血液ガス分析は、患者さんの呼吸状態や酸塩基平衡(さんえんきへいこう) を詳しく調べるために重要な検査です。
血液の酸性・アルカリ性のバランスを測定し、呼吸機能や代謝状態を評価することで、治療の方向性を決定する際の参考になります。
看護師としても、血液ガス分析の基本的な読み方を理解することで、患者さんの状態を適切にアセスメントし、迅速な対応が可能になります。
この記事では、血液ガス分析の 目的や基準値、酸塩基平衡の仕組み について詳しく解説していきます。

血液ガス分析とは、 動脈血を採取して血液の酸素(O₂)・二酸化炭素(CO₂)・pH(酸性・アルカリ性の度合い)などを測定する検査 です。
この検査では、呼吸状態や代謝バランスを評価することができ、特に 呼吸不全や酸塩基平衡の異常を診断する上で不可欠 です。
人間の体は、 酸性とアルカリ性のバランス(酸塩基平衡) を維持することで、正常な機能を保っています。しかし、呼吸器疾患や腎臓病、代謝異常などが原因で、このバランスが崩れることがあります。
例えば、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんでは 二酸化炭素が体内に蓄積 しやすく、血液が酸性に傾くことがあります。また、過換気症候群の患者さんでは 二酸化炭素を過剰に排出 しすぎて、血液がアルカリ性に傾くことがあります。
このような変化を数値で確認できるのが血液ガス分析です。数値を読み取ることで、患者さんの状態を把握し、適切な対応が可能になります。
人間の体は、エネルギー(ATP)を作る過程で酸性物質を生じます。この酸性物質を放置すると、血液がどんどん酸性に傾き、体に悪影響を及ぼします。酸塩基平衡を維持するために、肺と腎臓 が重要な役割を果たします。酸性物質は常温で気体の揮発性酸と、常温で気体にならない不揮発性酸に分けられます。
・肺は 二酸化炭素(CO₂) を体外へ排出することで、血液の酸性度を調整します。
・CO₂は 呼吸 によって排出されるため、呼吸がうまくできないと血液が酸性に傾きます(アシデミア)。
・腎臓は 乳酸やオキソニウムイオン などの不揮発性酸を尿として排出します。
・腎機能が低下すると、酸性物質をうまく排出できず、血液が酸性に傾きます(代謝性アシドーシス)。

| 項目 | 基準値 | 意味 |
|---|---|---|
| pH | 7.35~7.45 | 血液の酸性・アルカリ性のバランス |
| PaCO₂(動脈血二酸化炭素分圧) | 35~45 mmHg | 二酸化炭素の量(呼吸の指標) |
| HCO₃⁻(重炭酸イオン) | 22~26 mEq/L | 腎臓による酸塩基調整の指標 |
| PaO₂(動脈血酸素分圧) | 80~100 mmHg | 血液中の酸素量 |
pHの基準値は 7.35~7.45 ですが、 7.4を基準 にして覚えておくと便利です。
語呂合わせで「異常なし(74)」と覚えるとわかりやすいです。
• pH 7.35 未満 →アシデミア(酸性)
• pH 7.45 以上 →アルカレミア(アルカリ性)
血液が酸性またはアルカリ性に傾いた状態を、それぞれ アシデミア・アルカレミア と呼びます。
しかし、 「アシドーシス」「アルカローシス」 という言葉も耳にしたことがあるかもしれません。
この違いを簡単に説明すると、
• アシデミア / アルカレミア → 血液の「状態」 を示す
• アシドーシス / アルカローシス → 血液を酸性・アルカリ性に傾ける「病態」 を示す
例えば、COPDの患者さんで 二酸化炭素がたまり、血液が酸性に傾いている 場合、血液の「状態」 を アシデミア、「原因となる病態」 を 呼吸性アシドーシス と言います。

血液ガス分析は、以下のような場面で実施されます。
・呼吸器疾患(COPD、喘息、肺炎など)の評価
・人工呼吸器管理中の患者さんの状態確認
・ショックや敗血症などの緊急時
・腎不全や糖尿病ケトアシドーシスの評価
・手術前後の酸塩基バランスの確認
・pHを見て、アシデミアかアルカレミアかを判断する
・PaCO₂の値を確認して、呼吸器の影響をチェックする
・HCO₃⁻を確認し、腎臓の影響をチェックする
・PaO₂を確認し、酸素供給の状態を把握する
これらのポイントを押さえることで、 患者さんの状態を素早くアセスメントし、必要な治療や看護ケアにつなげることができます。
• 血液ガス分析は、患者さんの呼吸状態や酸塩基平衡を評価する重要な検査。
• pH(7.35~7.45) を基準に、アシデミアかアルカレミアかを判断する。
• PaCO₂(肺)と HCO₃⁻(腎臓) をチェックすることで、どちらの影響で酸塩基平衡が乱れているかを判別できる。
• 呼吸器疾患や腎不全、ショックの患者さん では、特に血液ガス分析が重要となる。
血液ガス分析の基本を理解し、日々の看護に役立てましょう。