その胸痛発作の原因は?救急外来での立ち回りと看護師にできる対応!

 救急外来では「胸痛」を訴える患者さんが多く来院します。胸痛の原因は、心臓や血管に関連する疾患だけでなく、呼吸器系や消化器系、さらには整形外科的なものまで多岐にわたります。そのため、患者さんの状態を迅速にアセスメントし、命に関わる疾患を見逃さないことが極めて重要です。


1.胸痛の原因となる主な疾患

 胸痛を引き起こす代表的な疾患には以下のようなものがあります。

①心疾患
(循環器系)
②大動脈疾患
(血管系)
③呼吸器系疾患④消化器系疾患⑤整形外科・
神経疾患
⑥精神的要因
• 狭心症
(労作性・安静時)
• 急性大動脈解離• 気胸
(特に緊張性気胸)
• 食道破裂• 肋骨骨折• パニック障害
• 急性心筋梗塞• 肺塞栓症• 肺炎• 逆流性食道炎• 脊椎症• 心因性胸痛
• 心外膜炎• 高血圧クリーゼ• 肺がん• 胃・十二指腸潰瘍• 帯状疱疹• 過換気症候群
• 大動脈弁狭窄症• 胸膜炎• 胆石症
• 肥大型心筋症• 肺高血圧症• 胆嚢炎
• 膵炎

 緊急性が高いものから、そうでないものまで多岐にわたります。そのため、患者さん一人一人に対して何が原因で胸痛が起きているのか、見極めていく必要があります。

 そんな胸痛が生じる疾患の中でも、特に見逃してはいけない疾患について、以下では記述していきます。

 これらの疾患の中でも、特に「命に関わる疾患」を見逃さないことが重要です。救急医療では、「4 Killer Chest Pain(4つの致命的な胸痛)」と呼ばれる疾患を最優先に鑑別し、迅速に対応する必要があります。


見逃してはいけない「4 Killer Chest Pain」

 以下の4つの疾患は、短時間で命を奪う危険性があるため、すぐに治療を開始する必要があります。これらの疾患は迅速な診断と治療が不可欠であり、看護師の観察と報告が患者の救命に直結します。

疾患名主な症状検査・診断初期対応
急性冠症候群(心筋梗塞・狭心症)圧迫感のある胸痛、放散痛、冷汗、嘔気心電図(ST上昇)、心エコー、トロポニン検査MONA、PCI(カテーテル治療)
急性大動脈解離突然の激しい胸痛・背部痛、血圧左右差胸部造影CT、心エコー降圧療法(β遮断薬)、手術
肺塞栓症突然の呼吸困難、頻呼吸、胸痛、チアノーゼDダイマー、造影CT、心電図(S1Q3T3)酸素投与、抗凝固療法、血栓溶解療法
緊張性気胸突然の胸痛・呼吸困難、気管偏位、頸静脈怒張胸部X線、エコー緊急脱気(胸腔穿刺)、胸腔ドレナージ

3.救急外来での初期対応の流れ

救急搬送で胸痛の患者さんが到着した場合、以下のような流れで診察・治療が進められます。

①一次評価(ABCアプローチ)

  1. A(Airway:気道) → 気道が確保されているか?
  2. B(Breathing:呼吸) → 呼吸状態は安定しているか?酸素飽和度の確認
  3. C(Circulation:循環) → 血圧・脈拍・末梢冷感などショック徴候の有無
  4. 意識レベルの評価(JCS、GCS)
  5. ショックの5P(冷汗・蒼白・脈拍消失・呼吸不全・虚脱) の有無

②バイタルサイン測定と初期対応

 • 酸素投与(必要に応じて)
 • 心電図モニター装着
 • 点滴ルート確保
 • 血液検査(トロポニン・Dダイマー・血液ガス分析など)
 • 12誘導心電図
 • ポータブルX線撮影
 • 緊急CT(必要なら造影CT)


4.看護師が行うべき対応

①急性冠症候群(心筋梗塞・狭心症)の対応

 ※心臓の血管である冠動脈に狭窄や閉塞が起こることで酸素供給が行えず、心臓の筋肉が壊死してしまう疾患です。

• 迅速な MONA(モルヒネ・酸素・ニトログリセリン・アスピリン) の準備
 ※状態によってはモルヒネを使わない方がいい症例や、過剰な酸素の投与が心筋にダメージを与える可能性があります。そのため、看護師は4つのうちどれが必要なのか医師に確認し、速やかに治療開始ができるように準備をしておく必要があります。

• カテーテル治療(PCI)に備えた 剃毛・膀胱留置カテーテル挿入
 ※搬送から血流再開は90分以内を目指します。これをDoor to Balloon Timeと呼びます。

• 造影剤アレルギー、糖尿病の有無、内服薬の確認、最終の食事摂取時刻、腎機能低下の有無を確認

• 12誘導心電図のシールははがさず、後に心電図をとる際に前回と同じ位置で測定できるように、患者さんに説明したうえで、マジックペンなどでマーキングをしておくことも必要です。


②急性大動脈解離の対応

 ※血管の内膜が破れ、血液が流れ込むことで血管が裂けていく疾患です。

• 患者さんの 血圧管理(収縮期血圧100~120mmHg目標)
• 鎮痛・降圧療法の準備(β遮断薬・硝酸薬)
• 血圧左右差がある場合は報告(動脈の解離している部分が腕頭動脈や鎖骨下動脈といった血圧測定に影響してくる血管にまで進行していると左右の腕で血圧の値に差が生じてしまうことがあります。)


③肺塞栓症の対応

 ※肺の血管に血液の塊が詰まってしまい、突然の呼吸困難感や胸痛を認め、時には心肺停止を招く非常に危険な疾患です。

• 酸素投与(重症例では高流量)
• 抗凝固療法の準備(ヘパリン・ワーファリンなど)
• 経皮的人工心肺装置(PCPS)の準備(重症例)


④緊張性気胸の対応

 ※何らかの原因で肺胞と肺胞を覆う胸膜が破れ、胸腔内に空気が漏れ出てたまることで、心臓が圧迫され、呼吸・循環不全を来す疾患です。

• 胸腔ドレーン挿入の準備(滅菌手袋・胸腔ドレナージセット)
• 直ちに医師に報告し 緊急脱気(穿刺脱気)を実施

 ※緊張性気胸は胸腔内にたまった空気を抜いてしまうことでショック状態から改善することがあります。そのため、初期段階で緊張性気胸を疑う所見があれば、確定診断を待たず、すぐに脱気を行います。


5.胸痛患者における看護の重要性

 胸痛の患者さんに対して、看護師は「早期発見」「迅速な報告」「適切な介入」が求められます。特に以下のポイントを意識しましょう。

 • 患者の 表情や発汗、チアノーゼなどの変化 を見逃さない
 • 脈拍・血圧のトレンドを把握し、急変兆候を察知する
 • 異常な心電図波形(ST上昇・T波異常など)を即時報告する


6.まとめ

 • 胸痛の鑑別は救急医療の最優先事項
 • 4 Killer Chest Pain(急性冠症候群・急性大動脈解離・肺塞栓症・緊張性気胸)には迅速な診断と治療
 • 救急外来では早期のアセスメントと初期対応(ABC評価・バイタル測定・心電図)が重要
 • 看護師の観察力と報告の速さが患者の予後を左右する

 患者さんの「胸痛」の原因を適切に見極め、迅速な対応を心がけましょう!