困った状況でどうにもできなくなった時、心の中で誰に助けを求めますか?「お母さん助けて」と思うのでしょうか?それとも「神様助けて」や「ご先祖様助けて」と願うのでしょうか?普段はあまり意識しないかもしれませんが、苦しい時、私たちは心の中の誰かに助けを求めます。これは、幼少期の母親との関係に起因していると言われています。辛い時、愛情深い母親は「大丈夫だよ」と優しく励まし、私たちを慰めてくれました。その母親の温もりは、大人になっても心に残り続けます。

イギリスの精神科医ウィニコットは、この「心の中に存在する母親」を「母親の内在化」と呼びました。子どもは、守ってくれる母親の愛情を心に深く取り込み、それが成長してからも支えとなるのです。そのおかげで、実際に母親がそばにいなくても、自立して生きていけます。精神分析ではこの「心の中のお母さん」を「心の安全基地」と呼んでいます。宗教的にはこれを神様やご先祖様と呼ぶこともありますが、どちらも私たちに安心を与えてくれる存在です。
経済的に苦労がなく、生活が順調な時、私たちは心の中のお母さんに頼らなくなるかもしれません。しかし、大切なものを失ったり、挫折を経験した時には再び心の中のお母さんを頼り、「大丈夫だよ」と励まされる感覚が蘇るのです。これにより、私たちは慰めを得て、安心して前を向くことができます。

したがって、心の中にお母さんがいることは非常に大切です。苦しい時に「お母さん助けて」や「神様助けて」と叫ぶことは、決して弱さの表れではなく、むしろ困難に立ち向かう強さを持っている証拠です。しかし、子どもの頃に母親から十分な愛情を受けられなかった場合、心の中に優しいお母さんの存在がいないことがあります。そうなると、常に安心感を持てず、孤独を感じやすくなります。辛い状況に直面しても、一人で乗り越えるのが難しくなり、生きづらさを感じるようになるのです。

ここでは、母親の愛情を十分に受けられなかったことで「心の中に優しいお母さんがいない人」が感じる5つの生きづらさを紹介します。
母親の最大の役割は、子どもに安心感を与えることです。心の中にお母さんがいないと、不安が常につきまとい、新しいことに挑戦する時も「どうせうまくいかない」と自分を肯定できません。何をするにも自信がなく、決断も迷いがちです。

小さい子どもは善悪の区別がつきませんが、母親に褒められたり叱られたりする経験を通じて善悪を学びます。大人になっても、その基準は心の中のお母さんが担います。誰も見ていなくても悪いことをしないのは、その内面に母親の教えが残っているからです。

心の中にお母さんがいれば、実際の母親がいなくても一人で過ごせるようになります。しかし、それが育まれていない場合、大人になっても孤独に耐えられず、常に誰かとのつながりを求めるようになります。

これをきずな依存と呼ぶことがあります。

常に不安があるため、大きな困難に直面した時に「なんとかなる」と思えず、パニックに陥ったり逃げ出したりします。挫折に対して弱く、立ち直るのに時間がかかります。

孤独を埋めるために、他者との絆が作れない場合、アルコールや過食症、買い物依存など、何かに依存することで心の隙間を埋めようとします。

以上、心の中に優しいお母さんがいないことで感じる生きづらさについて紹介しました。心の中のお母さんは、必ずしも生みの母親に限りません。育ててくれた人や、支えてくれた大切な人でも、その役割を果たします。たとえ子どもの頃に愛情を感じられなくても、大人になってから心の中に優しいお母さんが訪れることがあります。挫折を乗り越え、人の優しさに触れることで、心の中に安心できる場所を見つけられるのです。