腹部大動脈瘤(AAA、Abdominal Aortic Aneurysm)は、腹部に存在する大動脈が全周性または局所的に拡張、突出する疾患です。大動脈の直径が通常の20mmから30mm以上に拡大すると腹部大動脈瘤と診断され、特に横隔膜より下の部分を指します。
この疾患の最大のリスクは動脈瘤の破裂です。一度破裂すると大量出血を引き起こし、生命に直結する危険な状態に陥ります。そのため、特に瘤の直径が50mm以上になった場合や急激な拡大が見られる場合には、手術が検討されます。本記事では腹部大動脈瘤の特徴、治療法、術後看護の重要ポイントを解説します。

多くの腹部大動脈瘤は無症状のまま進行し、他の検査中に偶然発見されることが少なくありません。しかし、未破裂の状態で治療を行えば予後は良好である一方、破裂後の治療は難易度が高く、予後が大きく悪化します。
腹部大動脈瘤の治療方法として最も一般的なのが人工血管置換術です。この手術では拡張した動脈瘤部分を切除し、人工血管に置き換えます。
術後は合併症のリスクが伴うため、看護師は全身状態を注意深く観察し、異常を早期に発見することが求められます。
術後も高血圧を放置すると、以下のようなリスクが高まります。
手術中、血液が固まりにくい状態を作るために行われたヘパリン化の影響や、麻酔による体温低下などで、術後も出血のリスクが残ります。そのため、術後の血圧は収縮期血圧を120mmHg以下に保つことが一般的です。
痛みによる交感神経の活性化は血圧上昇を招き、再出血のリスクを高めます。また、痛みで動きが制限されると、呼吸器合併症(肺炎、無気肺)も発生しやすくなります。
看護師は患者の訴えに応じて、早めに鎮痛薬を使用し、安楽な状態を保つよう努めます。
臓器への血流維持のため、平均血圧(MAP:Mean Arterial Pressure)が65mmHg以上であることが推奨されます。このため、適切な血圧目標を主治医と共有しながら管理を行います。
術後、循環血液量の減少や血圧低下が起こると、臓器虚血のリスクが高まります。特に注意すべき臓器障害として以下が挙げられます。
術後の循環動態は不安定になりやすく、特に緊急手術では大量出血や手術侵襲の影響で患者の全身状態が悪化します。

腹部大動脈瘤の治療後、患者の予後を左右するのは、術後管理が適切に行われるかどうかです。特に以下のポイントを看護師が意識することで、患者の安全を確保できます。
腹部大動脈瘤は未破裂であれば治療予後が良好ですが、破裂後は極めて危険な状態に陥ります。そのため、術後ケアの質が患者の回復に大きな影響を与えることを忘れず、適切な看護を提供していきましょう。