境界性パーソナリティ障害の正しい接し方や対応~周囲の優しさが患者さんを支える~

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、感情の起伏が激しく、人間関係や自己イメージ、行動に影響を及ぼす精神的な疾患です。患者さん自身の感情や行動をコントロールすることが難しく、不安定な精神状態が続くことで生活や人間関係に問題が生じる場合があります。

 本記事では、境界性パーソナリティ障害についての知識と、患者さんとの接し方、看護師としての適切な対応について詳しく解説します。


境界性パーソナリティ障害とは?

病態と症状

 境界性パーソナリティ障害は、主に10代から20代の若い女性に多く見られます。特徴としては以下のような症状があります:

 • 感情の起伏が激しい:些細なきっかけで強い怒りや悲しみを感じる。
 • 人間関係の不安定さ:他者への依存や執着が強く、孤独を極端に恐れる。
 • 自傷行為や過量服薬:自分を傷つける行動が見られる場合がある。
 • 自己否定感:自分の存在価値を見失いがち。

 これらの症状が生活に支障をきたし、時にはうつ状態やアルコール依存などの他の精神疾患を伴うこともあります。また、自傷行為が生命に危険を及ぼす場合もあるため、適切な対応が必要です。


病気の背景と要因

 境界性パーソナリティ障害の正確な原因は明らかではありませんが、性格や育った環境、トラウマ経験が関与していると考えられています。また、正確に「精神疾患」と位置づけるのが難しい部分もあり、患者さん本人が「なぜこのような行動をしてしまうのか」を自分で理解できず苦しんでいるケースも多いのが実情です。

病気の背景と要因

医療者としての適切な対応

救急外来での対応

 自傷行為や過量服薬で救急外来に搬送される患者さんも少なくありません。患者さんの行動が理解しづらいこともありますが、まずは命に直結する状態の安定を図ることが最優先です。その後、患者さんに寄り添い、心の苦しみを汲み取る対応が求められます。

 精神科への診察依頼を速やかに行い、専門的な治療につなげることが重要です。境界性パーソナリティ障害は薬物療法のみでの改善が難しく、心理療法や周囲の支援が欠かせません。


看護師としての役割

 看護師は患者さんに最も近い存在として、日々のケアや観察を通じて患者さんの心の状態を把握し、適切に対応する必要があります。以下のポイントを意識しましょう:

1.患者さんの感情に寄り添う

 感情が不安定な患者さんに対して、否定や無視をせず、誠実に向き合うことが大切です。相手の言葉や行動を軽視せず、「あなたの気持ちを理解しようとしています」という姿勢で接することで信頼関係を築くことができます。

2.詳細な記録の徹底

 患者さんの感情や行動、症状のトリガーを記録することで、チーム内での情報共有がスムーズになります。治療経過を客観的に把握し、今後のケア方針を考えるうえで重要です。

3.危険物の管理とリスクの軽減

 境界性パーソナリティ障害の患者さんは、自〇企図のリスクが高い場合があります。持ち込み物の管理や病室内の環境整備を徹底し、安全な状態を確保しましょう。また、患者さんの話を傾聴し、心理的なサポートを行うことで、不安定な感情の緩和につなげます。


患者さんへの適切な接し方

 境界性パーソナリティ障害の患者さんは感情的に不安定なため、接し方には特に注意が必要です。適切な対応が患者さんの心の安定を支える大きな一歩となります。

信頼関係を築くためのポイント

• 共感的な態度を持つ

 患者さんの感情や行動を理解し、批判や否定を避けることが大切です。「どうしてこんなことをするのか」ではなく、「何があなたをこうさせたのか」という視点で話を聞きましょう。

• 一貫性を持った対応

 看護チーム内で情報を共有し、対応方針を統一することが重要です。スタッフ間で矛盾した態度を取ると、患者さんが混乱し、不信感を抱くことにつながります。


自傷行為への理解と対応

 患者さんの自傷行為は、本人にとって何らかの理由がある場合が多いです。行動を否定するのではなく、その背景にある感情や状況を理解しようとする姿勢が必要です。また、自傷行為を繰り返さないよう、具体的な支援を行い、患者さんが自分自身を肯定できる環境を整えることも大切です。


境界性パーソナリティ障害の治療と予後

主な治療法

1.心理療法

 認知行動療法(CBT)など、患者さん自身が感情や行動を調整する方法を学ぶ治療法が効果的です。

2.薬物療法

 必要に応じて、不安やうつ症状を緩和するための薬物治療が行われることもあります。ただし、薬物療法は補助的な役割であるため、患者さんの状態に合わせて慎重に使用されます。


長期的な見通し

 境界性パーソナリティ障害は時間の経過とともに症状が軽減する場合があります。年齢を重ねることで、自己コントロール能力が向上し、感情の安定を取り戻すケースも少なくありません。そのため、「焦らず、少しずつ良くしていく」姿勢で患者さんに接することが大切です。


まとめ

 境界性パーソナリティ障害の患者さんに対する対応は、一見難しいように感じるかもしれませんが、周囲の理解と支援が患者さんの回復に大きく寄与します。

 • 患者さんの感情を否定せず、共感的な態度で接する。
 • 信頼関係を築き、一貫性のある対応を心掛ける。
 • 詳細な記録と情報共有を通じて、適切なケアを提供する。

まとめ

 患者さんが自分を肯定し、前向きに歩んでいけるよう、看護師として丁寧に寄り添うことが求められます。辛さを抱える患者さんにとって、あなたの優しさが大きな支えとなるでしょう。

何か一つでもあなたの心に残れば幸いです。本記事をご覧いただきありがとうございました。