ペースメーカーは、徐脈性不整脈の患者に対し、心拍を補助するために不可欠な医療デバイスです。ただし、機械である以上、使用中に不具合が発生する可能性は避けられません。ペースメーカーに起因するトラブルは、場合によっては患者の生命に重大な影響を及ぼすこともあります。そのため、看護師がこれらのトラブルについて理解し、迅速かつ適切に対応することは極めて重要です。
この記事では、ペースメーカーの主なトラブルの種類とその原因、さらに看護師が注意すべき対応ポイントについて解説します。

ペースメーカーの基本機能は、心臓が適切に拍動しない場合に電気刺激(ペーシング)を送り、心拍を補助することです。しかし、何らかの理由でこの刺激が心臓に伝わらず、期待されるQRS波が発生しない状態をペーシング不全と呼びます。
ペーシング不全では、心電図にペーシングのスパイクが表示されても、それに続くQRS波が記録されません。この結果、心室の収縮が起こらず、全身への血液供給が不十分となります。これにより以下の症状が発生する可能性があります。
ペースメーカーは、心臓の自己脈を感知する「センシング」機能を備えています。この機能によって自己脈の有無を認識し、ペーシングの必要性を判断します。しかし、このセンシング機能に障害が生じると、「アンダーセンシング」や「オーバーセンシング」といった問題が発生します。
アンダーセンシングとは、自己脈が存在しているにもかかわらず、ペースメーカーがそれを検知できない状態を指します。この結果、不要なペーシングが行われます。
ペーシングが心電図のT波に重なることでスパイク on Tが起こり、致死性不整脈が誘発される可能性があります。

オーバーセンシングは、筋電図や電気メスによるノイズなど、自己脈でない信号を自己脈として誤認する状態です。その結果、必要なペーシングが抑制されます。
ペーシングが抑制されることで心停止が発生し、アダムストークス発作など生命を脅かす状態につながる可能性があります。
フュージョン波形は、自己脈とペースメーカーのスパイクが同時に発生することで生じます。この状態自体は重大な問題を引き起こすことは少ないものの、長期的には電池の消耗を早める原因となる可能性があります。
フュージョン波形の頻発は、ペースメーカーのバッテリー寿命を短縮させます。電池交換には手術が必要であり、患者に負担がかかります。
ペースメーカーのトラブルは患者の生命に重大な影響を与える可能性があるため、看護師がその仕組みや対応方法を把握しておくことが不可欠です。
ペースメーカーに関する知識を深め、適切に対処することで、患者の安全と生活の質を向上させることができます。医師や臨床工学技士と協力しながら、トラブルのないケアを目指しましょう。