人工呼吸器の看護 換気量低下のアラームが鳴った時の原因と対応

はじめに

人工呼吸器は、呼吸が困難な患者さんに対し、酸素供給や換気補助を行う重要な医療機器です。しかし、使用中にトラブルが発生することがあり、その際は迅速かつ適切な対応が求められます。

本記事では、特に「換気量低下のアラームが鳴った場合」に焦点を当て、原因と対応について詳しく解説します。

人工呼吸器とは?

人工呼吸器とは?

人工呼吸器とは、患者さんの呼吸を補助または代行する医療機器のことです。主に以下の役割を担います。

  • 高濃度酸素の投与:酸素濃度を適切に調整し、患者さんの体内に供給する。
  • 換気の補助:自発呼吸が困難な患者さんの呼吸を支援し、必要に応じて完全に代行する。

人工呼吸器には、大きく分けて次の2種類があります。

  1. マスクタイプ(非侵襲的):マスクを装着することで換気をサポートする方法。
  2. 気管内挿管タイプ(侵襲的):気管にチューブを挿入し、直接肺へ酸素を送る方法。

本記事では、特に「気管内挿管された患者さん」における換気量低下のアラーム発生時の対応について解説します。

換気量低下のアラームが鳴ったらどうする?

換気量低下のアラームが鳴ったらどうする?

ある日、人工呼吸器を装着している患者さんの病室から突然アラームが鳴り響きました。駆けつけると、患者さんは苦しそうにしており、モニター上では換気量が低下し続けています。このまま放置すれば、SpO₂(酸素飽和度)の低下につながり、生命の危機に陥る可能性があります。

このような状況では、迅速かつ冷静に原因を特定し、適切な対応を行うことが重要です。しかし、夜勤などで医師がすぐに対応できない場合もあります。そのため、看護師が一定の判断と対応を行う必要があります。

まずするべき対応

まずするべき対応

換気量低下が持続する場合、以下の対応を行いましょう。

① 人工呼吸器を外し、用手換気を行う

まず、人工呼吸器を一時的に外し、バッグバルブマスク(BVM)またはジャクソンリースを使用して用手換気を試みます。(※施設基準や医師の指示に従い実施してください)

このとき、以下の点を観察します。

  • 胸郭の動き:適切に換気されているか?
  • バイタルサイン:血圧や心拍数に変化はないか?
  • 呼吸器アラームの種類:どのアラームが鳴っていたのかを確認する。

② 医師への連絡

すぐに医師に状況を報告し、指示を仰ぎます。医師が到着するまでの間に、原因を詳しく観察しましょう。

原因の特定:「DOPE」の確認

原因の特定:「DOPE」の確認

換気量低下の原因を特定する際に役立つのが「DOPE(ドープ)」という考え方です。これは、気道確保や人工呼吸器管理におけるトラブルシューティングのポイントを示した頭文字を取ったものです。

DOPEの要素意味主な原因確認事項対応
D: Displacement(位置異常)チューブのずれ・抜け– カフ漏れ
– 固定のゆるみ
– チューブのテンション
– 胸郭の動き
– 呼吸音
– チューブメモリのずれ
– EtCO₂モニター波形
– カフ圧の確認
– 固定テープの見直し
– 必要なら再挿管
O: Obstruction(閉塞)チューブの詰まり– 痰や血液の詰まり
– 喘息発作による気管支狭窄
– 吸引で痰が取れるか
– 胸郭の動き
– 換気バッグの硬さ
– 吸引の実施
– 気管支鏡検査
– 必要時再挿管
P: Pneumothorax(気胸)肺が破裂し、胸腔内に空気が漏れる– 呼吸器設定が高すぎる– 皮下気腫
– 頸静脈怒張
– 胸郭の動きの左右差
– 気管偏位
– 気胸ドレーンの挿入
E: Equipment failure(装置異常)人工呼吸器のトラブル– 呼吸器回路の破損
– 電源トラブル
– 電源確認
– 呼吸器回路の確認
– 設定の確認
– 臨床工学技士に依頼
– 人工呼吸器の交換

各原因の詳細と対応

1. チューブの位置異常(Displacement)

チューブの固定が緩んでいたり、カフ圧が低下していると換気量が不足する可能性があります。

対応

  • 挿管チューブのメモリ確認
  • カフ圧の見直し
  • 必要時には医師による再挿管

2. チューブ閉塞(Obstruction)

チューブ内に痰や血液の凝固があると、換気がうまくできなくなります。

対応

  • 吸引を試みる
  • 胸郭の動きを観察し、換気バッグの硬さを確認
  • 必要に応じて気管支鏡検査や再挿管

3. 緊張性気胸(Pneumothorax)

肺が破れ、胸腔内に空気が漏れた状態。放置するとショック状態に陥る可能性があります。

対応

  • 気胸所見の確認(皮下気腫、頸静脈怒張、気管偏位など)
  • 速やかに医師へ報告し、気胸ドレーンの準備

4. 人工呼吸器の異常(Equipment failure)

人工呼吸器そのものに異常がある場合もあります。

対応

  • 電源や回路の確認
  • 臨床工学技士に連絡し、装置の点検や交換を依頼

まとめ

人工呼吸器の換気量低下アラームが鳴った際は、DOPEを意識して迅速にアセスメントし、適切な対応を取ることが重要です。最も大切なのは、患者さんの全身状態をしっかり観察しながら、冷静に行動すること。日頃からシミュレーションを行い、緊急時に備えておきましょう。