心臓再同期療法(CRT)は、心不全患者の症状を改善し、心機能を補助するための治療法です。この治療を受ける患者さんは、心臓の左右の収縮タイミングがずれ、効率的な血液循環ができなくなっているケースが多く見られます。
看護師としては、CRTの仕組みや患者さんに起こりうるリスクを理解し、適切な観察とケアを行うことが重要です。この記事では、CRTの概要と看護師が注意すべき観察ポイントを詳しく解説します。

心臓には、右心房・右心室、左心房・左心室の4つの部屋があり、血液を全身に送るポンプとして働いています。特に左心室は全身へ血液を送り出すために強力な収縮力を持っており、筋肉が発達しています。この収縮を効率的に行うために、刺激伝導系という電気信号の通り道が心臓内に存在します。
刺激伝導系の役割は、心臓全体をリズムよく収縮させることです。
主な構成は以下の通りです:
左右の心室は、右脚と左脚を通る電気信号によってタイミングよく収縮します。
しかし、心不全や拡張型心筋症などの疾患が進行すると、左脚の電気信号が遮断される左脚ブロックが生じ、収縮のタイミングが乱れてしまいます。この状態では、右心室と左心室が連動せず、心臓全体の収縮が非効率となり、さらに心不全が悪化する悪循環に陥ります。
心臓再同期療法は、心不全による収縮タイミングの乱れを補正し、心臓の機能を改善するための治療法です。
この治療では、ペースメーカーを植え込み、以下の3本のリード(電極)を心臓に配置します:
ペースメーカーは、右心室と左心室の両方に電気刺激を送り、収縮タイミングを整える役割を果たします。
<CRTの2つの種類>
• CRT-P:両心室のペーシング機能のみを持つ装置。
• CRT-D:ペーシング機能に加え、植え込み型除細動器(ICD)を搭載。致死的不整脈の予防を目的としています。
CRTを受けた患者さんのケアでは、以下の観察と対応が重要です。
CRTは心不全の進行を抑えるための治療ですが、心不全が完全に治るわけではありません。以下の症状が見られた場合、心不全の悪化が疑われます:
• 血圧の低下
• 頻脈(代償的な心拍数の増加)
• 呼吸困難感(体位によって悪化することも)
• 尿量の減少
• 顔面や下肢の浮腫
• 冷や汗や顔面蒼白、脈拍虚脱
これらの症状が見られた場合、CRT装置の作動不全や心不全の進行が考えられるため、早急に医師へ報告し、必要な対処を行うことが求められます。
CRT装置の設定は、患者さん個別の心臓状態に応じて調整されています。しかし、装置の不具合や電極のずれが原因で作動不全が起きる可能性があります。作動不全が発生すると、再び心臓の収縮タイミングが乱れ、心拍出量が低下します。
以下の方法で装置の状態を確認しましょう:
• セントラルモニターやCRTモニターの波形をチェック
• バイタルサインの変化(特に血圧や心拍数)を観察
CRT装置は皮下に埋め込まれるため、手術部位の感染リスクがあります。以下の兆候を見逃さないようにしましょう:
• 手術部位の発赤、腫れ、痛み、熱感
• 全身の発熱や倦怠感
感染が進行すると、CRT装置の除去や再手術が必要になることもあります。感染兆候を早期に発見し、適切な治療につなげることが重要です。
患者さん自身が気づく小さな変化は、心不全や装置の不具合を早期に発見する手がかりになります。以下の訴えには注意を払いましょう:
• 「息切れがひどくなった」
• 「最近疲れやすい」
• 「足や顔がむくむ」
患者さんとの対話を通じて異常を早期に察知し、医師と連携して適切な対応を行います。

過度な運動やストレスは心不全を悪化させる可能性があります。塩分制限や体重管理など、生活習慣の改善を指導し、患者さんの自己管理をサポートします。
CRT装置の状態は定期的なチェックが必要です。患者さんが通院を怠らないよう、フォローアップの重要性を伝えましょう。
CRTを埋め込むことへの不安や心不全の症状に対するストレスを軽減するため、患者さんの精神的なケアにも配慮します。
• CRTは心不全患者の心臓収縮タイミングを整え、症状を改善する治療法です。
• 看護師は、心不全の悪化兆候やCRT作動不全に注意し、早期対応を心がけることが求められます。
• 感染リスクや患者さんの訴えに注意を払い、日々の観察を徹底しましょう。
生活指導やフォローアップを通じて、患者さんが安心して治療を続けられる環境を提供することが看護師の役割です。
患者さんの生活の質(QOL)向上に寄与するため、CRTについての知識を深め、適切なケアを実践していきましょう。