CO2ナルコーシスとは、体内の二酸化炭素(CO2)が過剰に蓄積することで意識障害を引き起こす状態を指します。特に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性的な呼吸器疾患を持つ患者さんに多く見られ、高濃度の酸素投与が原因で発症することもあります。
CO2ナルコーシスが進行すると、呼吸機能が低下し、昏睡状態(ナルコーシス)に至るため、迅速な対応が求められます。
この記事では、CO2ナルコーシスの発症メカニズムや症状、看護師が注意すべきポイントについて詳しく解説します。

CO2ナルコーシスは、呼吸機能の低下により、体外へ二酸化炭素を十分に排出できなくなることで発症します。主な原因としては、以下のようなものがあります。
COPDは、肺の空気の通り道(気道)が狭くなり、息を十分に吐き出せなくなる疾患です。
この疾患の患者さんは、慢性的に体内に二酸化炭素が蓄積している状態が続いており、これがCO2ナルコーシスの大きなリスクとなります。
通常、人間の呼吸は延髄の中枢化学受容体が感知する「体内の二酸化炭素量」に応じて調整されています。しかし、COPD患者さんの場合、二酸化炭素が慢性的に多い状態が続くことで、この調整機能が鈍ってしまっています。
COPD患者さんの呼吸は、頸動脈小体や大動脈小体にある末梢化学受容体が感知する酸素の量を基準にコントロールされています。高濃度の酸素を投与すると、酸素の量が十分だと脳が錯覚し、呼吸が抑制されます。その結果、二酸化炭素が体内に蓄積し、CO2ナルコーシスを引き起こすのです。
COPDの患者さんでは、呼吸筋の疲労により、十分に呼吸ができなくなることがあります。
また、鎮静薬や麻酔薬を使用すると呼吸抑制が起こり、体内の二酸化炭素が蓄積しやすくなります。
CO2ナルコーシスの症状は、初期の軽度なものから、進行すると危険な状態まで幅広く見られます。
1.意識障害
o 眠気や集中力の低下
o もうろうとした状態
o 昏睡状態へ進行
2.高度の呼吸性アシドーシス
o 血液が酸性に傾くことで、倦怠感や頭痛が発生
o 重症化すると、生命維持に関わる重大な影響が出る
3.自発呼吸の減弱
o 呼吸が浅くなり、回数も減少
o 進行すると、最終的に呼吸停止に至る可能性がある
• 頻脈、血圧上昇(初期)
• 多汗、頭痛
• チアノーゼ(皮膚や唇が青紫色に変化)
• 不整脈やショック状態
初期の段階では、軽い意識障害や頭痛のみの場合もあります。しかし、進行すると呼吸抑制が強まり、最終的には呼吸停止や昏睡状態になるため、早期発見と対応が非常に重要です。

CO2ナルコーシスが疑われる場合、以下の検査を行います。
CO2ナルコーシスの診断には、動脈血ガス分析(ABG: Arterial Blood Gas)が必須です。
この検査では、以下の数値を評価します。
• PaCO₂(動脈血二酸化炭素分圧):正常値 35~45 mmHgが50 mmHg以上に上昇
• pH(酸塩基平衡):正常値 7.35~7.45がpH 7.30以下に低下(呼吸性アシドーシス)
• PaO₂(動脈血酸素分圧):正常値 80~100 mmHg→酸素が過剰になると、呼吸抑制が悪化
• COPDの既往があるか
• 高濃度の酸素投与が行われたか
• 眠気や意識障害が進行しているか
COPD患者さんに酸素を投与する際は、低流量(1~2L/分)から開始し、SpO₂(経皮的酸素飽和度)を88~92%程度に維持することが推奨されています。
高濃度酸素(4L/分以上)をいきなり投与しないよう注意しましょう。
CO2ナルコーシスの治療では、NPPV(非侵襲的陽圧換気)が有効です。
• BiPAP(二相性気道陽圧)を用いて、二酸化炭素の排出を助ける
• 気管挿管・人工呼吸管理が必要な場合もある
• 呼吸数の変化(減少していないか)
• 意識レベル(JCS・GCSで評価)
• チアノーゼの有無
• ABG(血液ガス分析)の結果を適宜確認
呼吸が苦しそうな場合は、上半身を少し起こした体位(ファウラー位)にすることで、呼吸の負担を軽減できます。
また、意識レベルが低下した場合は、誤嚥予防のために気道確保を行うことも重要です。
• CO2ナルコーシスは、二酸化炭素の蓄積により意識障害を引き起こす緊急疾患
• COPD患者に高濃度酸素を投与すると、呼吸抑制が起こるため注意が必要
• 血液ガス分析(ABG)でPaCO₂の上昇・pHの低下を確認
• 治療は低流量酸素投与、NPPVの使用、場合によっては人工呼吸管理
CO2ナルコーシスは適切な管理を行えば予防可能な疾患です。
日頃から患者さんの呼吸状態をしっかり観察し、急変時に迅速に対応できるよう準備しておくことが重要です。