ペースメーカーのトラブルや看護について 手術後に注意したいポイントも解説

はじめに

ペースメーカーは、徐脈性不整脈の患者に対し、心拍を補助するために不可欠な医療デバイスです。ただし、機械である以上、使用中に不具合が発生する可能性は避けられません。ペースメーカーに起因するトラブルは、場合によっては患者の生命に重大な影響を及ぼすこともあります。そのため、看護師がこれらのトラブルについて理解し、迅速かつ適切に対応することは極めて重要です。

この記事では、ペースメーカーの主なトラブルの種類とその原因、さらに看護師が注意すべき対応ポイントについて解説します。

ペーシング不全について

ペースメーカーの基本機能は、心臓が適切に拍動しない場合に電気刺激(ペーシング)を送り、心拍を補助することです。しかし、何らかの理由でこの刺激が心臓に伝わらず、期待されるQRS波が発生しない状態ペーシング不全と呼びます。

ペーシング不全の症状と原因

ペーシング不全では、心電図にペーシングのスパイクが表示されても、それに続くQRS波が記録されません。この結果、心室の収縮が起こらず、全身への血液供給が不十分となります。これにより以下の症状が発生する可能性があります。

  • 意識消失(アダムストークス発作
  • 血圧低下
  • 四肢の冷感やチアノーゼ

主な原因

  • 閾値の上昇:ペーシング刺激に対する心臓の反応が鈍くなる。
  • リードの位置異常:リード(電極)が適切な位置からずれる。
  • 電池切れ:ペースメーカーのバッテリーが消耗している。
  • 薬剤の影響:抗不整脈薬が心筋の反応性を低下させる。

看護師の対応

  • バイタルチェック:心拍や血圧の異常を迅速に評価します。
  • 医師への連絡:ペーシング不全が疑われた場合、ただちに医師へ報告し、必要な検査(例:レントゲン)を手配します。
  • サポート:リード位置の確認やペーシング出力調整をサポートします。

センシング不全について

ペースメーカーは、心臓の自己脈を感知する「センシング」機能を備えています。この機能によって自己脈の有無を認識し、ペーシングの必要性を判断します。しかし、このセンシング機能に障害が生じると、「アンダーセンシング」や「オーバーセンシング」といった問題が発生します。

アンダーセンシング

アンダーセンシングとは、自己脈が存在しているにもかかわらず、ペースメーカーがそれを検知できない状態を指します。この結果、不要なペーシングが行われます

主なリスク

ペーシングが心電図のT波に重なることでスパイク on Tが起こり、致死性不整脈が誘発される可能性があります。

原因

  • リードの接続不良または位置のズレ
  • 心筋の変性
  • センシング感度の不適切な設定

看護師の対応

  • 心電図の観察:スパイクと自己脈の関係に注意を払い、不自然なペーシングを検出します。
  • 医師への相談:アンダーセンシングを疑った場合は速やかに報告し、設定の調整やリードの確認を依頼します。

オーバーセンシング

オーバーセンシングは、筋電図や電気メスによるノイズなど、自己脈でない信号を自己脈として誤認する状態です。その結果、必要なペーシングが抑制されます

主なリスク

ペーシングが抑制されることで心停止が発生し、アダムストークス発作など生命を脅かす状態につながる可能性があります。

原因

  • 外部からの電気的干渉(例:手術時の電気メス)
  • 過度に高い感度設定

看護師の対応

  • 異常の観察:心停止のリスクを考慮し、バイタルサインを頻繁に確認します。
  • 医師への報告:状況を伝え、感度の再設定を依頼します。
  • 外部要因の除去:不要な電気的干渉を取り除く提案を行います。

フュージョン波形について

フュージョン波形は、自己脈とペースメーカーのスパイクが同時に発生することで生じます。この状態自体は重大な問題を引き起こすことは少ないものの、長期的には電池の消耗を早める原因となる可能性があります

長期的な問題

フュージョン波形の頻発は、ペースメーカーのバッテリー寿命を短縮させます。電池交換には手術が必要であり、患者に負担がかかります。

看護師の対応

  • 観察:フュージョン波形が頻繁に見られる場合、医師に報告して設定の見直しを検討します。
  • 提案:電池寿命への影響を説明し、不要なペーシングの削減を提案します。

まとめ

ペースメーカーのトラブルは患者の生命に重大な影響を与える可能性があるため、看護師がその仕組みや対応方法を把握しておくことが不可欠です。

看護師が留意すべきポイント

  • ペーシング不全:スパイク後にQRS波が現れない場合、迅速に対応する。
  • アンダーセンシング:自己脈を感知できず、致死性不整脈のリスクがある。
  • オーバーセンシング:不要な信号を自己脈と誤認し、ペーシングが抑制される。
  • フュージョン波形:長期的には電池の消耗を招き、患者負担を増加させる可能性がある。

ペースメーカーに関する知識を深め、適切に対処することで、患者の安全と生活の質を向上させることができます。医師や臨床工学技士と協力しながら、トラブルのないケアを目指しましょう。