水頭症は、脳脊髄液(以下、髄液)が過剰に蓄積し、脳室が拡大することで脳を圧迫し、さまざまな脳機能障害を引き起こす病態です。髄液は、脳や脊髄を外部から守るクッションの役割を担っていますが、その流れや吸収に障害が起こると水頭症を発症します。
この記事では、水頭症の原因や症状、治療であるシャント造設術、看護のポイントについて詳しく解説します。
髄液は脳内の「脳室」と呼ばれる空間を満たし、1日に約500mLが産生されています。脳室の内部にある脈絡叢という特殊な組織が髄液を作り出し、脳や脊髄を保護するクッションとして働きます。

髄液は以下の経路を循環します。
側脳室 → モンロー孔 → 第3脳室 → 中脳水道 → 第4脳室 → ルシュカ孔・マジャンディ孔 → くも膜下腔 → くも膜顆粒 → 静脈
この流れのどこかで障害が発生すると髄液が過剰に蓄積し、脳室が拡大して水頭症が生じます。
水頭症は主に以下の3つの要因で発症します。
1.髄液の通過障害
腫瘍や奇形、血腫などが髄液の流れを遮断し、脳室の上部に髄液が溜まることで発症します。
2.髄液の吸収障害
くも膜顆粒が正常に働かず、髄液が静脈に吸収されなくなることで発症します。くも膜下出血や髄膜炎が背景にあることが多いです。
3.髄液の過剰分泌
脈絡叢腫瘍などにより髄液が過剰に産生されることがあります。この場合、髄液の産生量が吸収量を上回り、脳室内に髄液が蓄積します。
水頭症はその発症メカニズムにより以下の2つに分類されます。
髄液の通路には問題がないものの、髄液の吸収や産生に異常があり、脳室全体が拡大します。交通性水頭症では以下の三大症状が特徴的です。
• 認知機能低下:物忘れや集中力の低下。
• 歩行障害:歩幅が狭くなり、足を引きずるような歩行。
• 尿失禁:排尿コントロールの困難。
急性の場合、頭蓋内圧亢進により頭痛や嘔吐、意識障害を引き起こすこともあります。
腫瘍や奇形などで髄液の通路が物理的に閉塞され、閉塞部の上部の脳室が拡大します。このタイプでは以下の症状が見られます。
• 頭痛:特に朝方に強い。
• 嘔吐:頭蓋内圧の上昇によるもの。
• クッシング現象:高血圧、徐脈、不整脈を伴う危険な状態。
水頭症の治療では、急性期に脳室ドレーンや脳槽ドレーンを用いて体外に髄液を排出します。しかし、長期間ドレーンを留置することはできないため、恒久的な対処法としてシャント造設術が行われます。

シャント造設術では、髄液の新たな通り道を作り、脳室内の髄液を他の部位に誘導します。以下の種類があります。
シャントの構造には、髄液排出量を調整する弁が付いており、全ての部品は皮膚下に埋め込まれるため外からは見えません。
• 原因:チューブの折れや捻じれ。
• 症状:頭痛、嘔吐、意識障害、痙攣。
• 対応:シャント造影で異常を確認し、必要に応じて交換術を行います。
• リスク:髄膜炎、腹膜炎、心内膜炎など。
• 症状:発熱、創部の発赤や腫脹。
• 対応:抗生剤投与、必要に応じてシャント抜去後再造設。
• 原因:急激な髄液排出。
• 症状:頭痛、吐き気、硬膜下血腫のリスク。
• 対応:安静管理と排液量の調整。
• 頭痛や嘔吐、意識レベルの変化の有無をチェック。
• 血液データや体温の確認、感染兆候を早期発見。
• 腹部症状(腹膜炎の兆候)や創部の観察。
• 術後は安静が求められるため、患者さんが落ち着いて過ごせる環境を整備。
• シャントがずれないよう体位変換や動作の際には配慮。

• シャントの位置や生活上の注意点を説明。
• シャント機能不全や感染の早期兆候について理解を深めてもらう。
水頭症は、髄液の流れや吸収の障害によって発症し、脳圧の上昇や脳機能の低下を引き起こす疾患です。交通性水頭症と非交通性水頭症の違いを理解し、適切な治療が必要です。
シャント造設術は水頭症治療の有効な手段ですが、術後には機能不全や感染症、低髄液圧症候群といった合併症に注意が必要です。
看護師としては、術後の観察や患者さんへの説明を徹底し、異常の早期発見と適切なケアを提供することが重要です。患者さんとご家族に寄り添い、安心して生活できるよう支えることが看護の役割です。