいですが、投薬された患者さんでは2.0~3.0sec程度で管理するように調整されています。


2.リズムコントロール:

 心房細動を通常のリズムに戻すことを目的とした治療です。薬物療法やカテーテルアブレーションが行われることがあります。


3.レートコントロール:

  心房細動をそのままにしておき、心拍数を正常範囲にコントロールする治療です。β遮断薬やカルシウム拮抗薬、ジギタリスが使用されます。


4.除細動:

 突然発症した心房細動に対して、電気的なショックを与えて正常なリズムに戻す方法です。

 ※患者さんによって使用される薬剤はさまざまです。また、心房細動を抑えるために使用した薬剤によって新たな不整脈が起こることも珍しくありません。看護師として治療が開始されれば、心電図波形や患者さんの循環動態に注目して有効な治療が行われているか評価することが重要です。


まとめ

 心房細動は放置すると、脳梗塞や心不全といった重大な合併症を引き起こすリスクがあります。

そのため、症状が出た場合は早期に診断と治療を受けることが重要です。

適切な治療により、心房細動によるリスクを軽減し、日常生活を安全に送ることができます