人工呼吸器は、呼吸が困難な患者さんに対し、酸素供給や換気補助を行う重要な医療機器です。しかし、使用中にトラブルが発生することがあり、その際は迅速かつ適切な対応が求められます。
本記事では、特に「換気量低下のアラームが鳴った場合」に焦点を当て、原因と対応について詳しく解説します。

人工呼吸器とは、患者さんの呼吸を補助または代行する医療機器のことです。主に以下の役割を担います。
人工呼吸器には、大きく分けて次の2種類があります。
本記事では、特に「気管内挿管された患者さん」における換気量低下のアラーム発生時の対応について解説します。

ある日、人工呼吸器を装着している患者さんの病室から突然アラームが鳴り響きました。駆けつけると、患者さんは苦しそうにしており、モニター上では換気量が低下し続けています。このまま放置すれば、SpO₂(酸素飽和度)の低下につながり、生命の危機に陥る可能性があります。
このような状況では、迅速かつ冷静に原因を特定し、適切な対応を行うことが重要です。しかし、夜勤などで医師がすぐに対応できない場合もあります。そのため、看護師が一定の判断と対応を行う必要があります。

換気量低下が持続する場合、以下の対応を行いましょう。
まず、人工呼吸器を一時的に外し、バッグバルブマスク(BVM)またはジャクソンリースを使用して用手換気を試みます。(※施設基準や医師の指示に従い実施してください)
このとき、以下の点を観察します。
すぐに医師に状況を報告し、指示を仰ぎます。医師が到着するまでの間に、原因を詳しく観察しましょう。

換気量低下の原因を特定する際に役立つのが「DOPE(ドープ)」という考え方です。これは、気道確保や人工呼吸器管理におけるトラブルシューティングのポイントを示した頭文字を取ったものです。
| DOPEの要素 | 意味 | 主な原因 | 確認事項 | 対応 |
| D: Displacement(位置異常) | チューブのずれ・抜け | – カフ漏れ – 固定のゆるみ – チューブのテンション | – 胸郭の動き – 呼吸音 – チューブメモリのずれ – EtCO₂モニター波形 | – カフ圧の確認 – 固定テープの見直し – 必要なら再挿管 |
| O: Obstruction(閉塞) | チューブの詰まり | – 痰や血液の詰まり – 喘息発作による気管支狭窄 | – 吸引で痰が取れるか – 胸郭の動き – 換気バッグの硬さ | – 吸引の実施 – 気管支鏡検査 – 必要時再挿管 |
| P: Pneumothorax(気胸) | 肺が破裂し、胸腔内に空気が漏れる | – 呼吸器設定が高すぎる | – 皮下気腫 – 頸静脈怒張 – 胸郭の動きの左右差 – 気管偏位 | – 気胸ドレーンの挿入 |
| E: Equipment failure(装置異常) | 人工呼吸器のトラブル | – 呼吸器回路の破損 – 電源トラブル | – 電源確認 – 呼吸器回路の確認 – 設定の確認 | – 臨床工学技士に依頼 – 人工呼吸器の交換 |
1. チューブの位置異常(Displacement)
チューブの固定が緩んでいたり、カフ圧が低下していると換気量が不足する可能性があります。
✔ 対応:
2. チューブ閉塞(Obstruction)
チューブ内に痰や血液の凝固があると、換気がうまくできなくなります。
✔ 対応:
3. 緊張性気胸(Pneumothorax)
肺が破れ、胸腔内に空気が漏れた状態。放置するとショック状態に陥る可能性があります。
✔ 対応:
4. 人工呼吸器の異常(Equipment failure)
人工呼吸器そのものに異常がある場合もあります。
✔ 対応:
人工呼吸器の換気量低下アラームが鳴った際は、DOPEを意識して迅速にアセスメントし、適切な対応を取ることが重要です。最も大切なのは、患者さんの全身状態をしっかり観察しながら、冷静に行動すること。日頃からシミュレーションを行い、緊急時に備えておきましょう。