文部科学省の発表によれば、いじめ撲滅キャンペーンにもかかわらず、学校や職場でのいじめ問題は年々増加しています。いじめとは、相手を傷つける目的で意地悪、暴力、無視、財物の強奪や侮辱行為などを長期間繰り返すことです。最近では、職場での上下関係において「ハラスメント」という言葉もよく使われ、いじめと同様の意味を持つことが多いです。これらの行為は犯罪としても認識され、面白半分や欲求不満、嫉妬などがいじめを行う側の動機となっています。
一方、いじめの被害者は、多くの場合、力が弱い、周囲とは異なる点が目立つなどの理由で標的にされます。いじめが突然始まるため、被害者は何が起きているのか理解できず、まるで戦争に巻き込まれたかのような混乱状態に陥ることがあります。そして、いじめが進行していることに気づくと、恐怖や不安が強くなり、多くの被害者は恥ずかしいという感情から自分を責め、周囲に助けを求めることができなくなります。
いじめやハラスメントによる心の傷は深く、日々の生活がまるで拷問を受けているかのように感じられることもあります。精神的に追い詰められた結果、逃げられないという思いに囚われ、やがて絶望感を抱き、性格までもがネガティブに変わってしまうことがあります。このような複雑なトラウマは「複雑性PTSD」と呼ばれ、2020年にWHOによって正式な病名として認められました。
そもそもPTSDは、災害や事故などの命の危険を伴うトラウマに対して用いられる言葉ですが、学校や職場でのいじめが原因でPTSDと診断されるのは、大げさではないかという声もあります。
しかし、加害者が軽い気持ちで行った行為でも、被害者は命の危険や人生の終わりを感じるほどの深刻な体験をします。
被害者でなければ理解できない世界がそこにあるのです。
それでは、いじめやハラスメントによって引き起こされる複雑性PTSDには、どのような影響があるのでしょうか。
今回は、いじめやハラスメントによる4つの後遺症について説明します。

過去のいじめについて話題にすると、「いつまでも引きずっているの?」と言われることがあります。
しかし、いじめを経験した人は、何年も経った後でも、突然その時の感情や出来事がフラッシュバックとして蘇ることがあります。これにより、心から人生を楽しむことが難しくなることがあります。
いじめに関連する場所や人、出来事を無意識に避ける傾向があります。例えば、いじめを受けた学校や職場に戻らない、話題が上がれば避けるなどの行動です。
加害者に似た人を見かけるだけでも関わりたくないと感じ、安心できない場所には近づかなくなります。
いじめが原因で、何をやってもうまくいかないと物事を悲観的に考えがちになり、生きる希望や目標を見失うことがあります。何かを乗り越えたいと思っても、その力が湧いてきません。感情が表に出やすく、情緒不安定な状態が続くこともあります。

他人に対する信頼を失い、人と関わることを避けるようになります。安心できると感じる相手としか関わりを持たず、孤独を選び、引きこもりがちになることもあります。
複雑性PTSDの治療には、薬物療法だけでなく、周囲からの優しさや愛情が重要です。いじめ加害者からの謝罪が役立つ場合もありますが、それだけでは十分ではなく、長期的に安心できる環境が必要です。特に家族や友人、カウンセラーなど、信頼できる人たちのサポートが、被害者の回復にとって大きな助けとなります。