急性膵炎の原因と治療、看護について徹底解説

 急性膵炎とは、膵臓が分泌する膵液に含まれる消化酵素が何らかの原因で膵臓内部で活性化し、自己消化を引き起こすことで発症する疾患です。この病態は膵臓に強い炎症を引き起こし、場合によっては全身に影響を及ぼします。

 膵液にはアミラーゼ、膵リパーゼ、トリプシン、キモトリプシンといった消化酵素が含まれていますが、特にタンパク質分解酵素であるトリプシンやキモトリプシンが急性膵炎に関与しています。

膵臓イラスト

 膵炎の多くは適切な治療によって回復しますが、重症化すると膵臓の壊死や全身性炎症反応症候群(SIRS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MODS)などを引き起こし、命に関わる事態に至ることがあります。

 重症膵炎の死亡率は約10%とされ、早期診断と治療が極めて重要です。


急性膵炎の原因

急性膵炎は主に次の2つの原因によって引き起こされます。

1.アルコールの過剰摂取

 急性膵炎の約40%を占めており、特に男性に多くみられます。過剰なアルコール摂取が膵炎を引き起こすメカニズムは完全には解明されていませんが、以下の要因が考えられています。

 • オッディ括約筋のけいれん:総胆管や膵管の出口を塞ぐことで膵液の流出を妨げます。
 • 膵液の流出障害:膵液が膵臓内に停滞し、消化酵素が活性化されることで炎症が起こります。

 ※オッディ括約筋は総胆管・膵管から十二指腸への出口に存在し、十二指腸内の消化液を逆流させない働きをしています。


2.胆石性膵炎

 急性膵炎の約20%を占めており、女性に多いとされます。胆石が総胆管や膵管の合流部を塞ぎ、膵液の流れを妨げることで膵臓内部で消化酵素が活性化します。


3.その他の急性膵炎

その他の原因には以下のものがあります。
 • 高脂血症
 • 高カルシウム血症
 • 薬剤性膵炎(特定の薬剤の使用によるもの)
 • 外傷性膵炎(膵臓への直接的な外傷によるもの)
 • 内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)による医原性膵炎


急性膵炎の症状、診断基準

主な症状

腹痛の画像
  1. 持続する上腹部痛や背部痛
     膵炎の特徴的な症状で、仰向けになると膵臓が引き伸ばされ、痛みが増強します。
  2. 嘔吐や腸蠕動運動の低下
     膵臓の炎症やむくみによって腸管の動きが妨げられます。
  3. 発熱
     炎症反応に伴って体温が上昇します。
  4. 黄疸
     胆石性膵炎では、胆管閉塞によって胆汁に含まれるビリルビンによって黄疸が現れることがあります。

診断基準

 急性膵炎の診断には以下の3つの項目のうち2つ以上を満たすことが必要です。

  1. 上腹部に急性の腹痛と圧痛がある。
  2. 血中または尿中の膵酵素(特にリパーゼ)の上昇が認められる。
  3. 画像診断(超音波、CT、MRI)で急性膵炎の特徴的な所見が確認される。

 診断後は、発症から72時間以内が最も重症化しやすいため、48時間以内に繰り返し重症度を評価することが推奨されています。


重症度判定基準

 急性膵炎重症度判定基準があります。複雑なので看護師が細かく覚えておく必要はありませんが、医師のカルテなどを読み解く際にそういった基準があることを知っておくと病態理解に役立ちます。

 患者さんは重症化してきているのか、改善傾向にあるのか、重症例では死亡率も高くなるので、スコアを読み解くことで患者さんが今どのような状況にあるのかを知る手掛かりになるので、頭の片隅に置いておくとよいでしょう。

重症度判定基準 重症度スコア
予後因子①ショック、呼吸困難、神経症状、重症感染症、出血傾向 、Ht≦30%等各2点
予後因子②Ca≦7.5mg/dL、FBS≧200mg/dL、
PaO2≦60mmHg等
各1点
予後因子③SIRS診断基準における陽性項目数≧3
年齢≧70歳
2点
1点

(厚生労働省ホームページより抜粋)


急性膵炎の治療

基本的な治療

  1. 絶食
     膵臓を休ませるため、食事を控える必要があります。
  2. 輸液
     炎症による血管透過性亢進を抑え、血圧を維持するために行います。
      o 脱水がない場合:130~150mL/h
      o 脱水やショックがある場合:150~600mL/h
      o 目標:平均血圧65mmHg以上、尿量0.5mL/kg/h以上
  3. 疼痛コントロール
     腹痛の軽減を目的として、非麻薬性鎮痛薬(ブプレノルフィン、ペンタゾシン)やNSAIDs(ロキソニン、ボルタレン)が使用されます。

その他の治療

 • 抗生剤投与:感染予防のために行われます。
 • タンパク質分解酵素阻害薬:膵酵素の活性化を抑制します。
 • 経腸栄養の早期開始:腸管機能を維持し、全身状態の改善を目指します。
 • 持続的血液ろ過透析法(CHDF):重症例では、全身の炎症を抑えるために実施されます。


急性膵炎の看護

看護師が注意すべきポイント

  1. 重症度の把握
     急性膵炎の重症度スコアを参考に、病状が改善しているのか悪化しているのかを適切に判断します。
  2. バイタルサインの観察
     血圧、心拍数、呼吸状態、尿量を定期的にモニタリングし、ショックや多臓器不全の兆候を見逃さないようにします。
  3. 疼痛の緩和
     疼痛スケール(NRSやCPOT)を使用して痛みを評価し、適切な介入を行います。
  4. 患者さんの安静に
     仰向けで痛みが増す患者さんには、側臥位やファウラー位を勧めるなど、快適な体位を提供します。
  5. 感染予防
     膵炎に伴う感染リスクに注意し、創部の観察やドレーン管理を徹底します。

まとめ

 急性膵炎は、適切な治療を受ければ回復可能な疾患ですが、重症化すると全身の臓器に影響を及ぼし、生命の危険を伴うこともあります。そのため、早期診断と治療が不可欠です。

血中数値表

 看護師は、患者さんの重症度を正確に把握し、適切な治療が提供されているかを確認することが重要です。また、患者さんの痛みや不安に寄り添い、治療をサポートする看護ケアを通じて、早期の回復を目指しましょう。