不安の正体と5つの病気【不安症】【社交不安症】【パニック症】【PTSD】【強迫症】

 人は誰でも何かしらの心配事があると、身体に動悸や汗、口の渇き、震えなどの反応が現れます。しかし、特に大きな原因が思い当たらないのに不安が続き、それが日常生活に影響を及ぼすようであれば、心の問題が関係している可能性があります。そもそも、不安という感情はなぜ起こるのでしょうか。

扁桃体とは

扁桃体とは

 脳の内部には扁桃体という、不安を感じる部分があります。目や耳、鼻、皮膚などから受け取った情報が扁桃体で処理され、安全か危険かが判断されます。もし危険と判断されると、危機的な状況だと自律神経を通じて体に信号が送られ、心拍数や呼吸が速くなります。不安は、このように危険を知らせるために扁桃体から発せられる警報のようなものです。このシステムが働くことで、人は安全に生活できるのです。

扁桃体の反応の敏感さは人それぞれで、生まれつき違いがあります。そのため、同じ出来事に対して不安を強く感じる人もいれば、あまり感じない人もいます。また、不安は理性でコントロールすることが可能です。

例えば、部屋でゴキブリを見かけた時、恐怖心で逃げたくなりますが、冷静に考えて放置すると問題が大きくなると判断し、殺虫剤を使って対処します。プロのスポーツ選手が極限の状況でも冷静にプレーできるのは、理性で不安を抑えているからです。この理性を司るのが前頭葉であり、前頭葉が扁桃体の反応を抑制しています。

前頭葉が運転手、扁桃体が車に例えるなら、運転手がブレーキをかけて車のスピードを調整するように、前頭葉が不安をコントロールしているのです。

不安を感じる生理的メカニズム

不安を感じる生理的メカニズム

 扁桃体が過剰に反応したり、前頭葉と扁桃体をつなぐ神経回路に異常があると、前頭葉のブレーキが効かなくなり、不安が抑えられなくなることがあります。これが不安障害です。この場合、不安という車は理性のブレーキが効かず、止めることができません。このように、不安障害の原因は、扁桃体の過剰な反応や、前頭葉との神経回路の異常にあります。

不安障害にはいくつかの種類があり、代表的なものとして以下の5つがあります。

  1. パニック症
    事故などの恐ろしい経験の後、強い不安や恐怖を感じることがあります。動悸や息苦しさが起こり、それがさらに不安を引き起こすことがあります。これを「パニック発作」と呼び、扁桃体が暴走することが原因です。この経験が記憶に残ると、似たような状況に遭遇することで再発することがあります。これは心のアレルギー反応に似ており、予期不安と呼ばれるものが強くなり、日常生活に影響を及ぼします。
  2. 全般性不安症
    人間関係、健康、お金、災害など、あらゆることに対して常に不安を感じる病気です。周りから「慎重な人」や「心配性」と言われる程度であれば問題ありませんが、社会的責任から逃げるようになったり、引きこもりがちになった場合は全般性不安症の可能性があります。
  3. 社交不安症
    対人恐怖症とも呼ばれ、他人からどう思われるかを過剰に気にし、人前で話すことや会議などが極端に不安になります。これが強くなると、人前に出ることを避けるようになります。
  4. PTSD(心的外傷後ストレス障害)
    命の危険を感じるような事故や災害を経験した後、その恐怖がしばらく続き、フラッシュバックや悪夢のような形で再現されることがあります。1ヶ月以上続く場合はPTSDと診断されます。
  5. 強迫症
    不合理な考えが頭から離れず、火事や泥棒の心配、他人を傷つけることへの恐れ、汚れや化学物質への不安などが生じます。この強迫観念を解消するために、確認行為や儀式的行為を繰り返すことがあります。

これらに加えて、不安に関連する他の病気も存在します。例えば、摂食障害や醜形恐怖症、病気不安症、分離不安症などがあります。いずれも扁桃体の過剰な反応や、前頭葉との神経回路に異常が関係しています。治療には、神経伝達物質であるGABAやセロトニンを調整する薬物療法が有効な場合もあります。また、軽度の場合は認知療法を通じて理性を強化する方法も効果的です。

不安を感じる方は、早期に専門家の診断を受けることが推奨されます。