敗血症など重症例で起きる原因不明の血圧低下 ステロイド投与の理由とその看護

血圧低下とステロイド治療:重症患者における副腎不全の理解

医療現場において、特に救急外来やICUでは、血圧低下に対応する場面が多々あります。今回は「血圧低下に対するステロイド治療」と「重症患者における副腎不全」をテーマに、これらの関連性と注意点について解説します。


血圧低下の要因と基本構造

血圧は以下の3つの要素で構成されます:

  1. 前負荷:血液が心臓に戻る量。輸液を投与することで調整可能。
  2. 心拍出量:心臓が全身に送り出す血液の量。強心薬の使用で調整。
  3. 後負荷:血液を送り出す際の心臓への負担。血管収縮薬(ノルアドレナリンなど)で調整可能。

これらの要素を考慮しながら治療を進めますが、時には輸液や昇圧剤に反応しない原因不明の血圧低下に遭遇することがあります。このような場合、医師が「ステロイド治療」を提案することがあります。


ステロイドとは何か?

ステロイドは、体内で副腎皮質から分泌される糖質コルチコイド(コルチゾール)のことを指します。このホルモンは以下のような重要な作用を担っています:

  • 糖新生の促進:エネルギー供給の維持。
  • 抗炎症作用:免疫反応の調整。
  • 血管透過性の抑制:体液の漏出を防ぎ、血圧維持を助ける。
  • 電解質バランスの維持:ナトリウムの再吸収やカリウム排泄の促進。

通常、1日に約10~20mg分泌されますが、重症患者では約300mgまで増加することがあります。この増加は、身体がストレスに対抗するための生理的な反応です。


重症患者における相対的副腎不全

重症患者では、急激なストレスによりコルチゾールの分泌が一時的に爆発的に増加します。しかし、副腎が「コルチゾールが十分ある」と誤認して分泌を停止してしまうことがあります。この結果、コルチゾールが不足し、以下の問題が生じることがあります:

  • 昇圧剤の効果低下:カテコラミン(ノルアドレナリンなど)が効果を発揮できず、血圧が上がりにくい。
  • 生体機能の低下:全身の代謝機能や免疫反応が滞る。

これを「相対的副腎不全」と呼びます。


ステロイド治療の適応と注意点

相対的副腎不全が疑われる場合、または以下の条件を満たす場合に、ステロイドの投与が行われます:

  • 原因不明の重度の血圧低下。
  • ステロイドを長期間使用している患者。
  • 重症敗血症患者。

注意点: ステロイド治療には副作用が伴うことがあります。特に高血糖、不整脈、不眠などが挙げられます。そのため、患者の全身状態を観察し、副作用の管理を行うことが重要です。


まとめ

  • 血圧は「前負荷」「心拍出量」「後負荷」で構成される。
  • 昇圧剤に反応しない原因不明の血圧低下では相対的副腎不全が疑われる。
  • ステロイド治療は血圧改善が期待できる一方、副作用への注意が必要。

医療現場で働く私たちは、患者さんの全身状態をしっかり観察し、副腎不全の可能性を意識して対応する必要があります。今回の記事が、日々の臨床における気づきの一助となれば幸いです。