地震が起きたらリアルタイムで対応したいクラッシュ症候群 突然死の原因とは

救助後に突然の心停止—クラッシュシンドロームの脅威

災害や事故現場で、がれきや重たい物体の下敷きになった人が救助後に突然心停止に陥ることがあります。この現象の背景には「クラッシュシンドローム(Crush Syndrome)」という危険な状態が潜んでいます。本記事では、このクラッシュシンドロームについて詳しく解説し、その対応策について説明します。


クラッシュシンドロームとは?

クラッシュシンドロームは、1995年の阪神淡路大震災がきっかけで広く知られるようになりました。この震災では、がれきの下敷きになった人々が救出後、数時間以内に急激に全身状態が悪化し、命を落とすケースが報告されています。

クラッシュシンドロームとは、重たい物体に体が長時間圧迫された結果、筋肉組織が壊死し、それに伴って生じる一連の生理学的な変化を指します。

圧迫された部分では、血液の流れが遮断されることで筋細胞が酸素や栄養を供給されなくなり、最終的に壊死が起こります。壊死した筋細胞からは、体内に有害な物質—例えばカリウムやミオグロビン—が放出されます。これらが血液中に蓄積すると、心臓や腎臓といった重要な臓器に深刻なダメージを与え、最悪の場合には心停止に至ります。

クラッシュシンドロームのメカニズム

クラッシュシンドロームのメカニズム

以下に、クラッシュシンドロームが発生する主なメカニズムを簡潔にまとめます:

  1. 筋細胞の壊死:
    • 長時間の圧迫により筋肉や血管が圧迫され、細胞が酸素不足で壊死します。
  2. 有害物質の放出:
    • 壊死した筋細胞から、カリウムやミオグロビンが血流中に大量放出されます。
  3. 血流再開による全身への影響:
    • 救助後に圧迫が解除されると、蓄積された有害物質が全身へ広がり、以下の問題を引き起こします:
      • 高カリウム血症: 致死性不整脈を誘発する可能性があります。
      • 急性腎障害: ミオグロビンが尿細管を傷害し、腎臓機能を低下させます。

救助後の症状と特徴

クラッシュシンドロームが疑われる場合、以下の特徴的な症状やエピソードが見られることがあります:

  • 救出までの時間が長い:
    • 一般的に2時間以上の圧迫がリスク要因とされますが、1時間以上でも注意が必要です。
  • 圧迫部位の腫脹と感覚障害:
    • 圧迫された部分が腫れ、感覚が失われることがあります。
  • ミオグロビン尿:
    • 尿が赤茶色になる(いわゆる「コーラ色の尿」)ことがあります。

クラッシュシンドロームへの対応と治療

1. 現場での対応

事故や災害現場でクラッシュシンドロームが疑われる場合、以下の対応を心がけましょう:

  • 安全確認と声かけ:
    • 自分の安全を確認した上で、傷病者に声をかけて安心させます。
  • 体温管理:
    • 毛布などで体を保温し、循環動態の安定を図ります。
  • 救急隊への情報提供:
    • 挟まれていた時間と部位を正確に伝えます。

2. 医療機関での対応

救助後は、迅速な医療対応が生命を救う鍵となります。

  • 致死性不整脈への対策:
    • 高カリウム血症による徐脈や不整脈が起こる可能性があるため、心肺蘇生の準備を整えます。
  • 血液検査と輸液:
    • 血液ガスやカリウム濃度を測定し、必要に応じてカリウムを含まない輸液(生理食塩水など)を大量に投与します。
    • 一般的には、1時間あたり200–300mlの尿量を目標に、1時間あたり1L程度の輸液が推奨されます。
  • 重炭酸ナトリウムの使用:
    • ミオグロビンの毒性を軽減するために投与される場合があります。
  • 腎障害への対応:
    • 尿量や尿性状を厳密にモニタリングし、必要に応じて緊急透析を行います。

クラッシュシンドロームを防ぐために

クラッシュシンドロームを防ぐために

災害や事故現場では、挟まれた時間や圧迫部位の状態を正確に把握し、医療機関へ速やかに情報を共有することが重要です。また、救助後も油断せず、適切なアセスメントと処置を行うことで、クラッシュシンドロームによる生命の危機を回避できます。

クラッシュシンドロームは、その発生メカニズムが理解されていれば予防可能な側面もあります。救急医療に関わる全ての人がそのリスクを認識し、適切に対応することが、患者の生存率を大きく高めることにつながります。


今回の記事が、災害時や事故対応の現場で活用できる知識となれば幸いです。クラッシュシンドロームという危険な状態を正しく理解し、命を守る一助となることを願っています。