睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に10秒以上の無呼吸や換気量の低下が繰り返し起こる疾患です。男女比は9:1で、潜在患者さんは200万人にも及びます。この状態が続くと、日中の過度な眠気、集中力の低下、倦怠感など生活の質(QOL)が著しく低下します。
また、心不全患者さんにこの症状が合併すると、心臓に過剰な負担をかけることになり、さらなる病態の悪化を招く可能性があります。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の原因や心不全との関係、治療、看護のポイントについて詳しく解説します。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、肥満や扁桃肥大、顎の形状などが原因で上気道が閉塞し、空気の流れが遮断されることによって生じます。睡眠時無呼吸症候群の中で最も多いタイプです。
このタイプの無呼吸は、心臓に負担をかけ、心不全の悪化につながります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群は、脳の呼吸中枢が正常に機能せず、呼吸筋への指令が途絶えることで起こります。特に心不全患者さんでは、血液循環の異常によって中枢性無呼吸が誘発されることがあります。
その代表例がチェーンストークス呼吸です。この呼吸異常は無呼吸、小さい呼吸、大きい呼吸を繰り返す状態で、心不全患者さんの約40%にみられるとされています。

睡眠時無呼吸症候群の主な症状は以下の通りです:
• いびき
• 日中の過度な眠気
• 起床時の頭痛
• 咽頭痛
• 睡眠中の窒息感
日中の眠気や頭痛は、無呼吸による換気不全で体内が低酸素状態になり、二酸化炭素が蓄積することで引き起こされます。
睡眠時無呼吸症候群は以下の条件のうち、1及び2、または1及び3を満たすと診断されます:

睡眠時無呼吸症候群は心不全を悪化させる要因となる可能性があります。以下のメカニズムが挙げられます:
無呼吸によって体が低酸素状態になることで、また、夜中に何度も覚醒することで交感神経が刺激され、血圧が上昇します。これにより心臓に過剰な負担がかかり、心不全の悪化を招きます。
無呼吸時に胸腔内圧が低下すると、静脈還流が増加し、心臓に負担をかけます。
心不全では全身への血液循環が悪くなり、
| (A) | 頻呼吸になって酸素を補おうとします。 |
| (B) | その後、酸素濃度が上昇、二酸化炭素が排出され、延髄が呼吸を抑制します。 |
| (C) | 無呼吸状態になって、今度は二酸化炭素がたまっていきますが、血液循環が悪いため、延髄が呼吸を指令するのが遅れます。 |
| (D) | 二酸化炭素濃度が通常よりも上昇して、 ようやく延髄が二酸化炭素を吐き出させようと頻呼吸になります。 |
この(A)→(B)→(C)→(D)のサイクルを繰り返します。外部から観察すると、無呼吸→小さい呼吸→大きい呼吸を繰り返しているように見えます。これが前述したチェーンストークス呼吸です。
この状態は心臓の負担をさらに増大させます。

睡眠時無呼吸症候群の重症度は、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数によって以下のように分類されます:
• 5回未満:正常範囲
• 5~15回未満:軽症
• 15~30回未満:中等症
• 30回以上:重症

夜間のいびきや呼吸停止の有無を確認します。特にSPO2モニターの波形変化や酸素飽和度の低下が見られる場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性を疑います。
呼吸困難感、浮腫、血圧低下、倦怠感など、心不全悪化の兆候に注意します。
CPAPの装着方法や使用時の注意点を説明し、患者が治療に慣れるようサポートします。
食事指導や適度な運動の奨励を通じて、肥満解消や体重管理を支援します。
専門医や栄養士と連携し、診断や治療計画の調整を行います。
• 睡眠時無呼吸症候群は心不全を悪化させるリスクを伴う疾患であり、早期発見と治療が重要です。
• 閉塞性と中枢性の2種類があり、それぞれ異なる病態と治療法を持っています。
• CPAP療法や生活習慣改善、適切な看護が症状の改善につながります。
• 看護師は患者さんの呼吸パターンや心不全症状を的確に観察し、治療を支援する役割を果たします。
心不全の患者さんのQOL向上と病態悪化の防止に、睡眠時無呼吸症候群の適切な管理が不可欠です。
日々の観察と的確な対応が、患者さんの安心と快適な生活を支える基盤となります。