医療現場で重要な役割を果たす検査の一つに「血液ガス分析」があります。
今回はその中でも「呼吸状態の評価」について詳しく解説していきたいと思います。
前回も酸塩基平衡に関する基本的な内容について説明しましたが、今回は血液ガス分析の中で特に呼吸に関連した要素を取り上げ、患者さんの呼吸状態がどのように評価されるのかに焦点を当てます。

血液ガス分析とは、動脈血から採取した血液を基に、患者さんの呼吸状態や酸塩基平衡を調べる検査です。酸塩基平衡とは、体内での酸性とアルカリ性のバランスを意味し、このバランスが崩れると身体に深刻な影響を与えることがあります。
前回の記事では酸塩基平衡の重要性について説明しましたが、今回はその中でも呼吸機能に関連する部分をさらに深掘りします。
血液ガス分析を行うことで、血液中の酸素や二酸化炭素の濃度、さらには酸塩基のバランスがどのようになっているのかを確認することができます。
この検査によって、例えば呼吸がうまく行われていない場合や、酸素が体内に十分に取り込まれていない場合、または二酸化炭素が過剰に蓄積している場合などの異常を早期に発見することができます。
血液ガス分析では、主に次の3つの指標が呼吸状態を評価するために重要です:PaO2(動脈血酸素分圧)、SaO2(動脈血酸素飽和度)、およびPaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)です。
これらの数値を基に、呼吸が十分に行われているかどうか、また酸素が体内で適切に取り込まれているか、二酸化炭素が適切に排出されているかを評価します。
PaO2は、血液中の酸素の分圧を示す指標で、動脈血から測定されます。
酸素は肺を通じて血液中に取り込まれ、全身に供給されますが、その酸素の量を知るためにPaO2を測定します。PaO2の正常範囲は、80~100mmHgとされています。
この値が低くなると、酸素が体内に十分に供給されていない可能性を示唆しており、呼吸不全の兆候とみなされます。特に、PaO2が60mmHg以下になると、呼吸不全が疑われます。
SaO2は、血液中のヘモグロビンと酸素がどれだけ結びついているか、つまり酸素飽和度を示す指標です。この値は、通常95%以上が正常とされています。SaO2が90%以下になると、呼吸不全と診断されることが多いです。
酸素が血液中に十分に溶け込んでいるだけではなく、ヘモグロビンと結びついて全身に運ばれる必要があります。したがって、酸素飽和度が低くなると、酸素供給に問題が生じている可能性が高くなります。
PaCO2は、血液中の二酸化炭素の分圧を示します。
人間はエネルギーを生産する過程で二酸化炭素を発生させ、これを呼吸によって排出します。
PaCO2の正常範囲は35~45mmHgです。
この値が45mmHgを超えると、二酸化炭素が体内に過剰に蓄積しており、呼吸不全の兆候となります。
逆に、PaCO2が35mmHgを下回ると、呼吸が過度に速くなり、二酸化炭素が過剰に排出されることも考えられます。このような状態も危険です。

血液ガス分析では動脈血から採取した血液を使用するため、手技が必要となります。
これに対して、パルスオキシメーターは皮膚に装着するだけで酸素飽和度(SaO2)を簡単に測定することができ、患者さんにとっては負担が少ないという利点があります。
一般的に、パルスオキシメーターで測定される値が95%以上であれば正常とされ、90%以下であれば呼吸不全の可能性があります。
ただし、パルスオキシメーターにも限界があります。
例えば、マニキュアを塗っている場合や末梢循環不全がある場合には、正確な測定が難しくなることがあります。このため、パルスオキシメーターはあくまで簡易的な評価に留まり、精密な評価が必要な場合には血液ガス分析が不可欠です。
呼吸状態を正しく評価することは、患者さんの生命維持にとって非常に重要です。
血液中に酸素を適切に供給できているか、二酸化炭素が適切に排出されているかを把握することで、呼吸不全やその他の深刻な病状を早期に発見し、適切な治療を行うことができます。
特に、PaO2やSaO2、PaCO2の値は患者さんの状態をリアルタイムで反映するため、医療従事者にとっては欠かせない指標となります。
血液ガス分析は、呼吸状態を詳細に評価するための強力なツールです。
PaO2、SaO2、PaCO2の値を基に、患者さんの呼吸機能を評価することができます。
PaO2が80~100mmHg、SaO2が95%以上、PaCO2が35~45mmHgという正常値を基準に、異常があれば迅速な対応が求められます。
また、パルスオキシメーターなどの簡易的な評価方法も有効ですが、血液ガス分析による精密な評価が必要な場合もあります。
呼吸状態を適切に把握し、必要な治療を行うことが、患者さんの回復を助ける鍵となります。
今後もこのような検査を通じて、より良い医療を提供できるよう努めていきましょう。
ご視聴ありがとうございました。