春や夏のイベントが増える時期になると、飲酒の機会も多くなります。そのような中、医療現場でしばしば目にするのが急性アルコール中毒(以下、アルコール中毒)です。特に大学生や新社会人が多く、場合によっては命を落とすケースも少なくありません。
この記事では、アルコール中毒の症状、治療、そして看護師が行うべき対応について詳しく解説します。

アルコール中毒とは、大量のアルコールを短時間で摂取したことによる中毒症状です。「酩酊」とも呼ばれる状態が極度に進行した場合を指します。
血中アルコール濃度と症状
| 50~100mg/dL(ほろ酔い) | 気分の高揚、饒舌、軽い開放感が得られる。 |
| 200mg/dL以上(酩酊状態) | バランス感覚の喪失、判断力低下、言動の制御が困難になる。 |
| 300mg/dL以上(中毒症状) | 嘔吐、自制心の喪失、血圧低下、意識混濁が現れる。 |
| 400mg/dL以上(重篤な状態) | 意識障害、呼吸抑制、循環抑制が起こり、生命に危険が及ぶ。 |
| 問診 | 付き添いの方や本人から飲酒量や経過について確認します。 |
| 血液検査 | 血中アルコール濃度を測定します。 |
| 追加検査 | 意識が改善しない場合や循環動態に異常がある場合は、頭部CTなどで他の要因(外傷や脳出血)を除外します。 |
小児がマウスウォッシュを誤飲した場合でもアルコール中毒を引き起こすことがあります。意識障害で搬送されてきた子供が画像所見などで原因が分からず、これまでの経過を聞いたり、血液検査の結果から高濃度のアルコールが検出されたことから急性アルコール中毒が発覚したという症例報告もあります。
急性アルコール中毒に特効薬はありません。治療の基本は輸液による体内環境の安定化です。アルコール代謝そのものを促進する効果はありませんが、以下の目的で輸液が行われます:
• 脱水の補正:アルコールの利尿作用による脱水を防ぐ。
• 電解質の調整:低カリウム血症など、電解質異常を改善する。
• 体温調整:体温調節機能が鈍るため、低体温や発熱への対応を行う。
• 酩酊が重度の場合、呼吸抑制や血圧低下が進行する可能性があります。
• 酸素投与や循環動態モニタリングを行い、必要に応じて気道確保や挿管を実施します。
嘔吐した場合、誤嚥や窒息を防ぐため、患者さんを側臥位に寝かせます。また、口腔内の清掃を行い、吐しゃ物の誤嚥による肺炎を予防します。
急性アルコール中毒の患者さんは意識が混濁していることが多いため、以下の対応が必要です:
• 転倒予防:ベッド柵を上げ、周囲の危険物を取り除きます。
• 暴れるリスクへの配慮:突然の興奮状態に備え、落ち着いた環境を整えます。
• 呼吸抑制や血圧低下が進行していないか、モニタリングを継続します。
• 呼吸数、血圧、脈拍などを定期的に測定し、異常があれば即座に対応します。
• 低カリウム血症に注意します。これは脱水と利尿によるカリウム喪失が原因で、重症化すると致死性不整脈を引き起こします。
• 血液検査結果に基づき、電解質補正を行います。
• 患者さんを側臥位にし、嘔吐物の誤嚥を防ぎます。
• 必要に応じて吸引を行い、気道確保を優先します。
• アルコール中毒患者さんは体温調節機能が低下しています。低体温を防ぐため、室温や毛布を利用して適切な体温を保つよう配慮します。

急性アルコール中毒は、一見単純な酩酊状態に見えても、重症化すると命に関わる危険な状態です。特効薬がないため、患者さんの生命を守るためには、細やかな観察と適切なケアが欠かせません。
看護師が行うべき主な対応
• 輸液療法を適切に管理し、電解質異常を防ぐ。
• 呼吸と循環をモニタリングし、早期に異常を発見する。
• 嘔吐時の誤嚥予防や体位調整を徹底する。
• 患者さんを見守り、安全な環境を確保する。
急性アルコール中毒は「ただの酔っぱらい」として軽視できない疾患です。適切な対応を行うことで、患者さんの命を救うだけでなく、再発防止に向けた支援も行えるよう努めましょう。