起立性低血圧は予防できる!体位調整の時には〇〇に注意しないと危険です!

 病院や施設で働いていると、患者さんの体位変換を行った際に血圧が低下したり、気分不良を訴えたりする場面に遭遇したことがある方も多いのではないでしょうか。
特に、自力で体を動かせない患者さんは、褥瘡予防のためにも定期的に体位変換を行う必要があります。

 授業や先輩からの指示で「2~3時間ごとに体位変換をする」と教わったかもしれません。
しかし、実際にはすべての患者さんに対して、このような頻度で体位変換をする必要はないかもしれません。
標準的なマットレスを使用して2時間ごとに体位変換をするより、体圧分散寝具を使用して4時間ごとに体位変換した方が褥瘡の発生率が低減するという報告もありますし、患者さんの使っているベッドや皮膚、骨突出などの状態に応じて実施頻度を検討すべきでしょう。

 今回は、特に重症患者さんや長期臥床の患者さんにおいて、体位変換によって生じる血圧変動や起立性低血圧のリスク、そして安全に体位変換を行うためのポイントについて詳しく解説します。


体位変換が血圧に与える影響とは?

体位変換が血圧に与える影響とは?

 長期間寝たきりの状態が続くと、血圧を調整する機能に影響が出ることが知られています。
血圧は以下の3つの要因によって維持されています。

  1. 心拍出量(心臓が送り出す血液の量)
  2. 末梢血管抵抗(血管がどの程度収縮して血圧を維持できるか)
  3. 循環血液量(体内を循環する血液の量)

 通常、健康な人が仰臥位(あおむけ)から立ち上がる際、重力の影響で血液が下肢に移動し、心臓へ戻る血液量(静脈還流量)が一時的に減少します。
しかし、この変化は 圧受容体(血管の壁にある血圧を感知するセンサー)や 自律神経の働き によって調整されるため、大きな血圧の変動は起こりません。

 しかし、長期間寝たきりの患者さんでは、
  • 圧受容体の働きが低下する(血圧の変化を適切に感知できなくなる)
  • 自律神経の調整機能が低下する(血圧を維持する力が弱くなる)
  • 筋肉の動きが少なくなることで血液がうまく循環しなくなる
 といった理由により、体位変換時に血圧が大きく低下しやすくなります。これを起立性低血圧と呼びます。

 また、血圧を調整するもう一つのシステムとして、内耳前庭系(耳の奥にある平衡感覚を司る部分)が重力の変化を感知し、自律神経を介して血圧を調整する役割を果たしています。
しかし、長期間寝たきりの状態が続くと、この機能も低下し、体位変換時にめまいやふらつき、血圧の急激な低下を引き起こすことがあります。


体位変換が血圧に及ぼす影響(頭部挙上・側臥位)

体位変換が血圧に及ぼす影響(頭部挙上・側臥位)

 体位変換の方法として、頭部挙上(ギャッジアップ)側臥位(横向き)が一般的に行われますが、それぞれ異なるメカニズムで血圧に影響を与えるため注意が必要です。

① 頭部挙上(ギャッジアップ)

 仰臥位から頭部を30~45度挙上すると、重力の影響で血液が腹部や下肢に移動します。
これにより、心臓へ戻る血液量(静脈還流量)が約30%低下し、結果として心拍出量が減少し、血圧が低下します。
特に、長期間臥床していた患者さんや低栄養状態の患者さん は、自律神経の調整がうまく機能しないため、急激な血圧低下を起こすことがあります。
 また、肥満や腹圧が高い患者さんの場合、ギャッジアップにより腹部が圧迫され、下大静脈(心臓へ血液を戻す主要な血管)が圧迫されることで、さらに血圧低下のリスクが高まります。


② 側臥位(横向き)

 仰臥位から側臥位へ移動する際も、血圧変動が生じることがあります。
  • 左側臥位:
  心臓が体の下側になり、心臓への圧迫が生じるため、心拍出量が一時的に低下しやすくなります。
  • 右側臥位:
  肝臓や腹部臓器の圧迫により 上大静脈・下大静脈 が圧迫され、静脈還流量が減少し、血圧低下を引き起こします。

 これらの影響は患者さんごとに異なるため、側臥位への体位変換を行った際には、血圧の変動を慎重に観察すること が重要です。


安全に体位変換を行うためのポイント

安全に体位変換を行うためのポイント

 血圧低下のリスクを最小限に抑え、安全に体位変換を行うためには以下のポイントを意識しましょう。

① ゆっくりと体位を変える

 急激な体位変換は血圧低下を引き起こしやすいため、段階的に 体位を変えることが大切です。
例えば、ギャッジアップをする際は、30度→45度→60度と徐々に角度を上げると血圧の変化に適応しやすくなります。


② 体位変換後のバイタルサインを注意深く観察する

 体位変換後 5~10分間は血圧・脈拍・意識状態を観察 し、異常がないか確認します。
特に、以下のような症状が見られる場合は要注意です。

 • めまい、ふらつき    • 脈拍の急激な上昇
 • 意識のもうろう感    • 血圧の大きな低下
 • 冷汗、顔面蒼白

 これらの症状が出た場合は、すぐに元の体位に戻し、経過を観察することが必要です。


③ 傾斜機能付きのベッドを活用する

 腹圧が高い患者さんや、ギャッジアップによる血圧低下が懸念される患者さんには、頭部を挙上するのではなく、ベッド全体を傾斜させる 方法も有効です。


④ 少しずつ体を動かす習慣をつける

 長期間臥床していた患者さんでも、少しずつ体を動かしていくことで、血圧調整機能の回復が期待できます。体位変換を繰り返しながら、患者さんの状態に合わせて離床を進めていくことが重要です。


まとめ

• 長期間臥床している患者さんは、血圧調整機能が低下しているため、体位変換時の血圧低下に注意が必要
• 頭部挙上や側臥位の際に血圧低下のリスクがあるため、慎重に観察することが大切
• ゆっくりと体位を変え、バイタルサインの変化をしっかり確認することで、安全にケアを実施できる

 体位変換は患者さんの安全を守るための大切なケアの一つです。

 適切な方法を理解し、より良い看護を提供できるようにしましょう。